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第94話~夜の一人歩きは危険~




















 さて、折角新しい国に来たんだ。出来る限りは満喫するぜ。


 え?決闘?兵士失神?何それ?お れ は な に も し り ま せ ん よ ?


『主? どうしたんですか? 目が泳いでますよ?』


 え?気のせいじゃない?























「ふう・・・・・・」


 安そうな木造の宿屋を見つけ、そこを今晩の寝床にする事に。


 部屋に入り、ちょっと硬いベッドに腰掛け、目を瞑る。


「・・・・・・思えば、遠くまで来たもんだ」


 何となく、俺のこれまでの人生を振り返ってみる。


 神楽に引き取られ、色々学んで・・・・・・そして。


 そして、あの石を拾って。そこから色々とおかしくなって。


 それでも頑張って生きてたらトラックに撥ねられてあっさりと死んで。


 死神とやらに会って、この世界に来て・・・・・・。


 この体験を小説にしたら売れるんじゃね?あ、もう元の世界には戻れないから駄目か。こっちの世界に小説とかあるか分からんし。


 瞑っていた目を開け、腰掛けたベッドから立ち上がる。


「・・・・・・よし」


 ちなみに決闘は明日から三日間行われるらしい。つまり、今日は暇というわけだ。


 宿屋を出て、国の中で広くて人に見つからなさそうな所を探すため、歩く。


 宿屋が木造なだけに国の建物も木造かと思えば、大体の建造物はレンガで出来ていた。


 どうやって形をつくったとかどうやって固めたとか色々疑問はあるけど特に気になっているわけでもないので無視。


 人だかりの多い道を歩き、人の少ない道を歩き、人が全く通らないような路地裏も歩く。


 しばらく歩き回ったが目当ての場所は見つからなく、国に入った時はまだ明るかった空も、気づけば暗くなり始めていた。そろそろ宿屋に戻った方がいいか。


「その前に・・・・・・」


 歩く足を止め、後ろを振り返る。


 そこは一見何も無いただのレンガで出来た道だが、このどこかに少し前から俺をつけている奴がいる。


「出て来い。そこにいるのは分かってる。誰だか知らないが、人をつけるたあいい度胸してんじゃねえか」


 バレているのが分かったのか、暗闇から人影が現れる。


 ひとつ、ふたつ・・・・・・全部で五人か。


「で、俺に何の用だ? さっさと帰らんといかんのだけど」


 その人影達は、いかにもな感じの悪そうな顔をしていた。


「・・・・・・おいおい。なんか穏やかじゃねえな」


 その五人の手には、斧や剣といった、持っている物は違うが使用する目的が一致している物が握られていた。


「アンタ、今日入国した旅人さんだろ?」


 その五人のうちの、真ん中にいた男が俺に問いかける。


「ああ、そうだが」


 俺がそれに応えると、男たちは何やら目配せをした後、


「アンタに恨みはないが、これも仕事なんだ。大人しく俺たちにやられてくれ」


 男の、やや苦しそうな声の後に、男たちがそれぞれ手に持った武器を振りかぶる。


 暗くてよく見えないが、あまり綺麗な物ではなさそうだ。今までも何度かこんな事をやっているのか。


 男たちが、こちらに向かって走ってくる。


 相手はそれぞれ武器を持ち、対してこちらは無手。普通の人がこれを見ていれば、間違いなく俺が負けると思うだろう。


 俺が『普通の人』だったらの話だけど。


 一番身体の大きい男がその身体からはありえないスピードで俺に近づき、振りかぶった大きな斧を振り下ろす。


 それを左半身をずらして避け、地面にめり込んだ斧を持ち上げようとする男の手の甲に回し蹴りを食らわせる。


 男が小さな悲鳴を上げて斧から手を離す。


