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我らは生徒会!  作者: イチバ
第1年後編 嘆きの生徒
15/20

第1年後編 第Ⅵ話 変動

「バグラチオンと抜刀が衝突したそうだぞ」

「マジか?」


学校新聞に記載された記事にそう書かれていた。

バグラチオンとはパトリオットや抜刀とも仲が悪いマンモス校。正式名称はバグラチオン小中高一貫大学附属高校で、その人数はパトリオットを軽々と超える兵士、兵器を保有している。前身のドゥーマ中高一貫大学附属高校は抜刀に敗れたが、どうやら今回はその復讐か何かなのかもしれない。


「…見に行ってみるか」

「正気か朝山!?」

「行くだけの価値はある。抜刀とバグラチオンの力はどれくらいか、今は旧データでしかわからない。今の力を知るべきだ」


確かに一理ある。

ただ、もし正体がバレた場合、関係悪化は避けられない…。


「どうだ会長。判断は任せる」

「………行ってみよう」


僕は決心した。先輩から叱られるかもしれないけれど、行ってみる価値は十分にある。今はリスクを冒してでも強くなるべきだ。



抜刀・バグラチオン衝突現場

同 前線


「西住。待たせたな」


河内と合流したのはイ号のキューポラから顔を出す生徒会2年の西住(にしずみ)書記である。西住書記は戦車隊隊長でもあり、その指揮能力は非常に長けていた。

だが、初のバグラチオンとの戦いには苦戦をしていたのだ。


「現状はどうだ?」

「やはりイ号やチハでは火力不足だ。ましてやハ号なんぞただの鼠だ。破壊できないわけじゃないが、敵の方が火力面は優れている。こっちが勝つ前に弾が先に尽くかな」


抜刀側の戦車の主砲は歩兵支援を目的とした大砲で、徹甲弾(AP)ではなく榴弾(HE)が主流。そのため対戦車能力は低く不向きな一方、今回の戦闘に参加したバグラチオンのBT-5、BT-7快速戦車、T-26軽戦車の他、BA-10装甲車の主砲は徹甲弾が主流の大砲。貫通力も高く機動性までも高い厄介な代物だった。


「分かった。引き続き西住は指揮を頼む」

「河内はどうするつもりだ?」

「一度本校に戻る。追加の部隊を送ろう」

「助かる」


この戦場を、叢の中から俺と朝山は抜刀の制服を借り変装し、双眼鏡を使い見ていた。


「こりゃエライ状態だな…」


広がる草原の中、抜刀とバグラチオンとの戦闘は激化していた。

この戦況は彼らにとって地獄だろうが、僕らからすれば天の恵み。この展開と結果を知れたのは今後の戦略や兵器購入にも役立つ。

今は戦闘ムードじゃないが緊張状態。戦闘の流行り(トレンド)が何かはわからないが、資料が無いよりマシなはずだ。


「抜刀が使ってるのはイ号の他に新型がいるようだな会長」

「九七式中戦車チハの他に九五式軽戦車ハ号。そして装甲車の九四式軽装甲車(TK)…。あの時、僕たちが抜刀高校に訪問した時にあったのはルノー乙型とイ号、そしてヴィッカース・クロスレイだった。それがここまで進化して、バグラチオンと戦えるレベルまでに…恐ろしい…」


明らかな成長。これだけは確実だ。

パトリオットが購入したM4シャーマンには歯が立たないかもしれないが、戦法によっては側面を取られたり、奇襲でやられかねない。特に、抜刀の得意技は接近戦だけでなくゲリラ攻撃だ。戦車は視界が非常に狭まる。ゲリラ攻撃なんて気づかないこともある。彼らを甘く見るのは自分の首を絞めるのと同じだ。

