第1年後編 第Ⅹ話 卒業式の戦い 前編
予餞会も終わり、ついに卒業式が近づいてきた。
ちなみに、予餞会とはいわゆる"三年生を送る会"のことである。学校によって内容も場所も異なるようだが、ここは実験的な場所でもあるのだ。
予餞会が上手く行くためにはどうすればいいか、どうやって3年生が喜んでくれるか。あらゆる事態と問題を想定して予餞会実行委員は活動に取り組み、実際どうだったかを記録する。
正直に言うと、出し物は失敗する時と大成功する時の1と100しかない。漫才と同じであり、それが観客を笑わせられるか滑るか。もちろん、これは去年や一昨年といった歴代予餞会の結果と反省を組み込んでいる。
だが、やはり予餞会自体の完全な成功はありえないというのが事実だろう。何かしら問題が発生する。上記のように出し物が大失敗することもあれば、実行委員の無断欠席者増加、作成物の破壊、パンフレットの表記ミス、職員方の伝達ミス、必需品の忘れ物。とりあえず何かしらが起こる。それに対して生徒会はカバーをするのがお仕事だ。そのため、毎年毎年は怯えてストレスが溜まりながらやっていかなくてはならない。
※学校によります(多分)
ちなみにだが、私は予餞会当日に風邪を引き色々と手伝ったが結果が見れなかったというショック極まりない事態を経験した(泣)。
「卒業式って生徒会は何するんです?」
「会長は卒業生への言葉と、花渡しだ。非常に重要な役割だぞ。副会長も花渡しを担当する…が、今年は壇上で1人ずつに渡す形式だ。だから会長だけでいい。副会長には安芸がダウンしている代わりとして代理広報になってもらう。このカメラで場面を抑えるんだ」
「他は?」
「風紀委員、訓練委員と共同で警備だ」
卒業式当日、僕と愛媛は体育館の中に入り卒業式に身構えた。他の生徒会メンバーは警備としてM1ガーランド、トンプソン、ブローニングM2を備えできる限り最大の警備体制を敷いた。
<こちらH。哨兵を交わして領域に不審車両2輌が侵入したと考えられる。詳細は不明。音からするにバイクと推測されたし。全員警戒体制を上げろ!」
卒業式では不良や地元の暴走族が侵入することは稀にあるという。だが、以前は大人数やら騒がしい行動を取っていたというのに、今年はやけに慎重というか、まるで偵察兵か何かだった。
今分かるのは、緊急事態だということ。
「巡回は何をしていたんだ…!」
「生徒会が慌ててはいけない」
「ですが川門先輩…今は各学校の緊張感が高まっている時期。もし反抗勢力の攻撃なら卒業式どころでは…」
「だからだ。今、生徒会は警備の司令部。冷静に対応を考えるのが仕事だ。最悪、最終手段もある」
川門が見た先にしまわれていたのは迫撃砲である。最終手段とは、高火力兵器による鎮圧。だが、もし相手が別高校の部隊なら、戦闘を招くどころか各学校同士の全面戦闘も起こり得ない。
<こちらF!不審車両を確認!サイドカーだ!機関銃を搭載してます!>
その無線を聞いた全員に、身体中が凍りつくような緊張感、そして危機感が走った。
数秒の静寂後、朝山が無線機を手に取る。
「…各隊に通達。不審車両は機関銃を搭載した非常に危険な存在であり、我が校に危害を加える可能性が高い。よって、目標をHVTに認定する。発見次第、各自発砲せよ」
<<了解>>
川門は頷き、トンプソンをコッキング。最終手段である迫撃砲の弾薬箱も開封した。
「波乱の時代を生き抜く覚悟はあるようだな」
「…生徒会に入った時点で、もう決めてますよ」
一方、卒業式は華やかな雰囲気と華麗なる景色に包まれ、その記録は生徒会、保護者、職員方の目とカメラに写されていた。外で何が起きているかは、知る余地もない。
「送辞。在校生代表、高峰 眞木」
高峰が壇上に上り、卒業生、保護者と前に立つ。凛々しい姿にかつての生徒会役員たちは心底歓喜していた。あんなに成長したんだと。
生徒会にとって、後輩は期待の新人。どの部活よりも重要な役割と責任を持つため、余計、その気持ちに拍車がかかる。その後輩たちが立派に成長した姿を見るのは満足でもあり、微笑ましく、自分の意思が受け継がれたという功績を残せた達成感までもがある。そして何より、可愛らしい後輩を見るのが嬉しいのだ。
「暖かい風が吹き、春の訪れを感じる時期となりました。3年生の皆様、ご卒業、おめでとうございます。僕たちが入学した当初、不安で心が砕けそうになる中で、先輩方は優しく、笑顔で接してくださいました。体育祭ではリーダーとして導き、文化祭では全力で楽しみ、最高学年としての責任を担ぐ姿はとても洗練されたものだったと感じます。行事だけでなく、部活動、委員会でも率先して活動を行う姿も、磨きがかった先輩の力なんだと思いました。私は人生初めての生徒会で、何も分からないだらけでしたが、石井先輩をはじめとする生徒会役員の先輩方が丁寧に教えていただき、応援をしていただいたことで、今、僕はこの壇上に立つことができています。本当にありがとうございました。先輩方を見て、僕らも先輩の姿、意思、行動を受け継ぎ学んでいきたいと思います。きっと、それはこの高校を支える力になるでしょう。最後に、卒業生の皆様に、心から感謝を申し上げます。先輩方がこれから大学、社会で活躍することを願い、送辞とさせていただきます。在校生代表、高峰 眞木」
拍手が巻き起こり、涙を流す者もいれば微笑ましく笑う者もいた。それは卒業式だけではない。職員、保護者の他、PTAといった来校した人々全員である。
「クソっ!ガーランドで機関銃2丁なんかに勝てるかよ!」
その頃、外は深刻化していた。体育館まで後1kmもない場所で、サイドカーに搭載されたMG34が火を吹いている。
「…まさか、相手がゼーレヴェだとは…」
既に風紀、訓練委員の数名は撃たれ気絶しており、残るは生徒会と数名の委員だけだった。
「…仕方ない、最終手段だ!加藤に撃たせろ!」
司令部からはM1 81mm迫撃砲が設置されていた。




