第106話~突撃!海の上の魔王城~
さて。あれから何日たったかは知らないが、一応動けるまでに回復はした。
リリアが話してくれたが、数日程前に例の地図の空いた空間に魔王城なるものが海から出てきたんだそうな。
これはもう行くしかないっしょ。いや行かないでどうする。
そんな事をベンチに座り一人考える。
このベンチは以前魔王がぶっ壊した物だったが、いつの間にか直っていた。
「さて・・・・・・」
カノンを手早く分解して整備した後、元に戻したカノンをポケットに戻しながら呟く。
「あの野郎どうやってぶっ飛ばしてやろうか」
何日もベッドの上で寝かされた恨みは絶対晴らす。何度リリアに気絶させられた事か・・・・・・。
「この恨み晴らさずしておくべきか? 答えは否、断じて否だ」
通りかかった学生がブツブツ呟く俺を見てぎょっとした後、足早に去っていった。
「なーんか決定打が欲しい所だな・・・・・・」
んー、と伸びをしつつ考える。
ちまちまダメージを与えた程度じゃ倒せない。もっと、一撃が恐ろしい技なかったかな・・・・・・。
「・・・・・・お、あった。なんてご都合主義」
考える間もなく答えが浮かび上がった。
「ただあれ完成してないんだよな・・・・・・大丈夫かな」
前に一度だけあの技を試した結果、三日動けなかった。
「まあいいや。誰かが拾ってくれるべ」
そんな楽観的な答えを出した後、ベンチから腰を上げ、準備をすべく部屋へと戻った。
「さてリリア君。今日は何の日かな?」
「魔王討伐の日です」
そんなリリアの答えに俺はよろしい、と頷いた後、
「魔王は確かに強かった。だが、絶対勝てないってわけでもない。必ず隙が出来る」
ここにホワイトボードでもあれば、確実に作戦会議的な何かに見えるだろう。
「そして最後に一つ確認。――――――本当について来るつもりか?」
「はい。私だって将来の勇者です。魔王が目の前にいるのに倒さない勇者なんていませんよ?」
そう言って薄く笑うリリア。
「そうかい。なら、行くか」
「ええ、行きましょう」
「「魔王をボコボコにしに」」
「で、どうやって行くんだ?」
「・・・・・・リュウキさん。まさかお忘れではないでしょうね?」
「何を?」
「あれを」
外に出た後でそう会話した後、リリアが天を指差す。
――――――そこには、以前契約した赤き竜が一頭。
『やっと・・・・・・やっと我の出番が・・・・・・シーズンが到来!』
「あ、移動にしか使わないからそこで出番終わるよ?」
『なん・・・・・・だと・・・・・・』
すみませーん。空中で肩を落としたりするのやめてくれませんか。
「いや、正直ごめん。作者も忘れてたみたいでさ」
「作者って誰ですか!?」
リリアの鋭い突っ込み。
『・・・・・・いや、良い。出番があるだけでも嬉しいものだ』
そう言って空から降りてくるドラゴン。
「そうそう。世の中にゃ作られたはいいけどそのまま忘れ去られるキャラだっているんだし」
「いったい何の話をしてるんですか!?」
ドラゴンの背に乗り、いざ行かん魔王城。
「はいはいー蝙蝠雑魚はすっこんでなー『ファイアボール』!」
空って意外と寒いと思ったけどそんな事はなかったぜ。
そして現在魔王城が見えてきたが、わらわら沸いてきた蝙蝠軍団に進路を阻まれ立ち往生中。
『ぬう・・・・・・数が多すぎて我のブレスでも焼けん!』
ドラゴンの方も苦戦・・・・・・というよりは、鬱陶しがっている。
「うう・・・・・・こういう時何も出来ないのが辛い・・・・・・」
そして背後ではリリアの呟き。
「その分降りたら頑張ってもらうぜ? 『フレイムランス』!」
「・・・・・・はい!」
炎の槍で貫きつつ会話。
「・・・・・・あ。いい事思いついた。別に倒さなくてもよかったやんけ」
右手に魔力を集めつつ呟く。
「総員目を瞑れ!」
『「!」』
「とーみーたーけー・・・・・・フラァッシュッ!」
カッ! と閃光が右手から弾け、辺りにいる悪魔達の目をくらませる。
「ぐああああああ目がああああああ・・・・・・! 今ださっさと進め目があああああああ!」
「ちょー!? 狭い背中の上で転がらないで下さいバランスがー!」
『何この大惨事!? 誰か止めてくださいー!』
『我じゃ届かんぞ』
そんなカオスな会話を繰り広げた後、ドラゴンが急加速、一気に魔王城へと飛ぶ。その姿は正に弾丸のよう。
「ぐうううう・・・・・・まさか自分の技に嵌るとは・・・・・・一生の不覚なのぜ」
