第Ⅰ話 ファイト!高校デビュー!
踏切が鳴り、電車が過ぎていく。
駅に停車すると、沢山の学生が降りてきた。
透き通った朝に賑やかな生徒達。僕もその1人だ。
僕はパトリオット高等学校1年生、高峰 眞木。今日から高校生だ。
入学式。ついに来た!僕の高校生活の始まりの式典!夢だったこの学校に入れたのは奇跡だ…。この学校はマンモス校。故に入学式も豪華…!
「学生行進。皆様、大きな拍手でお迎えください」
『Over there』が吹奏楽部によって吹かれ、僕らは行進する。制服はまるで軍服のようで、親方々が歓声で迎える。
2年生と書かれた看板を持ち歩いて来るのは2学年、さらには軍用車、戦車、トラック等々が進む。
次には3学年、生徒会が行進する。
「校長挨拶。一同、起立。礼」
「祝辞…」
新入生の目はダイヤモンドのように輝いている。自分が描く未来を作るという意思と、その自由の為への意思で輝いている。
「気をつけ、礼。着席」
「生徒会長挨拶。新入生、在校生、起立」
順調に進む入学式。
俺はここで、俺が描いた高校ライフを過ごすんだ…!
1-5と書かれた自分のクラスに入ると、机の上一つ一つに新品の磨き上げらたM1ガーランドとM1911ハンドキャノン、そしてヘルメットが置いてあった。銃口は鏡の如く日光が反射し眩しく、俺らの心をさらに興奮させた。
続々とクラスの人達が入って来る。
教室はほんの一部しか喋っていない。ほとんどが肩を固くし着席しながら沈黙していた。
担任が前の扉を開けて入って来た。
教壇にファイルを置く。
「よし。じゃあ、号令をしようか。起立!」
ガタガタと机と椅子を鳴らして立ち上がる。
「気をつけ、礼」
「「「お願いします」」」
「今日から担任の新渡戸 拓間です。よろしくお願いします」
数人が挨拶と同時に会釈をする。
「ではですね、最初に自己紹介をします」
長い長い自己紹介が終わり、次の話に移る。
「今日は後1限LHRすれば帰宅となります。今日のLHRでやることは2つ」
黒板にチョークの音が鳴る。
「係決めと銃の扱い。それじゃ一つ一つ説明するので、よく聞いてください」
俺はこの高校に入ってやりたいこと、その①は生徒会に入ることだ。正直、漫画アニメに影響されてしまったのは認めよう。だが、1番の理由は色んな高校と関わりもあることに魅力されてしまったことだ。
「学級委員。誰かやらない?」
静寂が走る。
「それじゃあ…副学級委員!2人!」
再び静寂が走る。
これを2、3回繰り返した。
「…これじゃあ進まないぞ」
だ、誰もやらないのか…?
今思うが、中学のような陰キャ学校生活は送りたくない…ここで一気にキャラ変してみるか…?
「は、はい!副学級委員長やりたいです!」
俺は思いっきり手をあげていた。
「おっ!歓迎するぞ」
拍手が巻き起こる。よしよし…クラスにいい印象はつけられただろう。先生にも好印象を与えたはずだ!
「よし、じゃあ後1人!」
そこからはスムーズだった。流れを掴んだのか、副学級と委員長は速攻決まった。…委員長はほぼ推薦だが。
「よし。じゃあ今机にあるM1ガーランドとM1911ハンドガンの扱いだけど、今から配るガンケースとピストルホルスターに入れて持ち帰ることと、毎日持ってくること。授業内容で射撃訓練も戦闘訓練もあるから、忘れると痛い目に遭います。あと、危ないのでセーフティはオンにしてください」
新品の銃…高校ならではの嗜みだ…。これからお世話になるし、整備もよくやろう。
「M1ガーランドはスリングで持ち帰ってもいいけど、ハンドガンはホルスターに必ず入れて。ヘルメットも必ず持ち帰ってください。…話終わっちゃったな。後2分ぐらいあるけど……終わりにしよっか。起立。気をつけ。礼」
「「「ありがとうございました」」」
「チャイム鳴ってから帰ってくださーい」
授業後の仮入部期間。この高校は生徒会が部活判定になっている。つまり、実質今日から生徒会として働ける…!
M1ガーランドをスリングで背負い、ハンド・キャノンをピストルホルスターに入れる。
俺は生徒会室へ向かった。
「失礼します」
ノックをして入ると、そこには資料が散らかったテーブル1つと道具棚の部屋だった。色々散らかってる…。
「おっ!1年生だよね!?」
「は、はい!」
「私は3年1組石井 焔。入学式で見た通り、生徒会長だ」
150cmもないような身長にメガネをかけた女子だ。生徒会長挨拶でも見たが…やっぱり小さい。
奥にはもう3人の男子と1人の女子がいた。
「紹介しよう。副会長の村瀬 憐。3年だ。会計担当の古賀 逸斗。あいつは2年。広報と庶務担当は入学式の片付けで今はいない。後で来るから挨拶するといい」
紹介されるごとに手を振る。
「僕は1年5組の高峰 眞木です。よろしくお願いします」
「もう生徒会確定で来るの?」
村瀬先輩が言った。
「はい」
「いいねぇ。よし。ではさっそく仕事をしてみようか」
俺は真っ白なPCが置かれた机まで案内された。四角くブラウン管のような画面だ。
「このPCは生徒会の重要な資料だらけのPCで、個人情報はもちろん、軍事関係、集合写真、目安箱に入れられた投書の内容、どの生徒がどの部に入ったか等々と、いわゆる四次元PCになってる。資料に困ったらとりあえずこれ開けば分かるぞ」
「わかりました」
「今日やるのは入学式の写真の印刷。先生方が写真を撮って、広報課からデータが送られて来る。それをこのポンコツプリンターで印刷するだけ。印刷方法は教えるから、とりあえず印刷する前までやってみよっか」
マウスを握り、カーソルをゆっくりと正確に場所を合わせる。
「で、ファイル押して」
「はい」
「印刷押して」
「はい」
ただの単純な作業なのに、こんなにも楽しいのか!それに…PCなんて今まで触ることは少なかった。あるとしたら図書館ぐらいだったし…これは貴重な体験だ!
印刷が終わった…随分、長かった…。
「いやぁ、お疲れ様。言った通り、ポンコツプリンターだったでしょ」
「いくらなんでもポンコツすぎません…?」
先輩の通りだった。少し目を離せば止まってるし、突然インクが切れたり、何故か写真が上手く印刷できてなかったり。しかも、インク代が洒落にならないという。
「あいつら来なかったね」
会長が呟く。
「多分まだ終わってないのかなぁ…」
「あれ、古賀は?」
「さっき塾だから帰るって行っちゃったよ」
「塾なんか習ってたっけ?」
突如、グラウンドの方から爆発音が聞こえた。
「こんな時に!みんな装備来て!」
「高峰君はどうする?」
「これから生徒会を引き継いで行く子なら、勿論、行く。そうだろう?」
「えっ、あっ、はい!」
明らかに只事ではない。ヘルメットとM1ガーランドを持って先輩達について行った。