第Ⅶ話 高校交流
生徒会は学校にもよるが、他校の生徒会との交流を交わすことがある。会談内容は様々だが、今回は戦闘にも関わる重要な話だった。
今回訪問しにいくメンバーは会長、村瀬先輩、俺、加藤だった。
「今日は抜刀高校に訪問しにいく」
「武道が強いところですよね。よく大会でも耳にします」
抜刀高校。パトリオット設立から交流関係にある高校だ。剣道部や柔道部などに強く、最近は軍拡が進んでいる。
M3に乗り抜刀高校に向かった。
抜刀高校…
到着後、明治時代の日本のような校舎に入った。出会う抜刀の生徒達は挨拶がよかった。
生徒会室がある2階に上り、窓を見ると訓練場が見えた。
訓練場では歩兵が市街地戦の訓練をしているのが見える。路中にはルノー乙型戦車が構えていた。
「会長…抜刀高校って初めて来ましたケド…こんな軍事力高いんですね」
「舐めちゃいけない。彼らはあのバグラチオンの前身であるドゥーマ大学附属中高一貫校を壊滅にまで追い込んでいる」
因むが、バグラチオンと呼ばれる高校は中高一貫のマンモス校で、軍事力、経済力も高い強力な高校だ。なお、今パトリオットとバグラチオンは競争状態にある。
「生徒会室はここか」
ノックをして入ると、そこには1人だけで、黒板を消している。
「失礼します。伊藤会長はいらっしゃいますか?」
その子は小柄な子だ。
「パトリオット高校の方?一応、私は副会長の千歳 門院だが…」
「はい。会長さんにご用件があるんですけど…何時頃帰ってきますかね?」
「10分もせずに帰って来るはずです。職員室に行っただけだし、中で待っててください」
「すみません。お邪魔します」
会長に続き俺らも入ると、副会長はおしぼりと緑茶を出してくれた。
「まだまだ暑くなりそうですね」
「そうですねぇ…まさに真夏って感じで…」
会長が話している間、辺りを見ると、ガラス張りの箱には三八式歩兵銃や十一年式軽機関銃、軍刀が置かれていた。校章が描かれた旗には風林火山と書かれている。時計は旧漢字数字式で、部屋には畳と襖があり、今までにはない部屋だった。パソコンはなく、どうやらメモは鉛筆で書いてある…字が綺麗。
和式の生徒会室…めっさおされ…。
「洒落てるだろ。私達の生徒会室は」
「ふぇっ!そ、そうですね!」
「まだ1年生だな?和式の生徒会室は初めてだろ。私もここに来た時は感動した。今や正座をするのが普通になってしまった。洋式や他校の連中にはなかなか理解されないと思っていたが…私は君を気に入ったよ」
「あ、ありがとうございます」
「おや、お客さん?」
丁度そこに抜刀高校生徒会長の伊藤 局会長が現れた。
「会長。パトリオット生徒会からのお客様だ」
「これはこれは…。申し訳ない。時間を忘れていた。千歳。すまないが少し席を外してくれ」
「承知」
千歳副会長が出ると、遂に本題に入った。
「ゼーレヴェ再軍備化の話を聞いたことはあるでしょうか?」
「ええ。Ⅱ号戦車の購入が目立った話ですね」
「バグラチオンと秋の歌女子にも敵対し、あなた方も最近軍事力を上げてきている。領土が欲しいのは私達パトリオットも同じです。あなた方が勝利するために、ゼーレヴェに協力するのではないかと思いまして」
「確かにゼーレヴェの兵器は優秀なものばかりです。参考にもさせてもらいました。しかし、自らの学校は自らの手で守らなければなりません。協力する噂はありますが、あくまで噂なのですよ」
「そうですか。それともう1つ。旗袍高校と既にあなた方は戦闘状態ですが…流れで他校に宣戦布告をいたしますか?」
その言葉に生徒会室は静寂が走った。
一番高校が恐れているのは負の連鎖。1つの火種が他に移り"戦闘"という空気を作ることで他校も戦闘を行うことなのだ。
「…我々から宣戦布告は行いませんが、他校が攻めてきたというのなら我々は断固戦います。それはパトリオットだって同じなはずです。あなた方はバグラチオンと技術競争中とはいえ、秋の歌女子や聖ジェームズ学園とはあまり関わりたくないはずですが、もし戦闘が始まったら戦うでしょう?」
「…そうですね。今日は以上です。わざわざお時間をいただきありがとうございました」
張り詰めた空気が少し溶けたような気がした。会談って…こんなに緊張するもんなのか…。
「せっかくの機会です。よければ、抜刀の中を見ていきますか?私がご案内いたしますよ」
「い、いいんですか!?」
会長の目が輝く。会長…凄いワクワクしてる。あんな姿見たことない。
「もちろん。それに、こんな空気は1年生にとって地獄でしょう。高校の交流に興味も持ってもらいたいのでね」
「1年生は大丈夫…?予定とかある?」
「私は大丈夫ですよ会長」
「俺も大丈夫です!」
「村瀬は?」
「大丈夫」
「…では、お願いしますっ…!」
俺らは抜刀高校のキャンパスツアーを受けることになった。きっと、これも会談ならではの貴重な体験だ…。こんなの逃すわけにはいかない!