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第108話~最終決戦!二~



















「『ファイアボール』!」


「ふん・・・・・・!」


 飛んできた黒剣と俺が飛ばした火球が衝突し爆発。辺りに煙を撒き散らす。


「行くぞ、リリア」


「はい!」


 その煙に紛れるように俺たちが特攻。


 魔王との距離はおよそ十メートル。長いようで短い距離。


 煙の中を突っ切れば、晴れた視界と、そこに映る無数の黒剣。


「あれに当たるなよ!」


「分かってます!」


 避けられるものは避け、当たりそうなものは刀で弾き、どちらでもないものは拳で砕く。


「ほう・・・・・・! 勇者候補め、そこまでやるとは大したものだな」


「あれから何日も何もしないで過ごしてきたわけじゃないですからね・・・・・・!」


 魔王が自分を見て怖気つかないリリアを見て素直に賞賛。リリアがそれに答える。


「だが、これはどうかな?」


 魔王が手をかざし、今まで飛んでいた黒剣を一点に集める。


 何をするつもりかは知らないが、隙だらけな今が攻め時ってもんだ。

 

 走る速度を上げ一気に魔王に詰め寄り、無防備な腹に一撃を加え、


 キィン! という金属音。


 見れば、魔王の身体の数倍の大きさへと変化した巨大な黒剣の盾が、魔王を守っていた。


「チッ――――――!」


 追撃が来ると予想しバックステップ。


 魔王が手を横に振り、黒剣がそれをなぞるように動く。


 ――――――だが、黒剣を振ったところでこちらには届かない。事前に届かない距離までいたのだから。


 なら、何故アイツは剣を振った?


 ・・・・・・。


「伏せろリリア!」


「わわっ」


 何となく嫌な予感がし、リリアの身体を手で押し無理やり地面に這い蹲らせ俺も同じ体制をとる。


 そして、先ほどまで俺たちの首があった場所を見えない『何か』が高速で通り過ぎていった。


「ソニックブームとか有りかよ・・・・・・!」


 後一歩伏せるのは遅かったら確実に首から上がなくなっていただろう。背筋が寒くなった。なんて恐ろしいもん持ってやがんだヤロウ。


 そんなこんなを考えているうちにまたもや例のソニックブーム。


「チッ・・・・・・!」


 リリアを引っ張って一緒に転がって避ける。


 そして転がった先に図ったように飛んでくるソニックブームがあるわけで。


「ああああうざってえ! 『龍撃・十文字』!」


 寝転がった姿勢で無理やり刀を十字に素早く振り、十字型の衝撃波をソニックブームへ飛ばす。


 衝撃波とソニックブームが衝突し原理不明の爆発。再び辺りが煙に包まれる。


 その間に俺とリリアは立ち上がり、己の武器を構える。


「まずはアイツの懐に飛び込まんとなあ・・・・・・」

 

 思わずそんな事を呟く俺。


 リリアと同時に突っ込んだ所であのソニックブームだ。一応相殺させる事は可能みたいだが・・・・・・。


「・・・・・・よし。リリア」


「はい」


「俺が隙を作ってみる。その間に突っ込め」


「・・・・・・はい」


 リリアが真剣な面持ちで頷く。


 素直に言う事を聞いてくれるのは嬉しいぜ。世の中には『私がいくわ!』なんて言って返り討ちになる奴だっているんだし。


「ステンバーイ・・・・・・ステンバーイ・・・・・・」


 煙が晴れるタイミングを計る。向こうもソニックブームを撃ってこない。


 その間にポケットからカノンを取り出し、いつでも撃てるように構えておく。


「・・・・・・ゴー!」


 煙が晴れると同時に、特攻。


 即座にソニックブームが飛んでくるが十字の衝撃波を放ちこれを回避。


 俺は魔王に気づかれないように少しずつ右へ移動する。ちらりと左を見れば、リリアが左へと走っていた。


 移動しているリリアを気づかせないように俺が攻撃を仕掛ける。


「『フレイムランス』!」


 放たれた炎の槍は、いともたやすく黒剣の盾に阻まれ消失。魔王に届く事はない。


「温いぞ〈後継者〉! お前の実力はその程度か!?」


「ハッ! 俺は後二回変身を残してるんだよ! つまりはまだ本気じゃないって事さ! 『ファイアボール』!」


 空に数十の火球を作り出し、それらを全て魔王へと放つ。


「くっ! ぬう・・・・・・!」


 黒剣でそれらを全て防ぐ魔王だが、その額には一筋の汗が流れている。


「どうしたどうしたもうダウンですかぁ!? 来いよ魔王。武器なんて捨ててかかってこい!」


「誰が屈するものか!」


 盾にしていた黒剣を振るい、こちらへソニックブームを飛ばす。


 それを姿勢を低くして避け、そのまま魔王の懐へと入り込む。


 そして、今まで使っていなかった左手の、溜めに溜めた魔力を開放。


「『神龍撃』!」


「!」


 放った一撃は魔王には届かず黒剣に当たったが、それでいい。


「破っ!」

 

