第1年後編 第Ⅷ話 脱出
ラジオからはヨーデルが流れバー内はさらに激化していた。
ついにはカウンターまでにも人が飛んできては殴り返し、そこにはマスターすら参加していたのだった。
「2人ともこっち!」
手を引っ張られ俺らは店の外へ出された。
それを見ていたゼーレヴェの生徒会役員は無線を使う。
「2人が逃げました」
<暴動は後でいい。奴らを捕まえろ>
「了解です会長」
店の外に出され、手を引っ張ってきた生徒の正体は安芸先輩。
「安芸先輩!?なんでここに!」
「こっちのセリフ!なんで会長と朝山君が居るわけ!?んまぁ、とりあえず逃げるよ!」
後方からSd Kfz 231 6輪装甲車が接近。銃声が響き僕らを追う。
「バレてたのか!」
「最初からだよ!君も会長も、この高校の生徒会長に知られていた!」
「いつのまに…」
「こっち!」
小さい路地に入り、安芸先輩はマンホールを開ける。
「…まさか…先輩…」
「バレちゃったんだから仕方ないでしょ!ここが一番のショートカットなんだから!」
確かに…捕まるよりはマシだ。
俺ら3人はマンホールの中へ入り、暗闇をの中でライトをつけ走る。
それを見ていた追跡中の6人の風紀委員はマンホール周辺に集まっていた。
「…誰が行く?」
「俺は嫌だぞ」
「ガスマスクはないのか?」
「校内に置いてきちゃった…」
そこに現れたのは絵理花会長である。
「何をモタモタしている!全員が行けばいいことだろう!」
「じゃあ会長も入ってくださいよ」
「えっ」
会長は悩んでいた。
ここで入れば奴らを捕まえられるかもしれない情報も手に入る?戦闘で勝つ確率は上がるかもしれないが問題になったらゼーレヴェの名声も落ちかねない?いやでも中は汚いし汚れたくないな今日の晩御飯何にしよう?
「…仕方ない。行こうか」
会長専用のピッケルハウベを被り、シュタールヘルムを被る風紀委員が続く。
中は酷い臭いだったが、パトリオットの3人組は逃げ続けていた。
「こっちは行き止まりだな…」
「方向は合ってる。どこかに出口はあるはず」
声がした。後ろからだ。
「追跡部隊がやってきたね。脱出を急ごう」
「でも脱出口が分からないなら捕まる可能性の方が高い。何か、策を考えなきゃだな」
そこで俺らが考えたのは"やり過ごす"だけだ。
高峰は辺りのマンホールを探り、そこが出口かを出口じゃないかを確認。朝山と安芸は排水に浸かり、追跡部隊を来たところで潜水。追跡部隊から逃れるつもりだ。高峰は出口が見つからなかった場合、朝山たちと合流する。
「…見ないでよ」
「見ないですよ先輩」
安芸の服装が濡れ透けている。
安芸先輩って意外とデカいんだな。
一方、追跡部隊はライトを照らしつつ周囲を探していた。
「奴ら、どこへ消えたんですかね」
「正直、私もマンホールの中に入ったのは初めてでな。外へ通ずる出口はわからないんだ」
ガゴォンと、中に轟音が響く。
「あっちだ!」
「急げ!追え!」
この轟音は高峰が誤って開いていたマンホールから手を滑らせ閉じてしまった時の音だった。これにより追跡部隊に場所を晒すことになる。
高峰は排水に浸かった。
「何やってんだ高峰…」
「来たよ」
追跡部隊のライトの光が見える。辺りを調べ始めた頃、3人は息を大きく吸って潜り、なるべく泡が出ないよう息を止めた。
「ここのマンホールから出たのか?」
「二手に分かれよう。風紀委員5人と私は外に出て奴らを追いかける。残りの5人はここに残れ」
「「ヤーヴォール!」」
最悪の事態だった。やり過ごすはずが留めてしまった。
ここで安芸は最終手段を下すことになる。
会長と5人がマンホールから出た数秒後、ゆっくりと汚れた顔を出す。
「…なんだ…?」
1人の風紀委員が気配を察知しライトを向ける。
「うわぁぁぁぁっ!?変態だぁぁぁぁ!?」
風紀委員がKar98kを装填する前、安芸は隠し持っていた2丁のM1911を発砲。2丁拳銃という器用な戦法であっという間に5人を気絶させた。
すぐに上昇した高峰と朝山が顔を出し状況を確認する。
「けほっ…先輩武器持ってたんですね…」
「当たり前よ。禁止区域以外、一度も手放したことはないわ」
急いでここを離れ、高峰が案内をする。
「さっき確認した時、出口の裏門が見えました。出口まで後少しなはずです!」
角を曲がり、さらに曲がり、入り組んだ構造を突破し、鉄の梯子が見えた。外へ通ずる出口である。
急いで上へ登りゆっくりとマンホールを開ける。
敵がいないことを確認し飛び出した。
「駐車場だな」
どれも鍵がかかってる。徒歩での脱出は危険だ。
「私に任せて」
「先輩?」
奥の生徒が乗車している車両を見つけ、話しかける。だが、ただのコミュニケーションではなかった。
「…なぁ高峰」
「何?」
「あれ多分ハニトラだぞ」
「だろうね…」
明らかに胸やら尻やらを強調している。水に浸かったおかげでスケスケ。適材適所とは、ある意味こういうことなのかもしれない。
「ぶんどったわ」
「お見事です先輩」
「脱出だ。さっさとパトリオットに帰ろう」
そのまま裏門を突っ切り道路を爆走。高速でパトリオットに帰還した。
パトリオットの生徒会室に到着した時、そこには会計作業をしていた加藤がいた。
「…え?何があったの…?」
意味不明な惨状だったんだろうな…俺らの姿。




