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第91話~情熱を感じない大陸~




















 ――――――見渡す限りの灰色の空間に、俺はいた。


 地面、空、建築物・・・・・・何から何まで全てが灰色の世界。


 そんな世界に、俺はいた。


「・・・・・・え? 寝たら強制的にここへ移動なの?」


 もしそんな仕様だったら俺泣くぞ。


 身体は休んでるのに神経が働いているような感覚がするんだよこの場所。


 おかげで今までここに来て十分に休めた事は一度もない。


「何もしなけりゃそのうち寝れるぞ」


「うおっ」


 と、そこに背後から誰かの声。


 振り返れば、白い髪と赤い目という以外姿が全く俺に似ている人がいた。


「よう白。ビックリさせるのは心臓に悪いからやめてくれませんかねぇ?」


「だが断る、だな。目的のなくなった今、こういうのが唯一の楽しみなんだよォ」


 そう言って歪に笑う白。その笑い方はデフォルトなのか。


「さいですか・・・・・・まあいいや」


 そう言って、近くにあった灰色の椅子に腰掛ける。


 白の言った目的とは、俺に殺される事。


 どういう原理かは分からないが、コイツが俺に殺されると俺の中の『闇』とやらがどーたらこーたらでもう思い出せないからいいや。


 それにコイツは生きている。俺が殺すのを拒んだからだ。


「あ、コーヒー淹れてくんね?」


「くつろいでンじゃねェぞォ」


 白にコーヒー淹れてくれと言ったら頭を殴られた。結構痛い。


「ケチな奴め・・・・・・なら自分で淹れるからいいさ」


 椅子から立ち上がり、インスタントコーヒーの入っている袋を探してそれを開け、事前に持っていた灰色のコップにざらざらと中身を入れた後何故か最初から熱いお湯の入っているポットからお湯を注ぐ。


 そうして出来た灰色のコーヒーに灰色のスプーンを突っ込んでかき回す。


「おい、俺にも淹れてくれよ」


「自分で淹れろやハゲ」


 人が言ったら殴ったくせに注文なんてしてくんじゃねえぞコラ。


「俺がハゲだったらてめェもハゲてる事になるなァ」


「なん・・・・・・だと・・・・・・!?」


 






















「まだハゲてない! 確かに最近ストレスたまってるけどだからといってハゲるほどじゃない!」


 バッとベッドから飛び起きる。


「ハッ!? ・・・・・・夢か」


 ・・・・・・酷い漢だ。あの野郎まじめな顔して言いやがるから軽く『そうなんじゃないか?』とか思っちまったじゃねえかちくせう。


「大丈夫、だよな。うん。まだ大丈夫」


 起きたついでに身体の調子を確認する。


 ・・・・・・うん。少しギシギシいってるくらいだな。なら大丈夫だ。


「大丈夫かカグラ君!」


 そんな事を考えていると、扉を勢いよく開けて団長が入ってくる。


「叫び声が聞こえたが・・・・・・大丈夫かい?」


「ん? ああ、大丈夫だ。ただ単に疲れてただけだから」


 流石にもう一人の俺と話してました、なんて言ったらどんな目で見られるか。


「そうか・・・・・・。丸一日眠ったままだったから心配していたんだ」























 なん・・・・・・だと・・・・・・?


