018 ノエル発見
「はぁッ__はぁッ__多分この辺ッ」
さっきすれ違った怪しげなゴロツキに優しく丁寧に聞いたところ(脅して聞き出した)、ノエルとアリスらしき人物はこの中層でミノタウロスにあったらしい。
本当かどうかは知らないが、今はなんとしてでも見つけ出さないと。
もし、いなかったら……あのゴロツキ共の首と胴はさよならだね!
とりあえず今はノエルの魔力が感じられる、この階を走ろう。
「ノエル、アリス無事でいてよね……!」
そうして一心不乱に走り続けていると……。
__ん?あの目立つ金髪は、ノエル?!
「ッ__ノエル!ノエル!」
息はしてる、死んではない、だけど怪我がひどい。魔力がカラカラだ、何があった?このミノタウロスの死骸は?倒したの?アリスは?……近くにはいない。じゃあどこ?
どうする?どうすればいい?とりあえずノエルを回復させる?回復方法は?外傷?内傷?回復ギルドに送ったほうがいいのか?まず動かしていいのか?
____落ち着け、落ち着け。私が焦ったところで何もならない。
とりあえず今は内傷にも外傷にも効く回復魔術をかければいいだろう。
何のための魔術だ。
『回復』
ノエルが緑の光に包まれる。
私が使ったのはそこら辺の適当魔術師じゃ使えない高度な魔術、完全回復魔術。
魔力、怪我、病気全てを治す究極の回復魔術。
魔力消費量が激しいから普段は使わないけど……今はそんな事言ってる場合じゃないよね。
……これで起きなかったらどうしよう。
「__ん、?」
「やぁ、気分はどうだい?」
「__まぁまぁ、だな」
良かった、目覚めて。余裕降ってるけど、嘘。
今心臓バックバク。もうやばい、飛び出るかも。
「__何でお前そんなに息きれてんの?」
「え?そりゃあ、ノエルを探すために走ったからね!」
「__サーチして転移すればよかったんじゃ……?」
「あ、」
し、し、ししししょうがないだろ!?そんな事考えてる暇ないぐらい混乱してたんだから!
「もうケガしても治さないことが決定した」
「やめろや」
「それで?アリスは?」
「……わからねぇ」
「__え?」
「ミノタウロスの雄叫びで崩れたところから下の階に落ちていった」
俺が、俺がもっと注意しておけば__悔やむノエルを横目にサーチを使う。
「71階層、下層だね。ここは何階層?」
「何でそんなことも知らねぇんだよ、56階だ」
「だいたい地面から天井までの高さが5メートル、15階分落ちたから75メートルからの落下か」
周囲に重たい雰囲気が流れる。
そりゃそうだろう。75メートルから落ちたらいくらドワーフだろうと無傷ではすまないだろう。
しかも小柄なアリスだ。もしかしたら、いやもしかしなくても死んで__。
「とりあえず行くぞ」
「……うん、そうだね」
「悲しい雰囲気になるのはナシだからね」
「こっちのセリフだ」