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第14話 肉好きの若者が、アイナス家を訪れる話。その1。

「そろそろ着くの。」


街道沿いに小さい丘を越えたあたりで、遠くに大きな街の影が見える。


「かなり大きな街ですね。」

「まあ、この国では一番かの。」

「そんな大きな街で、アイナスさんの家はすぐに分かるんですか?」

「まあ、伯爵家だからの。」

「えっ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アイナスの家は、ブレダン伯爵家である。


新興の伯爵家ではあるが、様々な才能を発揮する人材を矢継ぎ早に輩出することで順調に勢力を広げている、という老人の談。


魔導七賢であるアイナスはその人材の筆頭株とも言えるが、活躍の場が特殊なのと、

「まあ、本人の性格があれなのでの。」

ということで勢力拡大に結びついているかは微妙なようだ。


すると若者が、これまでも何度か話に出てきた七賢について「普段は何をしているんですか?」と問う。


「まあ、基本的には、魔物の退治かの。」

「そうなんですね。」

「国が抱える騎士や兵士もおるがの。手に負えん魔物もいるからの。」


人が住む地域と、魔物が住む地域は、それなりに住みわけられているが、それでも遭遇は日常茶飯事。

なので、国の運営を担う立場であれば、常に遭遇と討伐を想定しておくのが当たり前。

ただし、一般的な騎士や兵士では、ランクでいえばB程度までの魔物の相手が限界とのこと。


「つまり、それ以上のランクの魔物は魔導七賢のような方々が対応するということでしょうか。」

「まあ、そうじゃの。」


老人やアイナスのような七賢など、特別な力を持った存在や、ごく稀に生まれる「陣」と呼ばれる強力な力を持った能力者などが対応するようだ。


「実際のところ、人里にそこまでほいほいと出ては来んがの。まあその話はまた今度じゃな。」


二人と一頭は、そのまま街道沿いにゆっくりと街に近づいていく。

遠くからでも街が壁に囲まれている様子が見て取れた若者だが、近くまで来ると、壁の高さに改めて驚く。

そして自分たちが歩いている街道は、その壁にある大きな門の方へと続いている。


さらに門の方へ近づいた時、若者は、門の前に人だかりが出来ているのに気付いた。

しかもこちらを向いて整列している。


「あれは…?」

「儂らを待っていたようじゃな。」

「待つ…。」

「さあ、あとは降りて歩くかの。」


と言って、さっと馬から降りる老人。

何が、というわけではないが、妙に落ち着かない気分の若者も馬から降りる。


のんびりと、門というかその一団に向かって歩いていく老人。

のんびりと、向かう馬。

思案顔の若者。


一行が、門の前に陣取る一団の目の前まで来たとき、一人の男性が前に歩み出る。


「七賢筆頭のマルスマーダ様と、そのお弟子さんでございますか?」


ん?


「いかにも。今日はアイナスに呼ばれておったのじゃが…聞いとるかの?」

「はい、存じております。門から屋敷の前までは私が、その後は別のものが屋敷の中までご案内いたします。」

「よろしく頼む。」

「かしこまりました。」


お弟子さん?


老人と馬は、その男性の案内でスタスタと門から中に入っていく。

若干慌て気味に後を追う若者。


「あの…。」

「ん、なんじゃ?お弟子さんと言われたことかの?」

「はい。」

「まあ、その方が説明しやすいかと思っての。あまり気にせんで堂々としとればよいの。」


と、老人はあっさりと答える。

もちろん若者も、自分が不利な状況になるようなら、わざわざ「弟子」とは説明しないだろう、とは思っている。


思っているが、少し座り心地が悪い。

もっとハッキリ言えば、凄い人だと勘違いされる可能性が非常に高いのではないだろうか。


「普通に『知り合い』くらいで紹介してくれて良かったと思いますが…。」

「それも考えたがの。下手に知り合いなどと言うと、繋がりを詮索される可能性があるでの。」

「詮索…。」

「弟子と言い切ってしまえば、むしろ探りを入れづらくなると思っての。」


下手に嗅ぎまわったら痛い目を見るどころでは済まなくなるからの、と老人。

何が済まないか詳しく聞くと怖くなりそうな若者は、それについては言及しないことにした。


「まあ、マルス翁がそうおっしゃるのでしたら…。」

と、あきらめ半分で納得しようとする若者。

すると、馬が若者に近寄ってきて、「大丈夫っす、何とかなるっすよ。」という雰囲気を醸し出す。


そんな気配りの馬に向かって、若者はぎこちない笑顔を向けるのだった。

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