020 カノンの過去
私は周りに森しかない辺境の地で生まれた。
私の母国では白髪は縁起の悪いものだったから、捨てられて、可愛そうだと同情され拾われて、不幸がふりかかると私のせいにされてまた捨てられる。
その繰り返し。
捨てられて、拾われて、捨てられて、拾われて。
だから、赤髪の__まぁ後の私の師匠となる人なんだけど、その人が私の事を連れて帰ろうとした時、あぁ__また捨てられるんだろうなぁ、そう思った。
なんか1回考え出すとさ、そのまま深く考えちゃって。
好きで白髪に生まれた訳じゃないのになんでこんな目に遭わなきゃならないんだとかあの時は思ったなぁ。
その時私は初めて抵抗した。
「うぉっ、なんだ生きてんじゃーん」
いや、びっくりしたよ?
だってさ、こちとらフルボッコ覚悟してたんだよ?
なのに、飛んできたのは怒号じゃなくて素っ頓狂なアホっぽい声で、しかも"生きてんじゃぁーん"。
「いや、普通に生きてますよ。死にかけだけど」
「うぉっ、なんだ喋れるんじゃーん」
失礼なひとだな__。
一応、拾いはしないけど残ったご飯をくれる人が少数いるから喋れる元気はあった。
「一応、私年上なんだけどさぁー姿勢正せるぅー?」
「無理です」
喋れる元気はあっても、動く元気はない。
後、無駄なエネルギー使ってお腹空かせたくない。
「そっかぁー。私、君のこと拾う予定なんだけどぉー、大丈夫そぉ?」
マイペースな人だな。喋り方がゆっくりでなんかムカつく。
「拾わなくて大丈夫です」
「りょぉーかい」
そうして去っていった。……ん?去っていった?
まじか、こんな人初めてだ。
いつもなら、みんなもうちょっと説得するのに。
そこで私は拍子抜けるのと同時に理解した。
あ、この人ちょっと頭おかしい人なんだ、と。
こんなに可愛い私を拾わないなんて頭おかしいんだと。
別に拾ってほしいわけじゃないが、こんなに可愛いのだからもうちょっと渋るだろう、普通。
やっぱちょっとおかしいんだ。
まぁ、いいか。悲しい思いをしなくて済む。
そんな流暢な事を考えていると、そばの森から何やら気配を感じた。
揺れる木と木の間から顔を出したのは、茶色く大きいモンスターだった。
「あ、そうだぁー忘れてたぁ」
「ここ、ファイアーベアがでるよぉー」
それを言うために近づいたの忘れてたぁー、と踵を返して戻って来る。
今それどころじゃない。
さっきからファイアーベアとか言うやつに睨まれて呼吸すらも危うい。
全身が鳥肌をたてて、動いてはいけない、そう叫んでいる気がした。
ヒュー、ヒュー、呼吸の音がいつもより大きく聞こえる。いつもなら気にしない周りの景色を、食い入るように見るしかなかった。
ていうか、さっきからあの赤毛はなにしてるんだ!こんなに可愛い私がピンチなのに。
そんなところでブツブツ言ってないで助けろよ。
『風刃』
ついさっきまでブツブツ言っていたものは聞き取れなかったのに、なぜかこの単語だけは鮮明に聞き取ることができた。
なんだそれ__そう思った矢先、瞬きするまもなくファイアーベアの首は落とされ私の目の前に転がっていた。
「え?」
「うん、やっぱり風魔術はスピードだよねぇー」
そう言いながら戻って来る赤毛の姿は、私の脳裏にずっと張り付くぐらいには神々しかった。




