第39話~脱出~
龍稀君は意外とビビりです。人殺しなんてできません。
「ぎゃああああああ!!」
おっさんの左足が飛ぶ。危うく首を切り落とす所だった。
「・・・・・・生かしてもらっただけ感謝しろよ?お前は罪を犯したんだ。殺されても当たり前だったんだからな」
誰かの気配がする。
「・・・・・・良かったのかしら?殺さなくても」
「ようアリス。お前逃げたんじゃねえの?」
アリスだ。
「その件については私が」
自称、脱獄者その1だ。
「まだ救出されてない人がたくさんいるの。そっちを放っておけなくて」
「わーった。俺も行くわ。やる事終わったし」
「そこの肉の塊は殺さなくてもいいの?」
ストップだ。お前随分酷いこと言えるな。まあ事実だけど。
「両腕、左足を切断したんだ。ほっといても死ぬさ」
「ふうん・・・・・・まあ、いいや」
「あんな腐った豚の事なんて忘れて、さっさと残りを救出するぞ」
この後、洞窟内を駆け回り、残された人を全員救出。なぜかあった転送装置のようなもので脱出させた。残ったのは・・・・・・。
「貴方は逃げなくてもいいのかしら?」
アリスである。
「ここを完全に消滅させる。そうしたら帰るさ」
「ここを壊すって・・・・・・じゃあ、あそこの装置を使えないじゃない!!」
転送装置を指差す。
「心配せんでもええよ。・・・・・・なに、二、三日もあれば帰れるから」
「帰れるって・・・・・・一体どうやって!!」
「走って」
走るジェスチャーと共に伝える。
「・・・・・・はあ・・・・・・」
アリス、深いため息だ。
「そうね・・・・・・貴方はそういう人だったわね」
「え、俺どんな位置づけなん?」
「最も強いと言われる竜を倒し、たった一人で何人もの人を救った英雄、って所かしら」
「英雄、ね・・・・・・。生憎、俺はそんなものに興味はない」
「あらそう。・・・・・・じゃあ、気をつけてね」
アリスが転送装置の中に消える。
「・・・・・・よし。残るは俺だけだな?」
『はい。近くに生体反応はありません』
大変便利だ。銀は。一家に一匹は欲しい所だ。
「さあ――――――大解体ショーの時間だ」