 隙の出来た腹に蹴りを食らわせようと思ったが、左から剣を持った男が走ってきたので断念。


 男は手に持った剣を垂直に俺に向かって振り下ろす。


 それを右の人差し指と中指で止め、そのまま力を込めて折る。


 男が驚愕するが、その顔は俺が腹に鋭い蹴りを入れる事によって即座に苦痛の表情に変わる。


 蹴りを入れられた男がその場にうずくまり、俺がその隙だらけの頭にかかと落としを叩き込む。


 男は地面に顔を強打し、泡を吹いた後そのまま気絶した。


「くらえ!」


「ほっ」


 棍棒を持った男が背後から声を上げて棍棒を振り下ろすが、右に跳んで回避する。


 体制を整えた直後、俺の心臓目掛けて矢が飛んできたのでそれを手で掴んでへし折る。


 そして大きく棍棒を振り上げた男の懐に潜り込み、顎に向けて強くアッパーを放つ。


 恐らく脳震盪を起こしたであろう男が棍棒を手から落とし、その場に倒れて動かなくなった。


 これであと三人か・・・・・・?


 背後から殺気を感じたので右に跳ぶ。


 俺が跳んだ直後、大きな音と共少し前まで俺がいた所にめり込む斧。


 あの野郎もう復活しやがったか・・・・・・。


 体制を立て直すと、再び矢が飛んできたので掴んでへし折る。


 斧を持った男が一人に、矢を放ってくる男が一人。現在倒した人数は二人で、最初に視認した数は五人。


 じゃあ、残りの一人は?


 不意に感じる寒気。


 咄嗟に銀を刀に変化させ、頭を庇うようにして振り上げると、金属同士がぶつかり合う音と共に、振り上げる事に抵抗を感じる。


 上を見れば、ナイフを持った男が一人。


 その男は勢いをつけて空中で回転しつつ離れる。


 それを追撃しようと思えば背後から斧が迫る。


 それを半身をずらして避け、今度は斧に腰の入った重い拳を放つ。


 拳が当たった位置からヒビが入り、それが斧全体に行き渡った後、斧が粉々に砕け散る。


 斧を持っていた男の顔が驚愕に満ちる。


 そしてそのまま動かない男の首筋に回し蹴りを入れて沈める。


 間髪いれずに飛んできた矢をへし折り、背後から迫るナイフに振り向きざまに刀を横に振る。

 

 ナイフの持ち手より先が地面に落ち、男の顔が青色に変わる。


 一息ついた後、その男の腹に思い切りヤクザキックをぶちかまして空に飛ばし、飛んできた矢をへし折り、矢が飛んできた方へ走る。


 背後で男が地面に落ちる音が聞こえた直後、再び矢が飛んでくるので今度はそれを刀で弾く。


 近づくにつれ矢が飛んでくる量が増えた気がしたが、どうでもいい。


 矢が通じないと悟ったのか、こちらに背を向けて逃げ出す弓を背につがえた男が見えた。


 だが、男よりも俺の方が早く、こちらに顔だけを向けた男の顔に裏拳を決める。


 そうして、俺を襲ってきた男たちを見事に撃退し、動く者が自分ひとりになった。


「・・・・・・ふう」


 しばらく神経を張り巡らせたが、近くにもう人の気配はない。


 それを確認した後、ため息を吐く。


『主、お疲れ様です。しかしこの人達は一体・・・・・・?』


「さあな。明日のライバルを少しでも減らそうと思ったんじゃないのか?」


 銀の疑問に応える。


「さって・・・・・・もう暗いし、今日はさっさと帰って寝るか・・・・・・」


 宿屋に戻るまでに誰かに襲われるなんて事はなく、宿屋の自分の部屋に戻りベッドに飛び込む。


「だー・・・・・・疲れた・・・・・・」


 即座に襲ってきた睡魔に身を委ね、そのまま目を閉じた。

 ものっそい今更なんですが、戦闘描写ってものすごく難しいんですね。


 あ、元ネタ解説はなしです。珍しくシリアス以外でネタを使わなかった回。

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