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旅路の果てと、里へ帰る道

西の島々を後にする船の上で、ケンジ、タロ、リナの三人は、静かに水平線を見つめていた。大自然霊だいしぜんれいの波動によって浄化された彼らの霊力は、澄み切った海のように穏やかだった。

イヨとの別れは、簡素なものだった。彼らは、島の平和を取り戻し、ヤテンの野望を完全に打ち砕いた。クロ先生の犠牲は、無駄にならなかった。

「終わったな...」タロが、夜空に輝く星を見上げながら呟いた。その声には、かつての cynical(皮肉)な響きはなく、深い疲労と、達成感が滲んでいた。

ケンジは、雷剛らいごうを撫でた。体内の紫電しでんは、もはや恐怖の対象ではない。それは、彼の意志によって制御された、強大な力であり、彼の魂の延長となっていた。

夜鴉一族よるがらすいちぞくの脅威は、これで潰えた。しかし、彼らの陰謀に加担していた残党は、世界中に散っているだろう」リナは、現実的な視点に戻った。「今後の行動を決めなければならないわ。」

選択肢は二つあった。

一つは、世界各地に散らばった夜鴉の残党を追跡し、陰謀の全てを完全に清算すること。

もう一つは、彼らが追われる身となった全ての原因、すなわち、自分たちの故郷である**青雲のせいうんのさと**へと戻り、**五大一族ごだいいちぞく**と、腐敗した忍びの評議会に立ち向かうこと。

タロは言った。「世界を放浪ほうろうし、残党狩りをするのは簡単だ。安全だし、自由だ。だが、それでは何も変わらない。俺たちは、里の掟に背いて逃げた者として、永遠に追われ続ける。」

「里に戻るということは、審判しんぱんを受けるということよ」リナは警告した。「風の一族かぜのいちぞくは、あなたを排除しようと動いた。評議会は、あなたの力を危険視している。最悪の場合、死罪よ。」

ケンジは、静かに海を見つめていた。彼の心の鏡は、彼が里を出て、成長した道筋を鮮明に映し出す。

「里へ帰る」ケンジは、はっきりと決断を口にした。「クロ先生は、俺を里へ送り返そうとした。それは、俺が里の未来を担う者だと信じていたからだ。俺の力が、秩序を乱す怪物ではないことを、故郷の皆に証明しなければならない。」

タロは、深く頷いた。「そうこなくてはな。俺は、お前がその力を完全に制御できることを知っている。そして、俺たち三人の団結があれば、里の掟も、評議会も、恐れる必要はない。」

リナは、少し不安を滲ませたが、ケンジの決意に共鳴した。「わかった。里へ戻るわ。ただし、私たちは、単なる忍びとしてではなく、ヤテンの陰謀を阻止した英雄として、そして里の真実を知る者として、評議会と対峙する。」

彼らの船は、針路を東へ、彼らの故郷、青雲の里へと向けた。この旅は、個人の成長の旅から、組織と政治の壁に挑む旅へと形を変えた。

その時、リナが、隠し持っていた古い通信用の巻物を取り出した。昇月国を離れる際に、ツキミ巫女から託された、故郷の状況を伝える最後の情報だった。

巻物を開いたリナの表情は、一瞬で凍りついた。

「どうした?」タロが尋ねた。

「...風の一族が、里に大規模な圧力をかけ始めたわ。私たちが戻らないことで、里は指導者を失い、混乱している。評議会は、風の一族の主導で、里の権力を奪おうと動いている...**政治的な危機せいじてきなきき**よ。」

「ちっ、俺たちの不在を好機と見たか」タロが舌打ちした。「風魔リュウは、私たちを追うことを諦め、里を掌握することで、間接的に私たちを追い詰めようとしているんだ。」

ケンジは、船の舳先へさきを握りしめた。彼の心は、怒りではなく、深い責任感で満たされていた。

彼の力は、もはや安定している。だが、彼の故郷は、外部からの汚染ではなく、内部からの腐敗によって危機に瀕していた。

雷神の器は、世界を救うために力を得た。今こそ、その力で、自分自身の故郷を救わなければならない。

三人は、里へと向かう。待ち受けるのは、五大一族と、腐敗した権力者たち。それは、彼らの忍びとしての最終的な試練となるだろう。

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