「! うわわわ・・・・・・また来ましたよ!」
「ええいまたかあ! バ○ス! そして目がああああああああ!!」
「学習しましょうよ!?」
悪魔達を光でくらまし、時に自分の目が大惨事になりながらも何とか魔王城へとたどり着いた俺達なのでした。
「うう・・・・・・目がショボショボする・・・・・・」
「あれだけ目に直接当たればそうなりますって・・・・・・」
送ってくれたドラゴンに感謝しつつ、やっと回復してきた目で辺りを見回す。
なんというか・・・・・・こう、凄くおどろおどろしい。幽霊の一人や二人でも出てきそうな気配がする。
「あ、あそこに首吊り霊が」
「あははは。何言ってるんですか。そんなとこに何もいませんよ?」
『ひいいいいいいいいいいっ!』
あ、一人釣れた。冗談だったのに。
ちなみに銀ですはい。
「なんだ、リリアはこの手の話は耐性あるのか?」
「ええ。幽霊ごときが怖くて勇者なんてやってられませんよ」
あらそう。と返し、おどろおどろしい雰囲気の森を歩く。
「・・・・・・ふむ」
「どうかしましたか?」
俺が突然呟いた事に疑問を感じたリリアが、俺に声をかける。
「――――――そこか」
ポケットから素早くナイフを二本取り出し、草の中に隠れていた悪魔へと投げ飛ばす。
小さな悲鳴が聞こえた後、生きている気配がなくなった。
「・・・・・・よし。じゃ進むぞー」
「・・・・・・なんという暗殺スキル」
リリアが何か呟いていたが無視だ。
そんなこんなで会話しつつ、時に銀を脅しつつ、暗い森の中を進む。
「・・・・・・あ、ナイフ回収忘れてた」
「え、まさかのリサイクル?」
「さて。特に苦も無くついたわけなんだが」
「むしろ簡単に来れた事に疑問を感じます」
『罠とかあるかも知れませんから気をつけて下さいね」
三者三様の言葉を呟いた後、目の前にずーんと建っている城を見る。
あれだ、見事に城って感じのする城だ。
・・・・・・門の代わりに二体の巨大な像があるのはともかくして。
「あれをぶっ壊さん事には入れない、何てことはないよね?」
「あれが門番だとするなら壊さないと入れないでしょうね」
『主、あの門番のガーゴイル達、こちらをめっちゃ見てます』
あ、ガーゴイルっていうのか。そういやそんなのもあったっけ。
そんな巨大な鳥さんの形をした石像――――――もといガーゴイルズは、突然物理的にありえねえ行動をしやがって下さりました。
――――――なんと、空を飛んだのである。
「なあ、石像が飛ぶってあるの?」
「恐らく魔力で動かしているんでしょう」
『あのガーゴイル達の魔力、やたら多いみたいなので注意して下さい』
まあ、どんなに魔力がうんたらかんたらでも相手が石なら問題ない。
「あ、リリア。ちょーっち離れてて」
「? は、はい」
「あ、出来れば俺の後ろの方でよろしく」
リリアが俺の背後へと下がったのを確認した後、叫ぶ。
「見よ! これが流派・東方不敗が奥義ィ!」
右手を腰だめに構え、力を込める。
ガーゴイル達は攻撃が来ると察したのか、空から急降下攻撃を繰り出す。
「石破! 天 驚 拳 !」
そして、ガーゴイル達に向かって右手を突き出す。
右手から巨大な拳が生み出され、それがガーゴイル達に当たり、『驚』という文字が浮き出た後、バラバラに砕け散った。
「はっはーさすが東方不敗! 伊達じゃない威力だ!」
「うわー・・・・・・」
『さすが主ッ! そこに痺れる! 憧れるぅッ!』
ズキュウウウウン! と効果音がつきそうな決めポーズを決めた後、
「銀、そのネタどこで覚えた」
『え、えと、何となく言わなきゃいけない気がして』
なるほど、ガイア(地の文)に囁かれたんだな。囁かれたんなら仕方ないね。
「さーてー門番もいなくなったし、魔王城に乗り込めー!」
「おー!」
『お、おー!』
控えめに声を出す銀も可愛いです。まる。
こうしてあっさりと門番を粉砕した俺達は、やけにあっさりと魔王城に侵入するのでした。
終わる終わる詐欺? はて何のことやら・・・・・・。
急展開ですマジでごめんなさい。ついて来れなかったら今すぐ逃げテー!
後一週間?二週間?も更新しないで本当にごめんなさい。ええ、あのクラダンのアンチクショウが「今夜は寝かさないぞ☆(廃プレイ的な意味で)」なんて言うもんですからついつい夜中までやっちまうんです。
・・・・・・うん。小説更新し終わるまではやらないどこう。