ついに弾丸と砲弾がこっちにまで近づいてきていた。


「会長。潮時だ」

「そうだね」


俺らは叢から飛び出して必至に走った。弾丸が肩を這うようにギリギリを飛び、砲撃跡のクレーターに避難しても次々やって来る。


「朝山!煙幕(スモーク)!」


朝山がスモークグレネードを投げ白煙を展開。敵の視界を遮断し一気に逃げ走る。

司令所に置かれていた軍用車のエンジンをかけ、俺らは撤退したのだった。



時は経ち1ヶ月後

冬休み


2学期が終了に冬休みに突入した。

この冬休みという長期休暇は生徒会の業務は定例会か学校説明会の2つのみである。学校にもよるが、私の場合はそうであった。

まさに、生徒会が一番ゆっくりとできる天国のような時間なのだ。

だがやはり、他校違う。



聖ジェームズ学園

生徒会室


三浦(みうら)会長。ゼーレヴェの兵器が実戦で証明されました。こちらが資料です」


紙束にずらっと書かれていたのはその戦果である。


「義勇兵の証言を元に作成しましたが、これは確認されたものだけです。見えないところを含めば、さらに戦果は昇るかと」


「会長。もしかすればですが、宣戦布告する前に交渉すればまだ間に合うのでは」


聖ジェームズ学園生徒会会長である三浦(みうら)ウィリアムはすぐさまゼーレヴェへと直行した。


ゼーレヴェでは冬休み中に行われる学校説明会の準備の最中。学園内は少々慌ただしい状態が続いていた。


「聖ジェームズ学園の三浦ウィリアム様…現生徒会長様ですか」

「ああ。楠本 絵理花会長に合わせてくれ」


事務室の職員は少し困った顔をしていた。

何しろ、聖ジェームズとゼーレヴェは昔から対立し、軍事や領土で競争を行ってきた。こういったゲリラ的な交流は関係悪化を招かないからだ。


「我々が案内いたします」


ゼーレヴェ生徒会のメンバーだ。腕章に生徒会と書かれた生徒が私を連行された。


「失礼いたします」

「どうぞ」


扉を開けると、そこには窓からグラウンドを眺める楠本会長がいた。


「ご機嫌よう」

「ご機嫌よう。座ってもらって結構だ。急な訪問とは、何か話したいことでも?」


緊張した空気が一瞬にして広がった。


「随分前のことだが、秋の歌女子学園と戦闘をしたのを覚えていらっしゃるか?」

「勿論。ゼーレヴェには、『負けたと書いてこの厚さ?』なんてブラックジョークもあるほど、屈辱感に駆られた経験だったそうだ」


まだ彼らが生まれてもない頃、ゼーレヴェと秋の歌での大規模な戦闘が起きた。この時点でゼーレヴェと秋の歌は完全に決裂し、今でも続く対立関係にまで至る。


「諸君らゼーレヴェは再び戦闘をするのではないかと、我々聖ジェームズ生徒会一同は予測していてね。現、ゼーレヴェはかなり復興が進んでいる。学校博覧大会もこの学校が主催側になるほどだった。そこでだね、かなり武装化も進んでいるように思えるんだ」


数秒の静寂が流れた後、楠本は口を開き語った。


「防衛力ですよ。対抗できる最低限の防衛力。生徒の武装は未だGew98とルガーP08です。連盟から支給されているだけで、話題にするまでではないと思うのですが」

「Ⅱ号戦車もですか?装甲車やタンケッテの支給はされるが、Ⅱ号戦車は軽戦車。Ⅰ号戦車はまだ納得が行きますが、Ⅱ号は購入品のはずです。再軍備化は禁止されています」


かつてゼーレヴェとの同盟と聖ジェームズとの同盟を締結していた学校らは大規模かつ長期化した戦闘が続く頃があった。この時、ゼーレヴェは敗北。今も再軍備化は禁じられている。


「確かにⅡ号は購入しました。しかし公になっている情報でかつ連盟からは注意されていません。あなた方がシャーマンやらチャーチルやら持っているなら、Ⅱ号戦車ぐらいの所有は妥当でしょう」

「Ⅲ号は?Ⅳ号の購入も検討していると聞いたぞ」

「あくまであの頃のような戦闘になったらのお話です。我々生徒会というのは生徒のため、学校のための組織。いわば委員会及び部活動。防衛能力として必要になれば購入するのは当たり前でしょう?これ以上、情報を手に入れたいというのはスパイ行為に値しますよ」

「違反だ!」


三浦は声を荒げた。

指摘を拒ぐように生徒会役員が入ってくると、銃を向けられた。


「お引き取り願います。立派なスパイ行為になりかねません。これはあなた方のためです」


三浦を引っ張り出し、校舎の外に投げ出した。


「いだぁ!酷い!」

「お引き取り願います」

Gew98を装填すると銃口を向けた。周りにゼーレヴェ生徒がいないのが不幸中の幸いである。


「…クソ…」


三浦はトボトボ帰ることになったのだった。

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