第95話~決闘大会一日目~
光り輝く太陽に照らされ、俺は決闘大会の会場に立つ。
眼前には自分の二倍はあろう身長で、それと同じくらいの長さの大剣を両手で構える屈強な男が一人。
辺りを見回して見える景色は、一面人、人、人で覆いつくされている。
俺たちの試合を見に来た観客達だ。
観客達は思い思いにやっちまえーだのぶっころせーだのと叫んでいる。
大会の会場は、何てことはないただのレンガで出来た正方形のフィールド。
どれくらいの大きさかはよく分からないが、十分動きまわれるほどに広い。
さて。ここでこの大会のルールでも説明しておこうか。
ルール自体は至ってシンプルで、相手を戦えなくするか、降参させるか。そして武器は何を使ってもよし。
この『戦えなくする』というルール、とりかたによっちゃあ何でも出来る。
早い話、相手を殺したっていいのだ。それで相手は『戦えなくなる』のだから。
「へっへっへ・・・・・・最初の相手がこんな弱っちそうな奴だなんてな。こりゃ楽勝だぜ」
対戦相手の男が、いやな笑い方をしつつ呟く。
そんな完全にこちらを舐めきっている相手に、俺は、
「なあ、降参しないか? 今なら痛い目みずに済むぞ?」
と問いかける。
「はあ? 痛い目にあうのはテメェだろ? 怖くて頭でもおかしくなったのか?」
俺の言葉に、男は最初素っ頓狂な声を上げた後、こちらを見下したような台詞を吐く。
「そうか・・・・・・まあ、後悔するなよ」
俺が言い終わると同時に、試合開始を告げるファンファーレが鳴り響く。
「はっ! 後悔するのはテメェだろうが!」
対戦相手の男は勇ましくそう叫び、こちらに突貫。武器の射程距離に入った所で、獲物である大剣を振り下ろす。
「へっ、楽勝――――――」
男の、勝利を確信した声が聞こえる。
だが、その言葉は最後までは発せられなかった。
「――――――へ?」
何故なら、振り下ろしている最中の自分の獲物である大剣が、柄だけ残して地面に落ちていたから。
「――――――降参、してくれない?」
男の大剣を斬りおとした、銀を変化させた刀の切っ先を男ののど元に突きつける。
間もなく、男は柄だけ残った大剣を手から落とし、両手を上げて降参のポーズをとる事になる。
「はあ? こんなひょろっこいのが俺の対戦相手だあ? 前の相手は何をしてんだか・・・・・・」
第二回戦。
今度の相手は、やや顔立ちの整った青年。
青年の両手には、よく切れそうな剣が一本ずつ握られていた。双剣使いと言ったところか。
「なあ、その自慢の顔を整形されたくないなら、降参してくれないか?」
先ほど大剣を持った男にしたように、青年に問いかける。
「お前みたいな弱そうな奴に誰が降参するかっての。 むしろ降参するのはお前の方じゃないか?まあ、聞かないけどな」
ちなみに今更だが、降参はされる方が同意しないと認められない。
つまり、命乞いをしても相手が聞かなければ意味がない、という事だ。
「さて・・・・・・お前みたいな奴、五秒で片付けてやるよ」
この言葉から察するに、完全に俺を見下している、もしくは舐めているのだろう。
試合開始のファンファーレの音が鳴り響くと同時に、青年が右手の剣を突き出しつつこちらに突進してくる。
右手の剣を刀で軌道を逸らし、顔めがけて突き出された左手の剣を首を捻って避ける。
青年は避けられた事に多少驚いた様子だったが、すぐに突き出した両手を引き戻す。
・・・・・・が、引き戻す前に俺が手首を掴み、思いっきり手首を握る。
青年の顔が苦痛に歪み、痛みに耐えられなかった両手から剣が滑り落ちる。
剣が落ちたのを確認してから、落ちている場所とは間逆の位置に手首を掴んだまま青年を叩きつける。
手首から手を離し、銀を刀に変化。それを右手に持って青年の首筋へ持っていく。
「降参、しないか?」
やや時間を置いて、青年は最初に戦った男と同じ行動をとる事になる。
この後の予定を確認すると、今日はもう試合はないらしい。
特にする事もなかったので、適当に国をふらつき、時折襲ってくる輩を撃退する。
歩いているとお腹がすいたので宿屋へ戻り、適当に飯を頼む。ちなみに太陽の位置を確認すると、大体昼ごろだった。
昼食を食べ、再び国をぶらつき、そしてやっぱり襲われて返り討ちにして。
結局何かあったというわけではなく、ただ時間だけが過ぎ、夜になってしまったので宿屋へ戻る。
そしてやや硬いベッドに潜り込み、そのまま寝た。
今回やけに短いが大丈夫か?
元々これくらいの量だったので、短いのではなく元に戻ったのが正解。
ちなみに今回も元ネタなしです。