021 愛される幸せ
「ねぇーねぇー、好きな食べ物は何ー?好きな色はー?あ、まずは名前からかぁー」
「質問が多い__そういうのは自分から名乗るって知らないの?」
ファイアーベアがまだ他にいるかも知れないという心配から一時的に赤毛と同居することになった。
「あはは、たしかにー。私アザレアっていうの、よろしくねー。得意魔術は風。色は黄だよー」
そう言って赤毛__アザレアははにかんで笑った。
さぁ、次は君の番だよー、だなんてヘラヘラしながら言ってくる。
拾われる事に名前をつけられてきたから、名前の数なんて両手に収まらないほどある。
さて、どれを言えばいいものか。
「……」
「どったのー?黙りこくっちゃって」
「新しく名前、つけてよ」
考えた末にでた答えは、アザレアに押し付けようだった。
別に思考を放棄したわけでじゃない。わざわざ考える意味が分からなかっただけだ。
それに、こんな脳天気なやつがどんな名前をつけるのかも気になった。
「んー、じゃあ白いからシロちゃん」
「え、ダサ」
「ひどくないー?」
やばい、このままじゃ絶対変なのになる。好奇心にかられて任せるんじゃなかったー!
「カノン」
「……?」
「カノンはどー?いい感じじゃなーい?」
「さっきのシロちゃんよりかはマシだね」
「シロちゃんも可愛いのにー」
なんか、この時はコロンッて感じの軽やかな響きが好きで、私は納得したんだけど……なんでカノンになったのかは未だに謎だ。
「じゃあよろしくねー、カノンー」
「まぁ、一時的にだけどね」
「そんな堅いことゆうなよー仲良くしようぜー?」
「そんなことより」
「そんなことっ?!」
「さっきの"あれ"何?」
「んー?あぁ、風刃のことかなー?」
「そう、それ」
あんなに綺麗で華麗に魔物を倒す姿は神秘的だった。
「私もあんな風になりたい」
「__ふむ。いい言葉だねー。それじゃー、カノンを私の同居人兼弟子に任命しまーす」
「へ?弟子?」
「そうだよー。光栄に思って……」
「え、やだよ」
「食い気味ッ」
「だって、弟子ってことは私がしたじゃん」
「弟子じゃなくてもカノンが下だよー」
「あ、じゃあ弟子でいいや」
「決断はやー」
一旦降ろすよ、そう言われながら地面に立たされる。
炎の様な赤い瞳と目が合う。
「じゃあ改めてよろしく、私の弟子ー」
「まぁ、よろしくしないこともない」
「素直じゃないなー」
これが私が魔法を始めたきっかけ。
そこから私が全属性を扱える事が判明するのに時間は掛からなかった。
だから無詠唱で魔法を扱えた時は、私が特別だってことにすぐ気がついた。
それに、自分で言うのもなんだけど魔法の飲み込みも人よりも早かったと思う。
『空間移動』
「まだ、移動先に魔術が集まってるよー。もうちょっと減らそー」
「これ以上どうやってするっての」
「それを考えるのが楽しいんじゃなーい」
「ぐぬぬ……」
そんな中、私が高飛車にならずにいられたのは師匠のお陰だった。
「カノン、これはすごい才能だけれど、決して高飛車になってはいけないよー。下ばかり見ていては高みを目指せないし、上ばかりみていても足元をすくわれるからねー」
「高飛車になるんだったら私を超えてからにしてねー」
これは師匠が毎日のように私に言っていた言葉だった。
「師匠なんてすぐ超えちゃうよ、足元すくわれないように怯えて眠るんだね」
「どこでそんな言葉憶えたのー」
師匠は呆れながら笑っていた。
こんなくだらない時間がいつまでも続けば良いと思っていたし、続くとも思っていた。
師匠が死んだのはその翌日のことだった。




