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第28話 肉好きの若者が、少しだけ寂しさを感じる話。

「だいたい話は終わったようじゃな。」、という老人の呟き。

そうですね、ですねー、という返事はあったが、デロイとアールスラーメは特に返事がなかった。

そんな様子を見て、少なくともアルはここに残りそうな雰囲気、と思っていたアイナスが、「ん?」と首をかしげる。


「アイナスが考えていることは何となく分かるが、我々は一度島に帰るつもりだ。」というデロイと、そうだよね、という表情のアールスラーメ。

「アルは残ると思ってましたけど」と直球で話題を振るアイナスに対して、デロイは「一度帰って色々と説明した方が、後から困らんだろう。」と返した。


それに対して「まあ、そうじゃな。」と言った老人は、「アルの伴侶を決めました、としっかり周知しておいた方が、ニックにとってもよいじゃろ。」と続けた。


その後は、竜の城に突然発生した大穴の話に「そういえば…」という一同の反応や、

「アールスラーメさんはお肉とか好きですか?」「えっと、それなりには。」「いやいや、島では相当な肉好きという認識をされているぞ。」とか、

「さっきのアルって実は結構な食べっぷりでしたよね?」「どうでしょうか?」「自分ではあまり意識したことは無いわよ」「一応親の立場から、食費の捻出に苦労した、とだけ」「ちょっと誤解されるでしょ。」「なるほど…。」だったり、

アイナスの「(シュピーン!)お前の技は既に見切った!」「あら、威勢だけは良いのね。でも覚えておくといいわ。女は隠し事が大好きなの。(シュシュシュッ!!)」などと寸劇の続きが始まったりしたが、それはそれ、である。


そして屋敷を出て、先ほどまでパーティ会場だった広場まで行くと、デロイとアールスラーメは竜形態に戻る。


「何だかんだで世話になったな。」とデロイ。

「そのうち様子を見に行くのでな。また会おう。」と老人。

「しかし急なことだったが、アルのことも頼む。」

「ん?まあ、儂に関係なく好きに過ごすと思うがの。了解じゃ。」

親しい間柄のやり取りである。


「いったん帰るけど、また来るわ。」とアールスラーメ。

「あ、はい、アールスラーメさんもお気をつけて。」と若者。

ぎこちなさ半分の少々初々しいやり取りである。


「あと、アルでいいわよ。」

「えっと、アル…さん?」

「だから、アルでいい。別に敬語もいらない。」

「…うん。分かった。また会おう、アル。」

「またね。ニック。」

「えーもう何ですかこの空気。あーやだやだ。アルもさっさと帰らないと帰り道忘れちゃうんじゃないですかねー。というか一度記憶無くしてみたらどうですかねー。」

「ついでにイーナも。またね。」

「そうですよねー。まあ、ニックさんのついでに~くらいですよね~。」

「そう、ついで。」

クスリと笑うアールスラーメ。


「もう、さっさと行ってください!」

両手をブンブン振り回すアイナス。


そんな様子を見つつ、少し別れが惜しいな、と感じた自分に少し驚く若者。それほど長い時間でもなかったはずだが、こんな感情が湧いてくるということは、少なからずこれまでとは違った関係を求めている自分がいるのだろう。

それは別に恥ずべきことでも隠すことでもない、と思う。


だから、デロイが「じゃあ行くか。」と切り出した時、頑張って笑顔を浮かべるのではなく、残念そうな表情を隠さずに浮かべた。


「それじゃまた。」

「うん。また。」

「残念そうな表情、悪くないわ。」

「素直な気持ちだよ。」

「大丈夫。直ぐに戻ってくるから。」

「待ってる。」


次の瞬間、高く舞い上がる2頭の竜。

すると2頭の竜は、来た時とは違う超高速で飛翔し、一直線に東に向かって去っていった。


若者は、しばらく東の空を見つめていたが「儂らも帰るとするかの」という老人の言葉に反応して、少しだけ寂しそうに「そうですね。」と答え…


「はい!じゃあ師匠、早速帰りましょう!」

「えっと、アイナスさんは、家、ここですよね?」

「あ、しばらく僕も師匠のところにお世話になります!」


…。


「あの、マルス翁、どういうことですか?」

「儂もよく分からんが、そういうことなんじゃろ。まあなんでもええぞ。」


自分の家に客が長期滞在する宣言をしているのに、流石に無頓着では?と思う若者。

対してアイナスは「ニックさんも、しばらくお世話になりますね!よろしくお願いします!」とペコッと頭を下げる。


若者は、少しだけ東の空を見上げ、上を向いて、アイナスを見て、「何やら面白くなりそうじゃの」という老人の呟きを無視しつつ、「今から楽しみです!」とピョンピョン飛び跳ねるアイナスをそっと視界から外して、帰り支度を急ぐのだった。

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