013 ミノタウロス
ノエル目線
「ふむ__今のところ概ね問題はないな」
「……あぁ、そうだな」
チッ__この前チビに兄貴のことを知られてからどうにも上手く喋れねぇ。
こんな口も悪くて素行も悪い俺のことを、こっこっこ__好ましく思うとか言ってきやがるから__クソッ思い出しただけでも恥ずい。
「あぁ、もうクソがァァ!」
「急にどうした!」
「このまま行けばすぐクエストは終わるのだが、どうする?この後空いているか?武器屋に行くのはどうだ?」
「あぁ、そうだな__って、あ?……おい、あいつら何かおかしくねぇか?」
指を指したその先には何やらコソコソしているゴロツキが多数。
そういや最近密猟が彷徨いてるって噂になってやがったな__。
もしかしてあいつらか?
「もしやあれは密猟というやつではないか?!」
「あぁ、だがそれだけで判断すんのは良くねぇな。話聞いてみるか、意味ねぇかもしれねぇが」
気配を消して近づいてもいいが__丁度いい。威圧感のある近寄り方をしてみたかったんだ。
いい練習台が見つかって良かったぜ。
ザッ__ザッ__ザッ__。残り3メートルってとこでようやく気づきやがった。あいつらすぐ死ぬな。
「おい、そこのゴロツキ。ちょっと話__」
「ヒィッ!」
俺の顔をみるなり逃げ出しやがった。なんてやつだ。
「話、聞いてみる価値ありそうだなァ!」
「お前の顔が怖いだけかもしれぬぞ?」
「アァ?!」
「よっしゃ!追いかけるぞ!ついてこいチビ!」
「言われなくても分かっている。あと私はチビではない!」
少し楽しくなってきたじゃねぇか。
* * *
「こいつら気付くのも遅ぇくせに走るのも遅ぇのかよ。生きる価値あんのかテメェ」
しかも何よりこいつら、このダンジョンに代々眠ると言われてやがる竜の子供を密猟しようとしてやがった。
他にも色々な希少モンスターを密猟してたのこと。
クズはクズらしく生きとけやクズが。
「頼む!命だけは、命だけは助けてくれ!」
「あぁ?それが人にお願いする態度か?もっと誠意見せろやァ!」
「まさか、こんなにもナルシの顔は怖がられるなんて初めて知ったぞ!来世はゴロツキがお似合いだな」
「喧嘩売ってんのか?」
「お願いだ!せめて外に行って話し合おう。中は危険だ、俺達生きて帰れねぇぞ!」
「さっきからお前ビビり過ぎなんだよ、一体何にそんな怯えてやがるんだァ?」
俺の顔とかぬかしやがったら、即!こいつの首と胴はさよならだな。
「い、い、い、いたんだ」
「何がだァ?それぐらいはっきり言え__」
「ミノタウロスがいたんだぁ!お願いだ、信じてくれ!あんた、見た感じ強そうじゃねぇか」
「見た感じは余計だ。俺はそこらの冒険者じゃ相手にならねぇ程強ぇ」
ふん、こいつ中々見る目あるな。ちょっとぐらいなら守ってやらねぇこともない。
それよりもこんな中ランクダンジョンの上層部にミノタウロスだぁ__?
あいつらは本来の下層にいるはずだが__まさか、登ってきやがった?そうだとしたら大惨事だぞ。
本来、モンスターはその層から動くことがねぇ。あいつらは強い者を求めてダンジョンを徘徊している。
だから、上に行くほど弱ぇ奴しかいねぇこのダンジョンで基本登ってくることはねぇ。
下で何かしらの問題があったのか?それならクエストを受けた俺等が調査しなけりゃならねぇな。
考えられる可能性ならスタンピードだが__これから忙しくなりそうじゃねぇか。
「おいチビ、俺はこの先を調査してくるからそいつら任せた」
こいつらが見たってことは結構上層だな。
時間がねぇ。ミノタウロスと鉢合う前にこいつらを避難させねぇと__。
「ウォォォォォォォォォォ!!!!」
チッ、少し遅かったな。
「まぁ、いい。俺はコイツを仕留める。強ぇモンスターと戦えるなんてそんな嬉しいことはないぜぇ!」
「おい!私もだ!」
「あぁ?チビはそいつらを__あいつらどこ行った?」
「あのゴロツキ達ならミノタウロスを見つけた瞬間全速力で逃げたからな。もういないぞ?」
「あんのゴロツキ共がァ__」
「ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「ったく叫ぶしか脳がねぇのか?この牛はァ!」
「ふむ、そうかも知れないな__っ」
やべぇ、さっきの雄叫びで地面が崩れやがった。
「おいチビ気をつけろ」
振り返った時にはチビは落ちる直前だった。
「っ__アリス!」
頼む__!届いてくれ。
アリスが伸ばした腕を掴もうと手を伸ばす。
が、ノエルの思い虚しくその手は空を切った。
「ノエル__私のことは気にするな!何、ちょっとばかり下に行ってくるだけだ!生きて帰ってくるからな!」
そう、俺を励ましながら落ちていく。不敵な笑みを浮かべながら。
「アリス__アリス__アリスー!!!」
2025/08/18 誤字修正




