011 大事な事
「おいお前ら、大事なこと忘れてねぇか?」
ノエルのその一言のせいで、私は頭の中をフル回転させなければならなくなった。
「……なにも思いつかないのだが、答えは何だ?」
「っ、__それぐらい自分で考えろや!」
三日前、ノエルの兄と会ってからというもの、ノエルの様子が明らかおかしい。
アリスが話しかけたりすると急に挙動不審になるし、距離が近ければ頬を染めながら「近ぇんだよ」と怒る。
もしやこの二人、何かあったな?
「おい、変態。ニヤニヤしてねぇでさっさと頭働かせろやボケ」
「今日も絶好調だね」
しかし本当に何も思い浮かばない。
何だ?何がある?大事なこと__?メンバー内の個人情報とか?このパーティーに入る前のパーティーの事とか?
「本当に思いつかないんだけど__何?」
「大きく分けて3つある。1つ、パーティー名。2つ、メンバーの個人情報。3つ、これが一番重要なんだが__」
……溜めないで早く言ってほしい。私かって暇じゃないんだ。
「パーティーに加入する時に記入しなきゃならねぇ資料があるだろ?それを俺は記入した覚えがねぇ」
なんだそんな事か。
「ふふっ問題ないよ、なぜならまだその紙を私は提出していない」
「そうなのか?ならば安心だな!やはりカノンは天才だ!」
「ちょっと待て__提出してねぇのか?」
「それじゃあゴブリンの村撃破の成績とかも貰えねぇんじゃ__」
「……あ」
「おい!ざっけんなてめぇ!バカなのか?バカなんですかぁ?」
「ごめんて」
「それだけじゃ、すまねぇだろうがよぉ!」
私だって忘れてたんだ。人は誰しも失敗するんだよ、ノエル。
たしかに、ゴブリンの村撃破はちゃんと紙を提出していたら、Dランクはいけただろう。
パーティーにはランクがある。Gが最低ランクでSが最高ランクだ。
G〜Bランクは無数にいるがAランクからは制限が出てくる。
Aは世界には5組。Sは世界に1組。
私の前のパーティーはAランクだった。
「とりあえず今書いて提出しようではないか」
「なんでてめぇはそんなに冷静になれるんだ?」
* * *
「じゃあまずリーダー。これは私でいいよね?」
「ったく、しょうがねぇな。認めてやるよ」
「なぜそんなに上から目線なんだ?」
提出しなければならなかった紙に只今記入中。
「メンバーはアリスとノエル__」
「おい、俺を先に書け」
「はいはい」
保護者の気分__。まぁ、私には親の記憶がないのだけれど__。
「ノエルとアリス__っと。次はパーティー名」
「筋肉最高でどうだ?」
「ノエル様最強だろ」
「魔術の使い手!」
「「「いやダメでしょ!」」」
「いや私筋肉ないよ?!」
「私は魔術を使わないぞ?」
「じゃあノエル様最強だな」
「「私/カノンがリーダーなのに__?」」
緊急事態発生。
うちのパーティー、ネーミングセンスの良い人がいない件。
「では、深淵でどうだ?」
「うーん、なんか嫌だ」
「神域の残像とか?」
「残像じゃダメだろうが」
「じゃあノエル様__」
「却下だ」
「まだ言い終わってねぇだろ!」
「中々決まらないね……なんかもう、なんでも良いや」
「おい、諦めんな」
「……では、___でどうだ?」
「お!それ良い!かっこいい!それにしよ!」
「チビのくせに良い案だすじゃねぇか」
「チビのくせには余計だな」
後に恐れられ、世界の頂点となるSランクパーティー。その名は、"白昼夢"。
強さで圧倒するその姿は、他者にとって恐怖にも安堵にもなる終わりなき夢のように、歴史に名を残す。
2025/8/8 誤字修正