 掛け声と同時に左手に力を込める。


 すると黒剣にビシビシと亀裂が走り、それが黒剣全体に行き渡り、ガラスの割れるような音と共に粉砕される。


「何――――――!?」


「行けリリア!」


 魔王の驚く声も聞かず、リリアに合図を送る。


 魔王がその声に振り返るが、もう遅い。


「――――――はああああああああああっ!!」


 ――――――そこには、空へ高く跳び、そして魔王を滅さんと巨大な剣を振り下ろすリリアが。


 大剣は魔王の胸へ突き刺さり、魔王がびくんと跳ねた後、床へと倒れた。


 聞こえる音が激しい呼吸音のみとなる。


「・・・・・・」


「・・・・・・やった、のか?」


 暴れる心臓を押さえ、魔王の死骸を確認する。


「・・・・・・死んでる、な」


「じゃあ・・・・・・!」


 リリアが喜びの表情を浮かべかけ――――――





















 胸に刺さった黒剣が、それを阻止した。


「――――――え」


「な――――――」


 リリアが、魔王と同じく床へと倒れる。


 魔王と違うのは、倒れた場所が血の色に染められてるという事。


 ――――――ふ、ははははははは――――――


 どこからか、愉快そうな声が聞こえる。


 俺はそれを無視し、倒れたリリアを抱き上げる。


「生き、てるか・・・・・・?」


 抱き上げた少女は、とても軽くて。


 本当に、少し力を込めれば簡単に折れてしまいそうな、そんな軽さ。


「・・・・・・は、い。何と・・・・・・か」


 途切れ途切れに言葉を紡ぐリリア。


 ――――――愉快、実に愉快――――――


「・・・・・・よし。生きてるんならもう喋るな。喋りすぎは命に関わる」


 黒剣は抜かない。


 抜いてしまえば、それこそ大量の血が一気に流れ生存率が大幅に下がる。


 だが、これを抜かない限りは治療なんて出来ないし、そもそも黒剣の呪いのせいで回復が遅い。きっと待ってる間に死んでしまう。


 ――――――あの程度で我を倒したと思ったか?――――――


 先ほどから聞こえてくる声が煩い。


「くそったれが・・・・・・」


 何も出来ない自分に思わず悪態をつく。


「・・・・・・リュ、キさ・・・・・・」


 リリアが口を開く。


「喋るなと言ったはずだ」


「ごめ、な・・・・・・さ・・・・・・」


「・・・・・・」


 何故リリアは謝るのだろうか?


 俺には、分からない。


「影分身の術」


 一人の分身を呼び出し、リリアをどこか治療出来る所へ送るように指示を出す。


 ――――――我は魔王だ。魔の王だぞ?あの程度で死ぬはずがないだろう――――――


 去っていく分身を見届けた後、手の中の刀の柄を強く、ギチギチと音が鳴る程握り締める。


 ――――――お前たちが倒したのは我の分身。本物の我は違う所にいる――――――


 魔王の分身の死骸が消え、そこから天へ続くガラスの階段が現れる。


『主・・・・・・』


「・・・・・・ああ、分かってる」


 これを登れと言う事だろう。


 ――――――さあ、我の元へ来るのだ〈後継者〉よ――――――


 それが最後の言葉だったのだろうか、それきり声は聞こえなくなった。


「・・・・・・」


 さて。突然だが、俺は他人のために怒ったという事があまりない。


『主、何を・・・・・・!?』


 ガン! と強い音と、頭に衝撃。


 近くの柱に自分で自分の頭を強く打ち付けたためだ。額から血が流れ、頬に生暖かい感触が広がる。


 ――――――話を戻すが、俺は他人のために怒った事があまりない。


 なぜか?


 元々こんな姿になってからは人との繋がりを自ら切っていたからだ。


 最も、向こうも見た目を不気味がって近づいてくる事はなかったが・・・・・・。


「・・・・・・いいぜ、魔王。てめぇが人一人死に掛けにしといて何も思わないってんなら」


 身体から魔力が吹き荒れ、砕けた城の破片が辺りを飛び交う。


 それは、銀すらも慄く程の魔力。


「まだ、俺が〈後継者〉だと思ってんのなら」


 ガンッ!! と拳を壁に打ちつける。




















「その腐った脳みそ、俺が修正してやるよ」


 ガラガラと壁が崩れ落ちる。























 俺は今間違いなく。


 他人のために、怒っていた。

 幻想をぶち殺すというと思いましたか?残念だなオリジナルだよ!

 

 ねえねえ今どんな気持ち?自信満々に「絶対そげぶ来るだろ(キリッ」とか言って実際は全く違ったフレーズが出てきてどんな気持ち?予想が外れてどんな気持ち?ねえねえ、ねえったロットォ!まだロケラン持っていやがりましたか読者さん。


 ・・・・・・うん。本編がシリアス満載でふざける所がなくて、ついカッとなって言いました反省や後悔はないです。


 実は散々終わる終わる詐欺してきましたが、この小説が終わった後後日談みたいな感じでもう一つ書こうと思っています。もうちょっとだけ続くんじゃよ?

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