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特別な話~祝!PV50万記念!話をしよう~












「――――――やあ、また来てくれたようだね。嬉しいよ」


 黒ローブは、聞き手など誰もいないのに、話す。


「だが、今回の話は少し重い話だ。それでも聞いてくれるかい?」


 暗い空間の中、誰かに語りかけるように話す。


「――――――物語は、いつまでも幸せしか訪れないなんて事はない。どの物語にも、等しく不幸はおきる。それはいつだって決まっている事だ。誰もそれに抗うことは出来ない」


 黒ローブは、少し、悲しむような声で話す。


「当然、彼も――――――龍稀も、それは変わらない。どんなに強くたって、変わらない事はあったんだ」


 






















 降りしきる雨の中、彼は濡れるのも気にせずに、ひたすらに走っていた。

 

 普段付き纏っている少女の姿がない。少女を探しているのだろうか?


 彼の後を追う。


 彼は車よりも早く走っていたが、そんなものはどうでもいい話だ。


 彼は走る。音すら置き去りにして。


 彼は走る。少女を探すため。


 彼は走る。自分では、何故こんなにも焦っているのか気づかずに。


 彼は走る。いつの間にか少女の事が気になっていた事にも、気づかずに。























 彼には悪いが、彼女の様子を見てみよう。


 一旦空高く上がり、千里を見通すことの出来る瞳で、町を見回す。


 ――――――いた。


 次の瞬間、少女のすぐ近くへ転移。ただし、見つからないように。


 私はあくまでも裏舞台に生きる者、表に生きる者と会ってはいけない。


「ねーねーカワイ子ちゃん、俺らと一緒に遊びに行かない?」


「あー・・・・・・すみません、ナンパは間に合ってますので遠慮しますね」


 見ていてイライラしてくる格好の男達が、少女に話しかけていた。


「そんなツレナイ事言わずにさー、ね?」


 男達の一人が、少女の腕を掴もうとするが、少女はそれを回避。じりじりと後退する。


「というか、私彼氏持ちなので。だからナンパは間に合っているって言うのに・・・・・・」


 その言葉を聞いた後、何人かの男は「あーあ、彼氏持ちかよ」とガッカリしたように言い、その場を去ろうとする。


「まあ待てよ。その彼氏が近くにいないんだ。少しくらい味見したって問題ないだろ?」

 

 男達の中で最も顔がいい――――――認めたくは無いがイケメンという――――――男が言う。


 少女は「味見」の意味を察したのか、ぶるぶると身体を震わせる。


 ちなみに彼女が今考えている事は「何この変態くたばれマジでくたばれ」である。中々過激な考えを持っているようで。


「と言うわけでさ。ちょっとこっち来てよ」


「全力でお断りします」


 逃げる少女。が、スピードで男に敵う訳もなく、あっさりと捕まる。


「生娘一人ゲーット」


 ニヤニヤと笑う男達。そして、近くにあった物陰へ少女を連れて行く。











 この時ほど、私が怒った事はない。


 今すぐにでもあの男達を原子レベルまでバラバラにして魂に恐怖を刻み付けてから二度と身体を動かせないような人間へ転生させてやろうか――――――そう思っていた。


 だが、私はあくまでも裏の住人。表の住人に手を出してはいけないのがルール。


 怒りを鎮めるため、適当に世界を一つ滅ぼしてこようか――――――そう思っていた時。



 私の視界の中に、髪がやたら長い少年が見えた。








 どうやら、ヒーローのお出ましのようだ。



 





 少年は先ほど少女が連れて行かれた物陰に飛び込む。


 程なくして、そこから男達の醜い悲鳴が上がる。


 ふむ。私も少しスッキリした。感謝するぞ。




 




 






 これで終わっていれば、少年はどんなに幸せだった事か。




 


 男達の声に混じって、か弱い少女の悲鳴が聞こえる。


 私はすぐに少年達が見える位置まで移動した。






















「へ、へへ・・・・・・おい、コイツを殺したくないなら、大人しくしてるんだな」


「テメェ・・・・・・!!」


 少女を人質に取り、首元にナイフを突きつける男と、それを睨みつける少年。


「ってて・・・・・・くそ、さっきはよくもやったなてめぇ!」


 全身に怪我を負った男達が起き上がる。


 少年は迎撃体制をとるが、


「おっと。この子がどうなってもいいのかな~?」


「チッ・・・・・・!」


 すぐにそれを解く。


「さっきはよくもやってくれたな?」


「次はテメェの番だ!おるぁ!」


 男達が少年を囲み、順番に少年を殴っていく。


 そんな一方的な暴力が、しばらく続いた。



 

 少女が「もうやめて」と叫ぶ。


 男達は聞く耳を持たない。



 




 やがて、少年が自分自身の血で真っ赤に染まった後。


「へへっ・・・・・・さて、邪魔な奴もいなくなったし、お楽しみといくか?」


 少女を人質に取っていた男が、そう言った。


 男は知らない。


 その言葉を発した後、動く気配のなかった少年の手がピクリと動いたのを。


「邪魔された分激しくしてやろうか?」


「おっ、いいねそれ」


 男達が笑い、少女が身体を竦ませる。


「そんな怖がんなくてもいいじゃん。どうせすぐに俺達のことしか考えられなくなるんだし」


 また男達が笑う。




 男達は気づかない。





 血に濡れた身体で、背後に近づく少年に。


「がっ――――――!?」


 男の一人が地面に倒れる。


 その背後から、ふらふらと覚束ない足取りの少年が現れる。


「なっ、テメェ!まだ生きて――――――ぐふっ!」


 それに殴りかかった男だが、少年はそのボロボロの身体に合わない速度で回避、男の背後に回りかかと落としを決める。


「くっ!お、おいっ!コイツがどうなってもいいのか!?」


 残った男がナイフを少女に突きつける。


 少年は、何も言わず、何の表情もせず、ただ男を睨みつける。


 男達の血で濡れた拳を構える。


「ひっ――――――ひいいいいいい!!」


 それに怖気ついた男は、ナイフと少女を放り出し、背を向けて走り出す。










 そんな事をしなければ。






 男の怪我は、もっと軽くて済んだと言うのに。


「がっはぁっ!!」


 逃げる男の背中に回し蹴りを食らわる。


 男は数メートルバウンドしながら宙をとび、やがて地面に落ちた。


 























「・・・・・・実は、この話にはまだ続きがあるのだが――――――今日はここら辺にしておこう。私も喉の調子が優れないのでね」


 黒ローブは、悲しげに話す。


「それじゃあ、また会う日があれば、私の話に付き合ってもらうとしよう」


 黒ローブが空間から消え、一筋の光が消え、残ったのは、ただひたすらに暗い空間だった。

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