第1年後編 第Ⅰ話 学校博覧大会
飛行船が空を舞う。
「会長!見えたぞ!」
村瀬先輩がはしゃぎ、他の乗客達も外を見る。
そこには巨大な会場があった。
この世界には1年に一度、学校博覧大会と呼ばれるイベントがある。夏休みまたは冬休みのどちらかで行われ、毎年会場は高校だがランダムでどの高校決まる。生徒だけでなく保護者や番組までもが集まる。来場者は10万を超える。ここでは学校の宣伝や紹介、中学生向けの進路相談の他、部活の大会までもが行われるのだ。
今年の会場はゼーレヴェ高校。
参加高校の校章の旗がラッパの音と共に次々と上がる。
「参加高等学校代表者行進。拍手でお迎えください」
最初に入場したのはスパナコピタ学園。この学校博覧大会を最初に計画し実行したのはスパナコピタの第1期生徒会である。
次にキャラメル学園。現在は永世中立校。
そして聖ジェームズ学園。現在も領土は最大の高校で、パトリオットも元支配下に置いていた。
さらに次には抜刀高校、アウスグライヒ二重学園、エトナ高校、秋の歌女子学園、ゼーレヴェ高校、パトリオット高校、グロギ学園、合同チームと、全部で49校の高校生徒が参加した。因むが、合同チームは参加者が少なかった高校や、経済的な問題で参加できない高校などから少人数を選抜に作成するチームだ。このチームが競技などで優勝した場合、合同チームとして参加した高校全てが優勝となる。
俺たちパトリオット生徒会はパトリオット代表として前を行進した。
「これより、第11回学校博覧大会を開催する」
祝砲が鳴った。
「凄いですね会長!」
行進後、出場者以外はほぼ自由。俺達はパトリオット出場の競技まで各学校のパビリオンを観に行くことになった。
どれも凄い。
聖ジェームズのパビリオンにはMk.Ⅶテトラーク軽戦車が展示されている。聖ジェームズの新型戦車だ。歴史上では空挺戦車としても運用されていたという。
秋の歌女子学園も同様、新型の戦車で、ソミュアS35騎兵戦車を展示。
「すみませーん!連絡先交換しませんかー!」
きゃーきゃーと秋の歌女子学園の生徒が俺に向かって話しかける。
「乗るんじゃないぞ高峰」
「分かってる朝山」
もちろん、あんな連絡先交換などただの口車である。ここは展示会場とはいえ、一種の情報戦。特に秋の歌女子学園はゼーレヴェ過激派までがいるほどで、常に学園内は抗争が起きている。もしパトリオットがガチ目の戦闘を意識し始めた場合、聖ジェームズと条約上、戦闘が始まれば武器を供与することに。そして聖ジェームズと協力条約を結ぶ秋の歌女子学園にもその武器は行ってしまう。そうなると、過激派が黙ってはいない。パトリオット・シンジケートとは違う新たな組織発端にもなりかねない。
「ねぇねぇ愛媛。キャラメル学園って永世中立校なのにあんなに武器展示してるよ」
「加藤。あーゆーのは気にしちゃいけないの。あーでもしないと人が来ないでしょ?」
「…なるほど…」
キャラメル学園はL-60中戦車を展示。どうやら、この先は戦車ブームになりそうだ。
「…会長?」
少し会長の様子が変だったことに俺は気づいた。はて、パトリオット・シンジケートのことだろうか。
パトリオット・シンジケートは退学処分は免れた。報復を教師陣が恐れたのだ。しかし、学校よりさらに上の存在からの目が気になり、結果、"全員停学"ということになっている。古賀先輩も停学だが、生徒会からは永久追放となった。今、2年生は川門先輩だけだ。
「…みんな、ちょっと来てくれるかな」
俺達は騒がしい観客席に座り、会長が伝言ゲーム形式でみんなに話したいことを流した。
それは、ゼーレヴェが我々を監視しているということだった。
確かに、ゼーレヴェは2年前まで借金地獄で定員割れもしていたというのにこの有様。まるで復活をしたどころではなく強化された。まさか、他校と戦闘を企んでる…?
「とりあえずこの式典で下手なことは言わない方が身の為。もし秘密でも喋ればきっとゼーレヴェの上層部に伝わる」
何か、秘密がある。
ゼーレヴェのパビリオンにはⅠ号戦車やⅡ号戦車の姿はなく、代わりに銃とヘルメット、服装が展示、そして説明会が開かれていただけ。他校は軍事力の差を見せつけようとしているが、妙にゼーレヴェは積極的じゃないというか、何か隠しているように見えた。
学校博覧大会の司会席の上から見下ろしていたのは楠本 絵理花。ゼーレヴェ生徒会の会長である。
「どうだ?パトリオットと聖ジェームズは?」
「パトリオットは勘づいているようです」
「早いな。まぁ奴らはこちらとはあまり関わりたくないはずだ。そのまま情報をとるだけでいい。このまま調査を続けろ」
ゼーレヴェには狙いがあった。
とある理由で復活、強化されたゼーレヴェには弱点として財政危機があったのだ。復活したことで資金が大量に必要になっていたのである。
そこで、ゼーレヴェはある作戦を思いついた。
これは失敗すれば生徒会解散どころか犯罪にもなるものだ。
まず、兵器を全国の高校に売ることができる市場である全国高等学校総合兵器市場から購入する。
次に、購入した場合、本来は生徒会会計担当に出納帳が提出され、部費または学校の資金から引かれることになるのだが、ここで会計担当が教師陣に極秘で割引を行う。この極秘の方法は実際にできかねないため説明は省くが、こうすると、実際、購入した金額より安くなる。するとあら不思議。教師陣の目を潜り抜け、正規の値段で買っているが部費の消費を軽減できるのだ。この安くなり払っていない部分は生徒会の手により部費ではなく学校から支払われる。つまり、部費の一部を学校側に秘密で負担させるのだ。
しかし、調べれば一瞬でこの方法はバレてしまう上、学校側の負担が増えればいずれかは気づかれる。長くは使用できないこの方法を解決するにはどうすればいいか。その方法はたった1つである。
戦闘である。
他校と戦闘になり勝利すれば、賠償金が貰える。この賠償金を文化祭やこの学校博覧大会後に提出される出納帳をいじり、学校側の負担を埋める。この時に初めて学校側は嵌められていたことに気づくが、手遅れであり、経済は学校ではなく生徒会が握ることになるのだ。
「では始めようか。諸君、戦闘の始まりだ」




