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第105話~どうやら生きてたらしい~




















 目の前で、彼が無数の黒剣に呑み込まれた。


 私にはどうする事も出来なくて。


 ただただ叫んだ。


 彼の名を。


 黒剣が空に消え、ボロボロになった彼が地面へと落ちる。


 重い身体をなんとか動かし、落ちてきた彼をキャッチ。


 冷たかった。


 それ以上に、軽かった。


 どう考えても男性の体重ではなかった。


 今にも消えてしまいそうな、それくらいの軽さ。


 彼に呼びかける。


 生気のない顔。青白く、そして所々赤い。


 自分の手が赤くなっても構わなかった。ただ必死に呼びかける。


「――――――そいつが心配か?」


 声がした方へ顔を向ければ、魔王。


 腕の中の彼を守るように、ぎゅっと抱きしめる。


「何、急所は外してある。死なれては困るからな」


 魔王が近づく。


 一歩後ずさる。


 そして、強く彼を抱きしめる。


 キッと魔王を睨みつける。


「・・・・・・ふむ。我を前にしても臆さないか。面白い奴だ」


 魔王は何がおかしいのか小さく笑った後、


「よかろう。お前の勇気に免じて我は引くとしよう。再び会う時を楽しみにしているぞ・・・・・・」


 魔王が黒い渦の中へと消えていった。


 後に残ったのは静寂だけだった。
























「・・・・・・見慣れた天井だ」


 自然と目が覚めた。


「魔王と戦って・・・・・・で、剣が刺さって・・・・・・痛かったなアレ」


 天井を見ながら一人呟く。


 痛かったとか言っても、実際あの時痛みはなかった。どうやら痛みを感じる前に気絶したらしい。


「っ・・・・・・! ぐおおおぉぉぉ・・・・・・」


 身体を起こそうとして、激痛。


「これはシャレにならん・・・・・・」


 白いベッドの中へ潜り込む。


 一人で考える時はよくこうしていたものだ。


「さて・・・・・・これからどうするか」


 リリアは俺が魔王になるかもしれないと知った。


 アイツは何を思ったのか俺を連れて行かなかった。


「リリアにバレないようこっそり行くか・・・・・・? というかそもそも魔王ってどこにいるんだよ・・・・・・」


 作戦一は計画途中に失敗。


「いっそリリアもや・・・・・・待て、俺は一体何を考えている」


 二も失敗。


「また魔王が来るのを待って暗殺・・・・・・出来そうにないからパス」


 三も失敗した所で、不意に足音。


 誰だ・・・・・・?


 身構えようにも動くだけで身体が痛い。


 ドアがバンッと勢い良く開けられ、


「リュウキさん!」


 リリアがジャンプ。


 ・・・・・・え?


 そして抱きしめられ。


「よかった・・・・・・本当によかった! 死んだかと思いましたよおおおおお!!」


「ごふっ・・・・・・うん。今お前のせいで死に掛けてるんだが」


 動くだけでも激痛だというのに外部からの激しい攻撃。


 傷口が開いたのか、巻かれていた包帯に血が滲んだ。


「はっ! ・・・・・・ごめんなさい」


「もし今ので死んだら死因は何だったんだろうな・・・・・・」


 リリアが離れる。


 うぇ・・・・・・血がドロドロして気持ち悪い。


「・・・・・・すまん、包帯とって」


「あ、はい」


 リリアから包帯を受け取り、血の滲んだ包帯を取り、素早く新しい包帯を巻く。


 即座に血が滲んだので諦めた。


「・・・・・・で、だ。俺は一体何日寝ていた?」


「・・・・・・三日です」


「嘘だな」


「っ・・・・・・一週間です」


「今度は本当のようだな。じゃもう一つ質問。あの後魔王はどうした?」


「どこかへいなくなりました。次会う時を楽しみにしている、と・・・・・・」


 次、ね。こんだけ重傷負わせといてよく言うもんだ。下手すりゃ死んでたぞ。


「なら・・・・・・さっさと会いに行きま・・・・・・! おおおおおお・・・・・・」


 ベッドから出ようとして、傷が開いたのか再び激痛。


「駄目ですよ寝てなきゃ! 生きてるのが不思議なくらいの怪我なんですから・・・・・・!」


「大丈夫、だ・・・・・・問題な・・・・・・おおぅ・・・・・・」


 こりゃいかん。今は大人しく寝ていようか。下手したら内臓も傷ついてるかもなあ・・・・・・。


 そういやこの傷、あの黒剣につけられたんだとしたら・・・・・・治りが遅いのも頷ける。


「無茶しないで下さい・・・・・・」


 気のせいか、リリアの目の辺りが赤くなっている気がした。


「・・・・・・すまん」


 素直に謝っておく。


「本当に・・・・・・心配したんですから・・・・・・」


 リリアが俯き、呟く。


 肩と手が震えていた。


 ・・・・・・そんなに心配だったのか。


「目の前でリュウキさんが死に掛けて・・・・・・私は何も出来なくて・・・・・・!」


 リリアの言葉が途中で止まる。


 激痛の走る身体を無理やりに動かし、リリアの手を握ってやった。


「まあ・・・・・・アレだ。俺はちゃんと生きてるから。これくらいの怪我ならすぐに治るだろうし、心配しないでくれ」


 痛みで引きつる顔で、精一杯笑ってやる。


「リュウキさん・・・・・・!」


「ぐおっ・・・・・・」


 抱きつき攻撃、再来。


 だが、ここで離しちゃ男が廃るってもんだ・・・・・・!


「ごふっ・・・・・・泣きたきゃ泣け。男にしちゃ狭いが、肩くらいなら貸してやる」


「・・・・・・っ!」


 リリアが俺の肩に顔を当て、静かに泣き始めた。


 さて・・・・・・問題は、いつリリアが泣き止むのかと、俺の身体がいつまで保つか、だ。


 とりあえずリリアに血がつかないように手で抑えたりしているが・・・・・・いつまで保つかは知らん。


『主・・・・・・顔が青いです』


 今まで一言も喋らなかった銀が呟く。


「大丈夫だ・・・・・・問題な・・・・・・ひぎぃ」


 涙が傷口に染みたのか変な声が出る。


 リリアはしばらく泣き止みそうに無い。


 痛みに耐えつつ、早く泣き止まないかなとか思ってしまう俺でしたとさ。
























 ちなみにリリアが泣き止んだ後には、青を通り越して真っ白になった某ボクサーのような顔をして気絶した俺がいたとかどうとか。

 リリアの握力が凶器並な今回。人間って恐ろしい。


 さて、かぐさんがどんなに強かろうとその力の元である魔王には勝てませんでした。主人公というのは一度負けて色々と学ぶものです。


 後十話以内には終わらせたいと思っています。早くしないと私の右手が勝手に・・・・・・!

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