第25話~卑怯者~
一瞬だった。
何が起きているか全く分からなかった。
唯一分かっていることは、あの強者が、世界を揺るがす程の魔力を放ち、我に近づいただけだった。
それだけ。たったそれだけで、我は地に伏した。
早い話、敗北した。
「・・・・・・・・・・・・ふう。もう立ち上がってくれるなよ」
気絶しているドラゴンに向かって言い放つ。まあ、少なくとも三日は気絶するだろう。
『・・・・・・主。一体何をしたのですか?』
「ん?禁則事項」
『・・・・・・・・・・・・まあ、いいです』
「っく・・・・・・!!」
「ほらほらどうしたのですかぁ!!私をかませ犬と言っといて、実力はその程度ですかぁ!?」
苦戦していた。
思うように相手の懐へ入れない。近づくと長剣のような杖で剣を弾かれ、離れれば魔法を放たれる。
隙が無かった。魔法を使えない自分が恨めしかった。
「何とかして近づかないと・・・・・・!!」
得物は剣一本のみ。近づかないと真の効果を発揮しない。今はこれで何とか魔法を防いでいる。
「っや、少年。苦戦してるねえ」
「・・・・・・遅いです。後、私は女です。あなたこそ女みたいなくせに痛っ!?」
殴られた。結構痛い。
「・・・・・・ま、冗談言えるだけまだマシか。それよりも」
「はい」
「まずはあのかませ犬、さっさと〆るぞコルァ!!」
そして、走り出す。
「っらぁ!!」
「!? っく!!」
刀でナルシーに斬りかかる。しかし、およそ杖とは思えない杖で受け止められる。
「っはぁ!!」
そこにリリアの飛び蹴り。直撃。ナルシーが大きく後ろの吹っ飛ぶ。
「がはっ!!」
「喚け!泣け!叫べ!!貴様の絶望は我の糧となるぅ――!!」
「リュウキさん・・・・・・キャラ変わってますよ・・・・・・」
んなもん知るか。こういうナルな奴は一度灸を据える必要があるんだ。
「っく・・・・・・・クク・・・・・・クククク・・・・・・」
ナルシーが笑い出す。気が狂ったか?
「ク・・・・・・クヒャーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
「なっ!?」
ナルシーの身体からとてつもない量の魔力が噴出した。
「・・・・・・初めてですよ・・・・・・私を本気にさせた奴は・・・・・・!!」
「・・・・・・フリー○様?」
「何ボケた事言ってんですか!!とにかくヤバいですよこの人!!」
「うむ。精神科へ行く事をお勧めする」
「それもありますけどそうじゃなくて!!」
リリアよ。お前も何気に酷いことを言っているぞ。
「『エクスプロージョン』・・・・・・・・・・・・!!」
「!!ちょっ、あぶな!」
何か小さな太陽が迫ってきたのでリリアを抱えて緊急離脱。
「ちょっ、何ですかあの魔力!?」
「知るか!!むしろこっちが聞きたいわ!!」
「『アースプラント』・・・・・・!!」
足元から巨大なツタが飛び出て来た。
「不意打ちとは卑怯なりぃ!!」
出てきたツタをぶった斬る。
「斬る!!切る!!KILL!!」
ひたすら斬り続けた。
「何か気持ち悪いですー!!」
「ええい我慢せんかあ!!こっちだって気持ち悪いんだから!!」
生理的に 受け付けない。
あ、吐き気が・・・・・・。
「はー・・・・・・はー・・・・・・」
「ぜい・・・・・・ぜい・・・・・・」
3分くらい全力で斬り続けたおかげで、ツタを全て除去することに成功した。
『・・・・・・炎魔法を使ってツタを焼ききればよかったのでは?』
「・・・・・・・・・・・・あ」
気づくのが遅いぞ主人公。