表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたに読まれたい  作者: 三軒長屋 与太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

証明


 “失くす”とは 何だろうか

失くすとは 必然なのだろうか

失くすという概念があるということは

何かが有った証明なのだろうか


確かに、生まれ持って私は有る

私は有って当たり前で、私なくして世界は無い

私という概念がなければ、私を否定する必然もない

そんなことは解っている

私とは、私が認めた私でしかないのだ


それでは何故、君は、君であろうとする

君が、君であるべきだからか

私は違うと言う

“社会の中の君”であるために、必死で努力しているからだ

もし君が、これに「そうではない!」と反論するならば、

それが君であり、それだけが、君なのだ

それ以上でも、以下でも、あるはずがない


「なにを適当に!」と、思うかもしれない

しかし、世界の本質に気づいている君が居るはずだ

私は別に、君を、

君が行ったことのないどこかになんて、

連れて行こうなどと思わない

私がどんなに言ったって、

君は君で、私は私なのだ


 それでは何故親しむのか

それでは何故、寄り添おうとするのか

私が私であるために、

君が君であるために、

私にとって君が、君にとって私が、必要なのだろうか


もう見えているのではないか

私と君とは、証明なのだ

頷いたり、首を振ったり、傾げたりするための鏡なのだ

この世に私しか居なければ、私はないのだ

この世に君しかいなければ、君はないのだ

私と君が居ることが、この世界の証明なのだ


 君を失ってはや十年が経つ。

あれからずっと、私はないのだ。

君を失ったことを認めてしまうと、

私はこの世に私だけとなる。

それは即ち、世界が消えるということだ。


それだから、私は君を逃さない。

君の胸ぐらを掴み、離さない。

君の腰に腕を回し、締め上げる。

君の背中に額を押し当て、咽び泣く。


 私は君を失った。

君はなにかを失ったのか。

私の知らない世界で、君はまだ息をしているのか。

私をこの部屋に閉じ込めて、胸は痛まないのか。

私を失うことを、恐れてはくれないのか。


 “失くす”とは 何だろうか。

失くすとは 必然なのだろうか。

失くすという概念があるということは、

君が有った証明なのだ。

私が君を失った、揺るぎなき証明なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