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第51話~嫌な予感とは得てして当たるもの~








 ――――――ピシッ、と何か硬い物が割れるような音がする。


 ふと手元を見れば、今まで愛用していたマグカップにヒビが入っていた。


「・・・・・・むぅ?」


 近くにある物が壊れる。こういう場合、アニメやら何やらならこの後に嫌~な事が起こるのが定石だが・・・・・・。


「・・・・・・何も起きなければいいんだけどなぁ・・・・・・」


 ヒビの入ったマグカップを四次元ポケットに仕舞い込み、新しいマグカップを取り出す。


 ――――――ピシッ


「・・・・・・はぁ」


 出した瞬間にヒビが入るとは、今日は何と言う厄日だろう。


 吐き出したため息とともに、ぼんやりと空を見上げる。


 空は、今の気持ちを代弁しているかのような、どんよりとした曇り空だった。

 

「どうしたんですかリュウキさん。そんなため息吐いて」


 リリアの声が隣から聞こえる。


「いやー・・・・・・なんか嫌な予感がするんだよねー」


「嫌な予感・・・・・・ですか?」


「そ。嫌な予感」


 上に向けていた顔をリリアの顔がある方へ向ける。


「例えばー・・・・・・そうだな。今の空って曇りだろ?これから晴れるかもしれないし、雨が降るかもしれない。この場合、嫌な予感っていうのは・・・・・・雨が降るかもしれない、という感じが何となくする事をいう」


「理解は出来ましたが・・・・・・何か、例えがショボいですね」


 言うな。俺だってそんな感じは何となくしてたんだから。


 その後、特に会話などもなく、ぼんやりと空を見続ける。


 そこには、ただただどんよりとした曇り空が広がっていた。












 ――――――ふと、どこからか何か悲鳴のようなものが聞こえた気がした。




「・・・・・・む?」


「・・・・・・どうかしました?」


「いや・・・・・・どっかで声が聞こえたような」


「私には何も聞こえませんでしたが・・・・・・聞き間違いでは?」


 確かに、俺の聞き間違いかも知れない。


 だが・・・・・・さっき聞こえた何かが、どうしても頭から離れてくれない。まるで、俺に何かを伝えようとしているような――――――。



「・・・・・・」


「急に黙ってどうしたんですか?」


「・・・・・・すまん。俺ちょっと行ってくるわ」


「え、行くってどこに――――――」


「ちょこーっと出かけたらすぐ戻ってくるわ。んじゃっ!」


 シュタッと右手を上げたのち、そのまま何かが聞こえた方向へ走る。


 あれが本当の悲鳴じゃなければいいんだが――――――。

























 ――――――その予感は、的中した。


「・・・・・・何だこりゃあ・・・・・・」


 学園を出て、町をしばらく走っていると、いつもと景色が違った。


 いつもなら元気に声を張り上げ商品を売っていた人が見当たらない。


 店も何か巨大な物に潰されたかのようにぺしゃんこになっていた。


「・・・・・・なーんか、急にシリアスっぽくなってきたな・・・・・・」


 













『――――――うわああああああああ!!』




「・・・・・・!」


 確かに聞こえた。今のは・・・・・・声からして、若い男のものだ。


 悲鳴のした方へ走り出す。間に合うといいが・・・・・・。






















「――――――おい!大丈夫か!」


 先ほど悲鳴を上げたであろう人が見えたので、大声で呼ぶ。



「・・・・・・あ、ああ・・・・・・」


 声をかけた男は心ここにあらずといった感じで返事をする。


「一体何が――――――」


 先ほどの惨状の原因を聞こうとした時。




 ――――――ズンッ、と何か重い物が動くような音が聞こえた。


「・・・・・・!」


 重い物・・・・・・?


 なら、先ほどの店はこの音を出している何かに潰されたのだろうか?


 音が段々と近づいてくる。それにつれ、地面が細かく振動する。






 そして、奴は現れた。


「・・・・・・は?」


 全長10mはあろうかと言う巨体。


 何より気になったのは、顔。


 その顔は、どこか牛に似ている――――――というか、牛そのものの顔。


 そんな牛顔が、巨大な斧を持って、二本足で立って、こちらに向かってゆっくりと歩いてくる。




「・・・・・・俺知ってるぞ?コイツ確か『ミノタウロス』とか言われる奴だろ」



 そう。


 地球じゃもう神話の中にしか出てこないであろう怪物『ミノタウロス』が、俺の目の前にいた。

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