第1年後編 第Ⅱ話 大仕事
文化祭。それは学校の一大イベントの1つであり、来場者は数千を超える。しかし、生徒会は楽しむことができると思ったら大間違いだ。
「すみませんお手数おかけしますが、金属は出していただけますか?」
パトリオットは不審者対策のために金属探知機を購入。これで凶器を調べるのである。
文化祭は2日間に渡って行われるが、生徒側は実質4日間。文化祭1日前は準備日。文化祭後の1日目は片付けという形になる。正直、準備日がたった1日しかないのはかなり厳しく、2日間以上は欲しいもの。よって、実行委員だけでは手が足りないため生徒会や帰宅部は駆り出されることになる。
※学校によって異なります。
「ついに始まっちゃいましたね文化祭」
「だね。さ、文化祭を盛り上げるよ!各自奮闘せよ!」
生徒会の文化祭のお仕事を説明しよう。
①受付
②巡回
③掃除
主にこの4つである。
受付では危険物を持っていないか検査を行い、パンフレットを渡して来場者の数を数える。数え方は学校によって異なるため、どれが一般的なのか私にはわからない。
巡回ではその名の通り、不審な者はいないか、困っている人はいないか確認する。また、押し売りなど、各団体のチェックも行うのだ。生徒会では人が足りないため、風紀委員と連携して巡回する。この巡回中は生徒会の数少ない売店に寄ったりすることができる機会だ。
掃除。これは美化委員と連携するお仕事。文化祭は来場者がとにかく多く販売も多いためゴミ箱にすぐゴミが溜まってしまう。溜まった場合、ゴミ袋を出し新しい袋をセットして捨てにいく。これがかなりの地獄で、特にペットボトルはキャップやラベルが一緒に捨ててあることもあり、分けなくてはならない。また、飲みかけやティッシュが一緒に入っているケースもあり、嫌がって美化委員がサボることもある。
文化祭へ来る方へ知っておいてほしいのが、スリッパは持参することである。必ずというわけではないが、文化祭は大量の来場者によって学校で用意されていたスリッパが品切れになることがある。よって、スリッパ等を持参しないと汚ったねぇ床を裸足や靴下で歩くことになるため、持参が推奨されている。また、ポスターやホームページではスリッパの持参を喚起していることもある。
生徒会はこんな仕事をしていると一瞬でこの2日間は終わる。
「文化祭終わっちゃいましたよ!?」
「私回ったの2店舗だけだった…」
「なんか、思ってた文化祭と違ったな」
「これじゃ学校説明会と変わらないよ…」
1年の感想に会長は笑う。
「でしょー?それほど生徒会は文化祭を回すには欠かせない存在なの」
「会長。反省会いつにする?」
「明日」
「サー」
そして最後の生徒会のお仕事は片付け。文化祭が終われば生徒会も片付けに出される。装飾品の片付けや落とし物がないかチェック。ポスター剥がし、再びゴミ出しといった、頭ではなく体を使う仕事が多いのも文化祭時の生徒会の特徴である。
でも、以外とそれが楽しい。なぜなら、頼もしい仲間、先輩、後輩がいるからである。なお、多忙で頭が狂ったわけではない。
さて、文化祭が終わり1ヶ月。一大イベントはもうないと考えてしまう人が多いだろう。しかし、それは誤ちである。
これは生徒会も特に楽しみにしているイベント、それは…。
「ついに来た!この日が!」
安芸がステージ裏に花束が積められていたダンボールを置く。
「…生徒会演説。私が会長になってから1年経ったんだね…」
「早いもんだな」
生徒会演説会。それがこのイベントの名である。一般的には生徒会選挙とも呼ばれているこのイベントは、政治でいう参議院選挙。会長、副会長、会計の3枠がある。会長は1人、副会長は最大2人。会計は1人。立候補者は当選するために必死になるのだ。
※これは学校によってかなり異なります。
しかし、あまりにも必死になりすぎると人間関係を崩すことにもなる。
「今年は誰出るか知ってる村瀬?」
「1年全員だ」
「…マジで?」
「高峰と朝山は会長狙い。愛媛は副会長、加藤は会計だ」
座を取る、つまり立候補者が定員より多い場合は決選選挙と呼ばれる形になり、票の数でどちらが会長になるか決定する。
逆に、数がピッタリ、または定員より少ない場合は決選選挙ではなく信任選挙と呼ばれる形になるのだ。これは「この人がその役職になるのは信用できるか信用できないか」で決めるというもの。不信任が多い場合は落ちてしまう。
選挙に必要なものは5つ。公約、応援演説者、信頼、勇気、そしてユニークさである。
正直なところ、真面目すぎると投票数は減る。これは残念なことに事実だ。真面目がダメとは言わないが、全てが真面目かつつまらないと手のつけようがない。
公約では、学校生活が便利になったり、自由度が増えたりしそうな公約。これは校則という、教師も生徒も縛られるルールを変更できる唯一の手段である。故に、これは真面目な方がいい。
応援演説。これは立候補自身ではなく、立候補を支持する人たちの代表からの演説。なぜ彼、彼女がいいのか、信頼はできるのか。学校の人気者からの声ならなおさら良い。これに関しては人脈が必須、重要であり、ひとりぼっちの人はこの時点で詰むことになる。また、生徒会役員が応援演説をすることは禁じられている。
信頼。これは信任選挙も同様で、信頼度によって投票数は大きく傾く。これも人脈が関わってくる。
勇気。オドオドしたり噛みまくったりする人は生徒会演説に向いていない。真っ直ぐ、自信を持ちハキハキとしていることも当選する理由の1つにもなる。
最後にユニークさ。真面目すぎるのは良くないと話したように、ちょっと面白おかしく演説するとかなり盛り上がり、印象が強く残る。すると、「あの人が会長になったら面白そうだ」という意見が出て票を入れてくれるのだ。これは本当の話である。
生徒会が楽しみな理由は5つ目のユニークさである。なぜなら、そのユニークさはまるでコントのような選挙にもなるからだ。
「…寂しくなるね」
そう。楽しみは楽しみなのだが、どこからか寂しさが湧いてくる。
なぜなら、この生徒会選挙は生徒会今期最後の仕事だからなのだ。




