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婚約破棄された悪役令嬢は、証拠だけを信じる ~感情ではなく記録で真実を覆す、静かな逆転劇~  作者: 竜太郎


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婚約の議決・証言

三日目、証言台に立つ者の名が一人増えた。アドリアンは二人だけで話し、婚約を続けても以前には戻れないと認める。初めて保護という言葉を使わなかった。


確かめられない味方の言葉にも寄りかからない。有利な証言が後で崩れれば、正しい記録まで巻き込まれるからだった。


記憶は後から整えられる。鐘の音、門番帳、馬車の重量票を別々に取り、二つ以上が重なるまで時刻を確定しなかった。


レティシアは妹を守るため遠ざけようとし、ノエラは姉を守るため近くに残ろうとする。同じ願いが、互いの秘密を増やした。


ベルトランは王宮の調査官として手続きを守ろうとする。命令へ従うことと、誤りを報告する責任の間で立場を失っていく。


夕刻、温室の白薔薇へ水が与えられる。姉妹が言葉を交わせない日にも、家人は明日へ続く仕事を止めなかった。


四件の仕掛けを同じ人物が作った証拠はない。似た結果だけで命令者を一人にすれば、別々の利害を見落とす。


一日の終わりに、確認できた事実と推測が別の頁へ分けられた。明朝、最初に読み直すのは空白のほうだった。


レティシアは記録帳の末尾へ「不明」と書いた。答えを急がないことが、用意された物語から外れる小さな抵抗だった。


オスカーは正文と写しを別々の箱へ戻し、閲覧者の名と時刻を記した。証拠は持ち主より、辿れる手順で守る。


窓の外で王都の鐘が鳴った。大広間の決定を知らない街でも、市場は閉まり、夜番の灯が順にともった。


噂はレティシアの沈黙を冷淡と呼ぶ。彼女は笑みを崩さず、沈黙の理由だけを議事録へ残した。


姉妹は同じ食卓へ着いても、全てを話せない。それでも相手の椅子を空けないことだけは、どちらも譲らなかった。


(本文実測:690字)

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