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婚約破棄された悪役令嬢は、証拠だけを信じる ~感情ではなく記録で真実を覆す、静かな逆転劇~  作者: 竜太郎


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狩猟日の霧・夜の記録

その夜、レティシアは「狩猟日の霧」について確かめられた範囲を整理した。夜、レティシアは起きたことを日付順に書き留めた。感情と推測を別の頁に置き、確かめられた事実だけを細い筆で残す。


レティシアは相手の言葉を遮らず、答えを急がなかった。その沈黙は慎重さではなく冷淡さと呼ばれ、王太子の微笑だけが寛容さとして受け取られた。


ノエラは姉の手袋のほつれを直しながら、怖いかとは聞かなかった。代わりに明日の朝食を一緒に取れるかと尋ね、未来が続く前提だけを差し出した。


公爵邸の会計には、安価な青糸を買った記録が月に一度だけ残る。マルタは用途を知らず、レティシアも妹の刺繍だと思っていた。


そのころ、王都の小さな菓子店で、宛名のない包みが一つ受け取られた。届けた者も受け取った者も、ノエラの名を口にしなかった。


廊下の向こうでノエラの扉が閉じた。朝になれば妹は何も知らない顔で現れ、姉もまた何も気づかないふりをするのだろう。


王都の新聞はまだ王家の名を出さず、「ある高位令嬢」とだけ書いた。名を伏せても誰を指すかは明らかで、曖昧さだけが責任を負わずに残った。


反論の機会は与えられているように見えた。ただし期限は短く、必要な資料は王宮が預かり、証人は面会を禁じられている。形式の公平と実際の公平は別だった。


レティシアは人の心を断定しなかった。利害で動く者にも恐れがあり、善意を語る者にも守りたい立場がある。単純な敵を作れば、見落とすものが増えるだけだった。


姉妹のあいだには、幼いころからの合図があった。言葉にすれば他人にも奪われるため、指先やカップの向きだけで、今は話さないという意思を確かめる。


(本文実測:685字)

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