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あなたに読まれたい  作者: 三軒長屋 与太郎


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11/14

そばにいさせて


 ——あり得ない通知。


 届くはずのない電子手紙。


 瞳を震わせ、静かに開く——



***********************



 こんばんは。

 お元気ですか?

 私は……言わなくても知ってると思います。


 突然のご連絡すみません。

 どうしてもあなたに伝えたいことがありまして、

 人伝ひとづてに、メールアドレスを聞きました。


 電話は、設定の仕方が分からず、

 LINEはできないし、

 SNSも考えましたが、他の人に見られるのも嫌ですし。


 先に、

 怒ってなんていません。

 勿論、恨んでもいません。

 むしろ、心の底から感謝しています。

 だからこうして執念深く、連絡をしてしまっているのです。


 正直、気持ち悪いですよね?

 それでも、

 どうか最後まで読んでください。


 あなたと出会ったカフェ。

 この間覗いたら、まだ営業してました。

 相変わらずタバコが煙たくて、

 タバコ嫌いなマスターが、咳き込んでいました。

 相変わらず、変な人だと思います。

 『ペガサス』なんて名前つけて……

 でもやっぱり、好きです。

 打ち合わせの場所があそこじゃなければ、

 あなたに出会えなかったかもしれませんし。


 マスターの元気そうな顔も見られたし、

 そのまま、()()()()水族館に行きました。

 実は、一人で水族館に行くのなんて初めてだったから、

 そわそわしてしまいましたが、

 ぷかぷか浮かぶクラゲたちを見ていると、

 なんだか全部どうでも良くなって、

 まさか、クラゲに慰められる時が来るなんて……と、

 可笑しくなりました。


 心がぷかぷか軽くなったので、

 夜が更けるのを待って、ダーツバーに行きました。

 そうです。

 あなたとよく行った『Grapevineグレイプバイン』。

 〝葡萄ぶどうつた?〟って不思議がると、

 これはオーナーが好きなバンドの名前なんだって、教えてくれた。

 それ以来、好きです。

 お店もダーツも、バンドも……。


 そういえば、店長がすごく気まずそうにしてましたよ。

 何か、変なこと言ってないよね?

 でも、安心してください。

 店長にも言ったけど、もう行きません。

 あなたに嫌われたくなんてないから。


 そして今、あなたの後ろにいるの……

 なんて、どうしようもない冗談はさておき、

 今、あの丘の上の公園にいます。

 遠くまで夜景が見渡せる綺麗な場所。

 なんだか久しぶりだから、

 感動して涙が出ました。


 あなたとは別れてしまったけれど、

 この景色くらい、たまに見に来てもいいよね?

 やっぱり夜景は好きです。

 綺麗なのに寂しくて、

 沢山あるのに、手に取れなくて。

 

 そんな夜景に包まれながら、このメールを書いています。

 書けば書くほど思います。

 あなたのことが好きなのは、ちっとも変わらない。

 でも、あなたに嫌われたくないのも、ちっとも変わらない。

 だから、これにてさようなら。

 いつまでも、幸せに、どうか長生きしてください。

 そっと、願いながら。

  


*******************



 ——恋人は、このメールが届く二週間前に死んだ。


 それは、私が別れを告げて、すぐのことだった。


 あれからもう一年以上経つが、いまだに毎日、送られてくる。


 アドレスを変えても意味はなく、拒否することも許されない。


 私はただ、返信不可の電子手紙を、毎日毎日、読まされる——



【※この先は、作者による作品解説です。

自己解析・自己考察を含みます。

読後の余韻を大切にされたい方は、ここで読むのをお止めください】











——————————


最後の〝——恋人は〟からの解説ですが、

これは、物理的にメールが届き続けるといった意味ではなく、

恋人の『わざわざ死ぬ前に、送信予約をし、しっかりと〝私〟に死の現実を植え付けた上で、メールを送る』という、

異常な執着心によって、心に深く刻まれてしまったという解釈です。

故に、アドレスを変えても意味はなく、拒否も出来ない。そして、返信もできるはずがない。

ただ毎日、特定の時間になると、思い出してしまい、この一通のメールを、心の中で読み返してしまう。

そんな、人間ったらしいホラーです。


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