第Ⅲ話 パトリオット・シンジケートの闇
会長がパトリオット・シンジケートについて話してくれた。その話に俺達は衝撃を受けた。
「そいつら、元はエトナ高校っていう別の高校いたんだ。当時はエトナ・オメルタって言われてて、生徒会と対立関係にあった。そこで、生徒会が強行して動いて、数人捕獲。そのまま退学処分になったんだけど、残党はパトリオットに裏口入学して拠点を作った。結果、今のパトリオット・シンジケートになって、裏からパトリオットを牛耳ってる」
「先生達は気づかないんですか?」
「何人かは上に訴えてる。なんなら私達生徒会の顧問もね。でも、ここは私立。金さえ手に入ればそれでいい思想で生きてる先生が溢れてる。賄賂渡されて、口止めされてるだけ」
酷い話だ。説明会に行って話さないのは、定員割れになりかねないなら理解できるが…賄賂まで渡っているとは。
そして、先輩達はそれを知っている。少なくとも会長は。となると、生徒会は口止め料を貰っていない。しかし、賄賂が先生に行く時点で相手は教師陣。手強いから攻められないんだ…。
「…会長。俺、黙ってられません。戦いましょう!」
「無茶なことを…。高峰君が考えてるのは十分理解できるよ。私も最初はそうだった…。でもね高峰君。パトリオット・シンジケートは年度予算すら狂わせてしまうほど金銭関係に浸透してるの。下手に相手にすれば、他の部活や委員会が人質になってしまうんだよ…」
帰ってからもずっと考えていた。あのパトリオット・シンジケートのことを。一体、どうすればいい。生徒会に宣戦布告したなら、戦闘は起きること確定だ。
次の日、学校に行っても考えている…授業に集中できなかった。
放課後、生徒会の扉を開け出勤。今日は仕事はない。だから先輩達も不在だ。
「高峰。ずいぶん考えこんでるな」
「なんでわかったんだよ」
「小学校3年間同じだった人間だぞ?」
そう。朝山は小学校3年から6年まで一緒だった親友だ。
「…高峰。俺らはチームだ。生徒会だ。1人で考えこむな」
「そうよ。部活動体験会で出会った同士、私達も協力するわ」
「…ありがとう」
こうして、先輩の手助けなく作戦を練った。エトナ高校が追い出せたのはおそらく、賄賂を渡していなかったからだろう。今回の件はそもそも生徒会側が不利だ。だから、どの部活も協力するのは避けたいはず。
「お疲れ様でーす」
入ってきたのは新渡戸先生だ。少し急いでいる様子だった。
「ちょっと体育祭パンフレットの修正をしなきゃいけないんだけど、入部申込書と継続届を何人か返さなきゃいけないんだ。分けてでもいいからこの人達に渡してくれる?」
※入部申込書・・・その名の通り入部する部活を書く書類。部活入る時に渡す。名前不記載、記入ミスがあると返却される。仮入部期間に渡しても受理はされないこともあり、この間なら部活変更ができたりする。なお、部活によってそれは異なる。慎重に入部は決めよう。出し忘れると正式な入部ができない上、生徒会がデータに打ち込むので困る。放置していても大丈夫。入部できないだけだから。
※継続届・・・部活動継続届のこと。2年、3年生が書く書類。ここで辞めるか留まるかの2択を選択できる。名前不記載、記入ミスがあると返却される。出し忘れると生徒会がデータに打ち込むので困る。放置してると先生から言われるから早めに出そう。
「みんなでやりまーす」
「よろしくお願いします…」
申し訳なさそうに頭を下げた。愛媛が書類を貰い枚数を分けた。
「とりあえず分けたから、みんなでやろ」
「そうだな」
とりあえずジャンケンで決めた。
結果、俺は先輩のところ行くことになった。
えーっと…村瀬先輩と石井先輩…どっちも生徒会代表じゃねぇか。
「確かここのクラス…。いた。会長!村瀬先輩!」
クラスの入り口から呼び、そのまま渡した。
「いやぁごめんねぇ…。会長としてあるまじき姿だわ」
「いやぁ申し訳ない。普通に名前書き忘れてた」
恥ずかしそうにありがとうと継続届を持っていった。あーあ。あれ出し忘れるパターンだな。
とりあえず、先輩とコミュニケーションはとれた。こんな感じで関わればいいのか…?
数日後…
「じゃじゃーん!パンフレット出来上がりましたーっ!」
体育祭実行委員のパンフレット係係長がパトリオットを持ってきた。
生徒会の特権その①。ネタバレできる〜。
体育祭パンフレットといった、後に生徒達に配ったり知ることを先に見れるのだ。しかしこれを他の生徒に言ってはいけない。それがルール。
「今年のパンフレットも表紙すごいね…」
パンフレットなどのイラストは校内で募集している。部活、委員会、学年関係なくだ。だいたいはハイクオリティや完成度たけーなオイなイラストらが対決するのだが、稀にR-18風なイラストを描いて表紙にしようとする例がある。実際、私はそれを見たことがある。そのイラストに賛成したのは男子だけだった。
「そういえば川門。宣伝ポスター終わったの?」
「うん。もう終わってる。貼っといたから見といて」
未だどういう人なのかわからない先輩、川門先輩。常に冷静で正論を言う人だ。でも黙ってることが多い。生徒会の人には結構優しい。
「あのさぁ…終わったら見せないと。報連相だよ?」
「ん?あ、うん。すまん会長」
※報連相・・・社会でもよく使うやり方。報告・連絡・相談の3つ。これはかなり重要だからやった方がいい。野菜じゃない。
こうして、体育祭の準備は順調に進んでいた…のだが、問題が発生する。
先輩とコミュニケーションを取るために、アニメの話をしながら盛り上がっていた最中だ。会長が生徒会室に突入してきた。
「みんな大変。実況生徒会がやるだって」
「「「え?」」」