06 飛んで火に入る夏の虫
色々なことがあったが、無事村に到着。
本っ当に疲れた。まじであの村長許さん。
「只今戻りましたー!」
「おい、あのクソジジィいねぇじゃねぇか」
「む?クソジジィはよくないぞ」
電気は付いてる__逃げたわけじゃないな。
「……シッ、__奥で話してやがるな。おい、凸るぞ」
「待って。一旦様子を見よう、罠かもしれない」
ゴブリン30体だなんて大嘘をついたんだ。
できるだけゴブリンを殺させて、逃げ帰ってきたところを殺せば金を払わずともゴブリンの数は減る。
憶測でしかないが、そうだとしたら実に胸糞悪い。
『探せ』
自身を中心に円が広がっていくような感覚。
……見つけた。
「ここの廊下突き当たりを右、奥から2番目の部屋にいるね。そこにたどり着くまでにある罠の数は5個」
「カノンは凄いな。それは盗賊の専門魔術ではないか?」
「アリスは鋭いね。昔ちょっと盗賊に憧れてた時期があってね」
「おい、てめぇは一体__」
「後で良い?とりあえず村長捕まえるよ」
「私についてきて」
ここから2メートル先に起爆装置が1個、その少し先にも起爆装置。
一回目で引っ掛からなかった冒険者が仲間を殺された事実に怒り狂い、冷静さを欠いて走り出した途端、そいつも爆発で死ぬわけだ。
「やっぱゴミが考えることはゴミだ__。……私達が着くまでの余生を楽しく生きるんだな」
「……カノン、殺気がでているぞ。さすがにその量は気付かれるやも知れん」
「ごめん、少し頭に血が上った。ありがとう、アリス」
その先に、落とし穴か。
お金が手に入りにくい割には随分良い罠を張っているな。
こんな金、一体何処から__。
……また殺気が漏れる、無駄な詮索は止めよう。
「ここを右、そこの壁気を付けて。振れると落ちるよ」
また、落とし穴__。次でラスト。
「おい、罠は5個あるんじゃねぇのか?まだ後1個あるはずだろうが。この部屋の奥にクソジジィ共がいるんだ、後一個は何処だ」
「それ以上進まないで!」
「っ__」
「はぁ__、危な。ごめん罠の位置を正確に行ってなかったね。ラスト1個は部屋の前だよ」
ちなみに扉を開けようと、踏み込んだ瞬間足元を掬われ、ネットに入れられるって感じかな。
「扉の前全体にはられてるから気を付けて」
「了解した。だが何で部屋の前にはってあるんだ?張った側も危ないだろう」
「……じゃあちょっと隠れて見てて」
私は帰る途中に獲ったラビットフットをカバンから取り出す。
罠の張ってあるところに投げ入れる。
『隠せ』
私は魔法で姿を消す。
「罠にかかったぞ、今すぐ殺して金品を奪え!」
「これがあれか、飛んで火に入る夏の虫ってやつか?」
こら、アリス。かわいそうなこと言わないの。