第1年後編 第Ⅴ話 さらば3年生
久しく生徒会全員が集まったこの日。
生徒会選挙を終えた後、3年生は任期を終え生徒会を引退することになる。本来、他の部活は7、8月に引退だが(一部の部活などは除く)、生徒会選挙で役職を持った生徒会役員はこの時まで引退できない仕組みだ。これを任期という。
「それでは定例会を始めます。まずは、1年生のみなさん、選挙お疲れ様でした」
会長が定例会を始め、白いパソコンを用いて安芸先輩が正確に内容を打ち込んでいく。
「川門から聞いたけど裏で取り合いしてたんだって?」
村瀬先輩のその言葉で俺と朝山は赤面した。そりゃ練習場貸切で取り合いバトルしてたなんて、見ていた川門先輩が言わないわけがない。
「まず、村瀬から話そうか」
最後の日お馴染みの"ありがたいお言葉"だ。最後の部活動は話し合いというのが生徒会の特徴でもある。活発的なものはないが、一言一言が体に沁みる。
正直、3年生と長く親しんだ関わりがあるかと言われれば無い。でも、それでも目の前にいた先輩が消えてしまうのは悲しいのだ。
「1年生はね、みんな協力的で凄いよ。体育祭の時も1年生たちがいなかったらあのまま崩壊してただろうし、保護者にも怪我人が出るところだった。パトリオット・シンジケートの拠点に1年生が乗り込んだから奴らを倒すこともできた。1年生がいなきゃ乗り越えられない場所もたくさんあったし、本当に感謝しかないよ」
確かにそうだったかもしれない。あの時、俺らがいなければ生徒会がどうにかなっていたと感じる場面は多々ある。でも、先輩がいなかったらと振り返ると、きっと僕らだけでは不可能だった。
「でも、1ついうなら1年生は少し静かじゃないかな。生徒会の1年生同士の会話も他と比較したら静かだし、2年生との関わりが少ない。まぁ、2年生が異常なほど物静かってこともあるんだけどね。2年生はそれを改善した方がいいかな。2年生は真面目だし、仕事もテキパキできるところがいいけど、仕事に没頭しすぎるとチームワークを忘れがち。1、2年生に言いたいのは、生徒会はコミュニケーションがいい方が効率性も協力性も上がる。是非とも、頑張ってください。俺から伝えられることはこのぐらいかな」
村瀬先輩は最後に先生の方を向いた。
「新渡戸先生、3年間ありがとうございました。自分がここまで成長できたのは、先生のおかげでもあると思います。本当、色々なことがあって、怒られたこともありましたけど、それがあったからこそ成長できたという場面もありました。本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
新渡戸先生も頭を下げた。
新渡戸先生は14年前から生徒会の顧問をし、まさに生徒会の伝説を永らく知っている人物であることに間違いはない。先輩のことも、僕らのこともきっと後世に語り継ぐのはこの人だろう。
「じゃあ、会長、どうぞ」
「えっと…その、1年生と2年生のみなさん、本当にお世話になりました。物忘れもあったり、叶わない公約もあって、挫折しそうになることもあった。でも、みんなが支えてくれたからこそ、ここまで来れたし、今この場に居ることができてると思う。2年生は真面目だからやる事は必ず成功させるし、1年生はコミュニケーション能力を活躍して抜刀高校と交流までできた。後輩がいなかったらって思うと、今でも怖くなる。みんなの理想的な会長にはなれなかったかもしれないけど、少しは学校のためにも、みんなのためにも役立てたと思うよ。本当にありがとうございました。先生も、私の公約やら我儘やらに付き合ってくれて、本当に3年間ありがとうございました…」
「「ありがとうございました」」
会長はこのパトリオット生徒会の会長の1人として歴史に刻まれる。伝えてくれる人がいる限り、ずっとこの歴史は残るのだ。もしかすれば、会長だけではなくて、この生徒会全員が歴史に載るという意味にもなりえるだろう。
新渡戸先生が口を開いた。
「はい。ではね。3年生のお二方も、本当にありがとうございました。正直、生徒会が2人だけの代は珍しくて、かなり大変だったかと思います。でもね、それを後輩と一緒に乗り越えて、公約までしっかりやろうとする姿に私は感動しました。私も凄い助かったし、オープンキャンパスや説明会も上手く行きました。本当にお疲れ様でした」
少し静寂な雰囲気が流れた後、安芸先輩のタイピングが終わった。エンターキーのカチっという音が生徒会室に鳴り響いた。
「共有データに入れました。完了です」
「ありがとう安芸。じゃあ、定例会終わりにしようか」
最後の定例会が幕を閉じようとする。
「以上で定例会を終わりにします。ありがとうございましt」
終わる間際にドガァンと爆発し生徒会室の壁の一部が崩れ落ち見晴らしが良くなった。
同時に弾丸が次々と飛んでくる。
「生徒会の奴らに復讐だ!生徒会を打倒するぞ!」
先生は這いつくばって隅に隠れる。
「生徒会が全員集結してる時に戦うなんて、運が悪い相手だな」
「んなこと言ってる場合じゃないよ川門…」
全員がM1ガーランドやらトンプソンを持ちヘルメットを被る。
「安芸!新型機関銃!敵は多いよ!」
朝山と村瀬が机、椅子などを置きバリケードを作る。
相手はどうやら不良のグループらしい。命中率は壊滅的だが弾幕は油断大敵だ。
「何これ!?ブローニングM2ってこんなに重いの!?」
「そりゃ12.7ミリを連射する機関銃だしな」
「これしゃがみながら運ぶの…?」
安芸が力を振り絞って棚から下ろし、バリケードに持っていく。
「他は時間稼ぎ!」
「「了解!」」
ガーランドを撃ちまくるが、やはり弾切れの金属音の欠点が痛かった。いい音だが戦場では死神の鉄琴だ。
「高峰!朝山!持ってってくれ…」
安芸先輩がギブアップすると、俺らは頭を下げつつゆっくりと運ぶ。2人で持ってもめちゃくちゃ重い…。
「位置につきました!」
「撃っちまえ!」
村瀬先輩が言うと、俺は匍匐になりトリガーを引きバリケード越しに撃つ。とてつもない振動が体中に伝わった。ブローニングM2の弾丸は机も椅子も破裂するように壊れていく。撃ったこともない機関銃を撃ちまくり、こんなにも高火力なのかと感じた。
「なんだあの武器!?」
「構わない!戦車を出せ!」
M1917が室内に突入し俺らの方を向くが、12.7ミリには耐えられず装甲を用意に突き破り、あっという間に沈黙した。
弾切れになる頃、ついに不良は全員気絶した。
「全員逮捕ー」
武器を押収し、ひと段落を終えた。
パトリオット・シンジケートが崩壊した今、こういった不良グループに武器が渡り続けている。これに関してはもう止めようがない。どこかの購入ルートを封鎖しても別のルートができてしまう。まさにイタチごっこだ。
この戦闘が、この代最後の戦闘になり、全員と協力できた非常に良い機会となったのだった。
「疲れたな…高峰」
「…うん」
朝山と会話をしつつ、3年生最後の生徒会の姿を目に焼き付ける。
その時、ふと1つ疑問が浮かび上がった。
古賀先輩は、いつ帰ってくるのだろうか…?




