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022 2人との出会い

 __どうして人は、幸せがいつまでも続くと思ってしまうのだろうか。


 師匠が入った棺桶がどんどん土に埋め尽くされていくのを見守りながら思った。


 あの時、本当は土が被さるのを止めてしまいたかった。今すぐ棺桶を掘り起こしたいと思った。

 まだ、本当は息があるんじゃないかと、掘り起こして棺桶を開けたらいつも通り"カノン"って呼んでくれんじゃないかと、ありもしない妄想をただひたすら頭の中で再生していた。


 本当に、なんで続くと思ったんだろう。魔物が出るこの世界で若くして死ぬ人は少なくない。

 みんな殺される可能性がある。ふとした瞬間にやって来る、その時のために覚悟だって必要だ。


 もしこの世界に神様がいたら私は、幸せはすぐに終わるって覚悟を作ってもらって、その時が訪れた時、少しでも辛さが減るようにしてもらおう。


「ッ……」


 いや、無理だな。こんなに辛いんじゃ減ったところで変わらない。


 師匠、私はまだあなたを超えられてないよ。

 私に高飛車させてよ。そして私の事を叱ってよ。

 魔法だってまだ全然覚えられてない。

 空間移動(テレポート)はまだ移動先に魔力が集まりすぎるよ。探すのは楽しいけど答えがないとつまんないよ。

 魔術練習しすぎて魔力切れだって頻繁に起こるよ。

 倒れた私を誰が介抱するの。あの温かい空間をまた味わわせてよ。


 ねぇ、師匠。おいて逝かないでよ。私も連れてってよ。


 ザー、ザー。


 雨が、降ってきた。

 いつもなら師匠が急いで私を家の中に入れてくれるけど、そんな師匠ももういない。


 まだ冷える時期の雨なので、一粒一粒が冷たく打たれる事に体が冷えていく感覚があった。

 いつもなら嫌がって走って帰るのにな。

 今はこの冷たさが嫌に心地よかった。

 この凍えるような冷たさが、この悲しさを麻痺させてくれる気がした。


 雨が降っていてくれて良かった。

 私がだす嗚咽も、涙も、雨の音と雫が隠してくれる。

 私が泣くなんて柄じゃないからね。

 そこで感情が溢れ出したように声を出して泣いた。ひたすら泣いた。


 声を出して泣くことはあれが最初で最後だった。


 それから私は師匠と仲の良かった友達の家に預けられた。そこには他に2人の女の子がいて、名はランネとサーナといった。


「よろしくカノン♪あ、カノンって呼んでもいい?もう呼んじゃってるけど」

「こらサーナ、距離を詰めすぎないの。カノンちゃんが困ってるでしょ」


「……で」

「え?なになに?もう一回お願い!」

「カノンって呼ばないで。あとよろしくする気もないから」


 カノンと呼ばれると師匠を思い出してまた泣きそうになる。それに、この子達もまたすぐに死んでしまうかもしれない。

 それなら、最初っから仲良くしないで覚悟を決めておこう。


 だから、私はランネとサーナを冷たく突き放した。

 これでもう関わってこないでしょ。愛想悪い友達なんて要らないもんね。

 そう、思ってた。


「ねぇねぇ、じゃあなんて呼べばいいの?あ、好きな食べ物は?」

「だから、距離を詰めすぎないの。あ、ちなみに好きな紅茶とかあるかしら?私は__」


 うるさい。なぜだ?私は昼にあれだけ突き放したのに。

 昼から今……夜にかけてずっっっと話しかけてくる。なんなら部屋は違うはずなのに、わざわざ自分のベットを魔術で運んで、私の部屋で寝ようとかほざいている。


「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ、なんて呼べばいい?」

「こら、もう夜中よ。少し声のボリュームを抑えなさい?」


「……好きに呼んで」

「おー、本日2度目の開口だね!ま、もうすぐ今日終わるけど!」

「好きに呼んでって事は私達が名前をつけていいってことかしら?」


「んーっと、それじゃあーねぇー」

「……カトリーって言うのはどうかしら?昼にカトラリーを使うのが上手だったからそこからとったの」

「おー、いいねぇ!じゃあ、これからよろしくね!カトリー!」


 師匠に教えてもらったカトラリーの使い方を褒められて悪い気はしなかった。


「……よろしく」


 少しぐらいなら心を開いてもいいかもしれない。そう思った、思い出に残る夜だった。




 ・ ・ ・




「まぁ、これが私が全属性使える2人に出会った前と後の話かな!」

「何回聞いても涙が出るよぉー!」


 只今、ダンジョンから帰って私のオススメのカフェで雑談中。


「む?しかし私はカノンと呼んでいるぞ?」

「あー、カトリーってそうそう被ることないからさ、冒険者になる時バレないようにカノンに変えたんだよね」


 国王や、カトリーナもカノンって呼ぶからカトリーって呼ばれる時は全属性適正魔術師として呼び出しくらった時だけなんだよね、と付け足す。


「じゃあ、話に出てきたランネって言うのは……」

「私よ」


 そう言って渋々といった感じで手を挙げるのは、普段お世話になっている受付嬢プランだった。


「いくら私の口が軽いからって名前を忘れるように脳に魔術かけるのは違くなーい?」

「え、それ本当に思った!やっぱカノンとは考えが合うね♪」

「だって、それてバレたら面倒くさいんだもの」


「「ひどーい!」」


「なぜ、プランなのだ?カノンの様に何か思い入れがあるのか?」

「いいえ?ないわよ。私達、フルネームは

 カトリー・ノンフォープ

 ランネ・ノンフォープ

 サーナ・ノンフォープなのよ」


 だから最初のランと最後のプを取ってプランにしたの、と紅茶を飲みながら優雅に答えるプラン。


「サーナはそのままなのだな」

「うんっ!別にバレたらバレたでいっかなーって思って」

「まぁ、サーナは意外といるからね」

「そゆこと!そゆこと!」

「そういやぁ、名前のあとに姓が来るのは高い身分の奴だけじゃなかったか?」

「うん、そうだよ。一応これでも偉い魔術師様だからって国王がくれたの」


 使う事ほとんどないけどね、とサーナが付け足してくる。

 いらないことを言うんじゃないよ。


「にしても世界に3人しかいねぇ全属性適正者が3人共冒険者だとかおかしいだろうが……」

「私は受付嬢よ!そんな野蛮な職、嫌なの」


「嬉々とした表情で地形変えるぐらい攻撃魔術撃ってくるのは野蛮ではないのでしょうか、どう思います?サーナさん」

「えぇ、大変野蛮だと思います、カノンさん」

「そういえば最近新しい魔術開発したから威力確かめたかったの。どちらか付き合ってほしいのだけれど」


 私達は無言でお互い指を差し合う。


「了解。どっちもね」

「おかしいよぉー!なんでだよぉー!」

「絶対サーナの方が向いてるでしょ!」


「あ、でも私も新しい魔術試したかったんだ」


 そうポツリとこぼしたかと思うとサーナの首がグルンッとこちらに向いてきた。


「お宅の口悪い奴貸してくれない?」

「……フッ、存分に使うがいいさ」


 そうして私とサーナは握手を交わす。


「む、強い魔術師と戦れる(やれる)のだ!よかったな、ナルシ!」

「じゃあカノンが私とですか?」

「あ、遠慮しときまーす。一人で山とかにやっといて」


「……は?」


 この状況に一人ついていけないノエルの声が儚く散っていったのは、言うまでもない。

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