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廃墟の町の囁きと、忍びの痕跡

大岩猿との最悪の勝利から半日。日没が迫る頃、一行は最初の目的地である小さな集落「霧のきりのたに」に到着した。しかし、そこには人の営みはなかった。残されていたのは、黒い煤と、無残に倒壊した建物の残骸だけだった。

「...ひどい」リナが口元を押さえた。彼女の冷静な声も、この悲惨な光景の前では微かに震えていた。「戦闘があったわ。それも、つい最近の。」

里長から受けた情報では、この集落は数日前に消息を絶ったという。カラス面の男の仕業であることは疑いようがなかった。

「ふざけやがって!食料を盗んで逃げただけじゃねえのかよ!」ケンジは怒りで拳を握りしめた。紫電の衝動が指先で微かに弾ける。

「落ち着きなさい、ケンジ」クロ先生は顔色を曇らせた。「怒りで霊力を暴走させるな。ここで感情的になっても何も解決しない。タロ、リナ、指示を出せ。」

リナはすぐに巻物を広げ、周囲の霊力の残留を分析した。「破壊の痕跡から、犯人は単独ではない可能性が高いわ。そして、使われた霊力は...カラス面の男の風遁術と、もう一つ、非常に冷たく、緻密な霊力よ。」

分散行動ぶんさんこうどうを取るわ」リナはテキパキと指示を出した。「ケンジとタロは、集落の中心部で生存者と、妙な**証拠しょうこ**を探して。クロ先生と私は、破壊のパターンを分析する。」

「なぜ俺がこの暴れ馬と組まなきゃならないんだ」タロは不満そうに言った。「俺一人の方が迅速かつ正確にできる。」

「あなたの精密な火遁術は、ケンジの不規則な動きに慣れる必要があるわ。それこそが先生の言う訓練よ」リナは冷たく言い放った。「それに、ケンジ。もしタロの命令に背いて単独行動を取ったら、私はあなたに一週間は破れない幻術をかけるわよ。」

ケンジは背筋を伸ばし、顔を引きつらせた。「わ、わかったよ、司令塔しれいとう...」

ケンジとタロは、瓦礫が散乱する集落の中心部へと足を踏み入れた。

「いいか、落ちこぼれ。お前の役目は、瓦礫をどかす力仕事と、不意の敵に対する**おとり**だ。霊力チャクラを使うな。勝手な行動は許さんぞ」タロが命令した。

「チッ、お守り役のくせに偉そうに」ケンジは悪態をつきながらも、巨大な岩の破片を持ち上げ、放り投げた。その純粋なパワーは、タロですら目を見張るほどだった。

「この破壊の跡を見てみろ」タロは地面に残された巨大なクレーターを指差した。「俺たちの里の最強の土遁術よりも深く、それでいて、元素的な霊力の痕跡が少ない。単なる物理的な破壊ではない。これは...圧縮された風と、何かの術だ。」

ケンジは地面のクレーターを覗き込んだ。「風?風でこんな穴が開くのか?まるで巨大なドリルでくり抜いたみたいだ。」

「そうだ。俺の知る風遁術とは系統が違う」タロは悔しそうに言った。「カラス面の男は、里の常識を超えた、異質な力を使っている。あいつを打ち破るには、俺ももっと...」

二人が捜索を進めるうち、ケンジは崩れた寺院の地下から、微かな呻き声を聞きつけた。

「タロ!こっちだ!」

彼らは協力して瓦礫をどかし、閉じ込められていた老人の生存者を発見した。老人はひどく負傷していたが、意識はあった。

リナとクロ先生がすぐに駆けつけた。リナはすぐに老人の顔の前に手をかざした。

「私たちが助けに来ました。恐れないで。私に見せて。何が起こったの?」

リナは老人の恐怖を和らげるため、幻術を使った。老人の記憶が、リナの心に流れ込む。

黒いローブを着た者たち。冷たい氷の光。そして、耳をつんざくような**「叫ぶ鳥」**の仮面。

リナは幻術を解くと、息を呑んだ。「生存者の話によると、奴らは複数人で、霊力で凍らせたような攻撃を使い、村人たちから何か古文書のようなものを探していたわ...。そして、あのカラス面の男は、彼らのリーダーではない...」

その時、クロ先生は地面に落ちていた、黒曜石のペンダントを拾い上げた。ペンダントには、青雲の里のどの忍者の紋章とも異なる、三本の鉤爪のような模様が刻まれていた。

「これは...」クロ先生の顔が凍りついた。「これは、オーラ大陸の五大里ごだいさとの紋章ではない。これは...遥か北方の地で、数百年前、禁忌とされた**『夜鴉一族よるがらすいちぞく』**の印だ。」

「夜鴉一族...」タロが呟いた。「そんな古の組織が、なぜ今頃...」

「奴らは『嵐の心臓』を、古代の力と結びつけている」リナは結論づけた。「この印が示す場所、つまり北方の地が、次の目的地よ。そこには、奴らのアジトか、あるいは『嵐の心臓』に関する手がかりがあるはずだわ。」

ケンジは何も言わなかった。彼は、寺院の瓦礫の山から、半分土に埋もれた錆びた鉄の棒を拾い上げていた。それは彼の背丈ほどもあり、太くて無骨な、まるで時代遅れの武器だった。しかし、ケンジがそれを握った瞬間、彼の体内の紫電が微かに反応し、熱を帯びた。

「おい、落ちこぼれ。そんなゴミ拾ってどうする」タロが軽蔑の目で見た。

「ゴミじゃねえ」ケンジはその錆びた棒を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。「こいつ、なんだか相棒になりそうな気がするんだ。重いし、ダサいけど、俺の手にしっくりくる。」

クロ先生は、ケンジと錆びた棒を見て、深いため息をついた。

「どうやら、お前たちの旅は、古代の遺物と、お前のルーツを巡るものになりそうだ。夜鴉一族...北方の地へ向かうぞ。装備を整えろ!」

新たな敵の存在、そして新たなる相棒(錆びた鉄棒)を得たケンジ。雷風行チームの本格的な冒険が、今、始まった。

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