海月の朝
目覚めてすぐは、宙に浮いている気がする——
朝にしか感じられない優しい風。
草木があくびをしながら背を伸ばす匂い。
鳥たちの忙しない『おはよう』
釣られた私も『おはよう』
夢と現実が混ざり合って、
ずっとこのままぷかぷかと、
煙草でもふかし続けたい。
漂う煙に身を委ね、二日酔いを引き連れて、
換気扇から吸い出されたい。
生きてるって気がする——
それは仕方のない事実であり、
最後の希望にも思える。
いっそ目を開かずとも、後悔は感じまい。
しかし、今日も目が覚めたってことは、
まだなにか、やらねばならぬことが残っているのだろう……と。
逃げる二月を追いかける――
春に向かうこの時期の朝が、もっとも素晴らしい。
太陽の温度が、じんわりと、
目覚めを拒否する身体を温めていく。
嘘みたいに黄色い蝶々が、鼻先を舞う。
まさか私などに、蜜の香りはしないだろうに。
心が地を離れる――
気怠さの海に浮かぶ、クラゲのよう。
きっと毒を持っているだろうけど、
誰も私のことを食べようなどとは思うまい。
故に、毒は使い道を失くし、
私の体内をゆらゆら巡る。
役目を終えた月が、
空の青と同化して消えていく。
壮大なる擬態を羨む。
海面から顔を覗かせ、触手を揺らし、
されるがままに流される。
そんな浮ついた妄想も、
歯を磨くとともに終幕を迎える。
誰の好みでもあろうはずのない泡立つ味が、
今日も無事に人間であることを、
慌ただしく伝える。
心と脳が繋がって、
真四角な現実が姿を現す。
足裏から地面を感じる。
淀みない呼吸が、
海の中ではないことを知らせている。
一日の始まりに、
私は……月を恋しく思う——
お読みいただき、ありがとうございました。
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【※この先は、作者による作品解説です。
自己解析・自己考察を含みます。
読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】
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そうです。
朝が辛いってお話です。
作者も朝が苦手です。
しかし、朝の独特な憂鬱感は好きだったりします。
作中でも触れている通り、心がフワフワと浮ついて、漠然と一日を考えたりする……あの時間が好きです。
起きたけど起きてない。
夢と現実……そんな、浮遊感。
今作ではそれを海月に例え、ほどよい現実逃避に仕上げました。
なんだか私にしては珍しくキラキラしてて、気に入っています。
ぷかぷか浮かぶように、生きていきたいものですね。




