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第15話 肉好きの若者が、アイナス家を訪れる話。その2。

若者が外から街を眺めていたときは、外壁の高さもあり、街の中の様子までは分からなかった。


しかし、いざ中に入ってみると、整備された道と区画割り、行き交う人々の多さ、立ち並ぶ煌びやかな店舗と豊富な商品群、かなりの発展ぶりを肌で感じる。


老人と二人で馬車に乗ることになった若者は、ここまで人が多い所は初めてということもあり、街並みをキョロキョロと眺めていた。


なお、馬はこの馬車とは別に手綱を引かれている。


「向こうの麓の街よりも、かなり大きいです。」

麓の街もそれなりの規模だと思いますが…と若者が呟く。

それに対して、「まあ、さっきも言ったが、この国の首都と行ってもいい場所じゃからの。」と老人。


「首都…ということは、この街には王宮があって国王陛下がいる、ということでしょうか?」

「おるぞ。」

「そうなんですね。」


何となくだが、話しぶりから老人は国王陛下とも知り合いなのでは…と感じた若者。

すると、案の定面識があるらしい老人は、「あまり偉ぶったりする性格でもなくての。気さくに話せるやつじゃよ。」と評する。


ただ、「ニックもそのうち会う機会があるじゃろ。」と言う老人に対しては、若者は何となく会わないほうがいい気がします…と、妙な感を働かせて答えた。



馬車はその後も、大通りのような広い道をゆっくりと進んでいく。


馬車の中でくつろぐ老人。

それを横目で見つつ、外の景色を眺める若者。

アイナスの家まであと少しである。


――――――――――――――――――――――――


「かなり、大きい…ですか?」

「まあ、家格相応じゃろ。」


馬車が進む先に、両翼が大きく広がる屋敷が鎮座しているのが見える。


「そうなんですね…。」


若者の感覚では大きすぎる屋敷。

ただ老人の感覚では伯爵家としては普通なのだろう。


そんな老人の感覚にいまいち共感しきれない若者は、アイナスさんに失礼はしていなかったか…と急に不安になってきた。


その後、一行が門に近づくと、門の前にいた関係者とおぼしき数名とは別に、屋敷の方から一人の少女が、師匠!と言いながら駆け寄ってくる。


「アイナスさんですよね。」

「そうじゃの。」


先ほど、屋敷の門から中へは、別のものがご案内します、と聞いた気がする若者。


「別のものって、アイナスさんのことだったんでしょうか?」


と老人に聞くと、老人は、使用人の中でもそれなりの者が出るのが普通じゃな、と返す。


「要は待ちきれなくなって本人が出てきてしまった、ということじゃの。」

「何となくアイナスさんらしいです。」

「そうじゃの。」


タタタっと駆け寄ってきたアイナスは、そのまま関係者の集団をかき分けるように一行の前に立つ。


「師匠、ニック…先輩、こんにちは!」

「うむ。相変わらずじゃの。」

「アイナスさんこんにちは。今日はよろしくお願いします。」

「ヒヒヒン。」

「今日はこちらの馬さんも一緒なんですか?」

「ご迷惑でしたか?」

「全然大丈夫です!」


では、早速中までご案内します!といって、アイナスが一行を引き連れていこうとする。


その時若者が、ふと周りを見ると、何となくだが「うちのお嬢様がすいません…。」という雰囲気である。


若者は一瞬だけ思案した後、「アイナス様はいつもお元気そうで何よりです。このままご案内いただいてもよろしいでしょうか?」と関係者一団の先頭にいた人に声を掛けた。


声をかけられた壮年の男性は、お心遣い痛み入ります、といって軽く頭を下げた。



なお、一緒に来た馬は、老人や若者とは別に厩舎の管理人に連れて行かれたらしい。


若者が後で馬や厩舎の様子を聞いたところ、管理人の先回りをするかのように歩き出し、厩舎の中では落ち着いて振る舞う一方、同じ厩舎内の馬たちが無言でソワソワしていたのがとても印象的でした、とのことだった。


やはり何か特別な馬なのだろうか…と考え込む若者。


厩舎の管理人「見知らぬ馬には威嚇するような子もいるんですが…。」

若者「大丈夫だったんですか?」

管理人「ええ…ものすごく大人しかった…というか、興奮しすぎて卒倒してしまった感じでした。」

若者「…。」

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