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あなたに読まれたい  作者: 三軒長屋 与太郎


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宵の酔


 あんたは、いっつもそう。

結局、何にも覚えていない。

昨日の好きや、愛してるや、

ここでは言えない淫らも、

結局、何にも覚えちゃいない。


 夕暮れなんて、汚らわしい――

そんな家で育った。

別に、裕福ってわけじゃない。

ただ単純に、世間体を羽織った両親であっただけ。

楽しくもない。

詰まらなくもない。

それを、交互に食べる生活があっただけ。


 思春期になって、

両親から受け継いだ法被はっぴを脱ぎ捨てた途端、

それはそれは身軽になった。

学校も、社会も、世界も関係なくなった。

しちゃいけないことも、出来る気がした。

それと同時に、これからは、

しちゃいけないことを、しないと生きれない気もした。


周りが綺麗な丸を目指す中、

わたしは鋭利な三角を夢見た。

努力とか、才能とか、どうでもいい。

どんなに頑張ったって、結局のところはお金で、

それ以外は、生まれ持っての円周率でしかない。

それなら、尖った方が良いじゃない。


 あんたは黒服。

わたしはドレス。

夜の世界じゃ当たり前の関係。

それでも、わたしは確かに、

あんたに惚れた。

別に、他の子たちみたく、

慰められたからとか、

優しくされたからとかじゃない。

わたしは、あんたのピカピカに光る鋭利なところに惹かれた。

人なんて簡単に刺し殺してしまいそうな、

尖った角に、恋をした。


 夜の人間は二通り。

迷い込んだ人間と、夜に生まれた人間。

わたしは迷い込んだ。

あんたは、夜に愛されていた。


 あんたは、毎日毎日、酒を呑んだ。

仕事で呑み、終わって呑み、休みの日も呑み……

そうやって、あんたの脳みそは溶けた。

当然、中まで覗いたことなんてないけれど、

あんたの頭ん中は、もうスカスカ。

小さくなった貯蔵庫に詰められているのは、

饒舌に喋るための欠片だけ。

意味をなさない知的な言葉たちだけが、

ギチギチに詰め込まれている。


それだから、あんたの記憶は一日しか保たない。

あんたは、昨日を捨てることしか出来ない。

止めてあげられれば良かったのだけど、

酒を呑んでる時の弾ける笑顔と、

呑んでない時の萎れた背中を見比べると、

私はどうしようもなく、居た堪れなく……


 私たちは「おはよう」と同時に、出逢う。

夕日が沈むように惹かれ合い、愛し合い、

そして、「おやすみ」と共に、別れる。

毎日目覚める度に、あんたを見つけてホッとする。

毎日惚れられるように、せっせと角を磨き続ける。

毎日あんたの寝顔を見ながら、少しだけ涙する。


 あんたは、いっつもそう。

結局、何にも覚えていない。

昨日の好きや、愛してるや、

ここでは言えない淫らも、

結局、何にも覚えちゃいない。


 だから私は、喉が渇くほどに、毎日好きと伝える。

余命を告げる医者のように、真剣なまなざしで愛を説く。

記憶の核に突き刺そうと、研ぎ澄まされたキスをする。

そうやって、あんたの脳みそに、私を刻み込む。


あんたの脳みそがどんなに小さくなっても、

そこに私が居続けられるように、

私は、今宵もあんたに酔う。



【※この先は、作者による作品解説です。

自己解析・自己考察を含みます。

読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】











——————————


〝あんた〟のモデルは私です。

実際、酒を飲んだ翌日には、前日の記憶が皆無なので……。

今まで何人もの方に、呆れられてきました。

ただ作中の〝私〟のように、思ってくれていたのだとすれば、

私はいたく幸せ者だったのだなと、そんなことを思う私の願望作品です。

一般的には、ダメ男を好きになってしまう女性像を思い浮かべていただければ、ほとんど正解だと思います。

ダメ男な私が保証します。


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