「一日?」


「うん? ああ、そうさ。ベッドに飛び込んだかと思うと三秒で寝てしまったんだよ、君は。それからちょうど一日たった今起きたってわけさ」


「マジすか?」


「ああ、マジだ」


 あるぇー?あれそんな疲れる技だったかな。ただ単に最近使ってなかったって事もあるだろうけど。


「あれはそんなに疲れる技なのかい?」


 あれ、とはおそらく居合いの事だろうか。


「えーっと・・・・・・まあ、人によりじゃないか?」


 近くに居合いをしている人がいなかったから分からないが、人によって変わるんだろう。


 力の抜き加減とか集中の仕方とか。うまい具合にそれが出来る人ならそんなに疲れないんだろう。多分。


「そうなのか・・・・・・。私の仲間の一人がそれを習いたいと言っていたが、君のその様子じゃ難しそうだね。彼には諦めるよう言っておくよ」


「そうか。まあどちらにしろ習うのは無理だろうけどな」


「うん? どうしてだい?」


「俺が教えるの下手だから」























「カグラ君、大陸が見えてきたぞ」


 船の甲板でボーッとしていると、団長から声をかけられた。


「この先は少し物騒なんだ。もしかしたら突然攻撃されるかもしれないから注意してくれ」


「いきなり攻撃してくるのか?」


 団長が頷く。何の説明もなしに攻撃してくるのか。酷い所だな。


 ・・・・・・あれ、俺そんな所に行くんだよな。行きたくなくなってきた。


「ああ、そうさ。少しピリピリしているみたいでね」


 少しピリピリしているくらいで攻撃してくるのか。やっぱり行きたくなくなってきた。


「ちなみにその攻撃方法は?」


「主に大砲を使ってくる。後は近づけば魔法を放ってくる事もある」


「・・・・・・なあ。今からでも引き返さない?」


「君が行きたいと言ったんだ。ならその言葉は最後まで貫くべきだろう?」


 俺は行きたいじゃなくて生きたいと言ったんだよ。多分。


「・・・・・・わかった。じゃあんたらはここで戻った方がいい」


「? 突然何を言い出すんだい?」


 いや、だって攻撃してくるんだろ?そんな所に突っ込ませられないっての。


「ここからでも跳んでいけるからさ。そもそもあの魔物がいる所までって言ったんだぞ最初」


「ここまで来てしまったらもう仕方が無いだろう? 最後まで私たちは行くぞ?」


 いい笑顔でそんな事を言う団長。


「いや、そこまでしなくていいから。大人しく戻ってくれ。一応俺の実力分かってるだろ?」


 俺がそう言うと、団長は先ほどの魔物との戦闘を思い出したのか、確かにと頷いた。


「だが、君一人じゃ危ないだろう?」


「いやいいんだって。むしろここまで送ってくれたらもう十分だから」


 俺一人の方が気が楽なんだけど、という言葉は言わないでおく。


 自分一人を守るのと他人も守るのとじゃ色々と違うからね。そもそも守るのはあんまり得意じゃないし。


「そんな事を言わないでくれ。海賊というのは仲間を大切にするんだ。この船に乗った以上君もその仲間の一人なんだ。仲間を一人おいて帰るなんて出来ないよ」


 ごめん団長。いい事を言ってるつもりなんだろうけどそのどや顔はやめてくれ。


「・・・・・・そうかい」


 俺はため息を一つついた後、その場にしゃがむ。


「何をしているんだい?」


 俺は少し呼吸を整えて間を置いた後、


「悪いな団長。俺はあんたのルールには従えない」


 足のバネを使って高く跳躍。


「待つんだカグラ君! この先は本当に危ないんだ! 私たちと一緒に行くんだ!」


 下からそんな団長の声が聞こえる。


「危ないからこそ一人で行くんだよ! 俺はあんた達を守れるほど強くはないんでね! 悪いけど帰ってくれ!」


 俺はそう返事をした後、空中に足場を作り、それを踏んでさらに跳ぶ。


 目指すは新たな大陸。


「・・・・・・分かった! 私たちは先に戻る! だから君は無事で帰ってくるんだぞ!」


 何を考えたかは分からないが、団長からそんな返事。


 別にもう二度と帰ってこれないような場所に行くわけでもないのにな。


 そんな事を考えていながら前を見ると、海が目の前に迫っていたので慌てて足場を作って再び跳躍。


「危ねぇ・・・・・・後ろ見ながら跳んだりするんじゃなかったぜぃ」

 

 今のは少しビビッた。


 知ってるか?水っていうのは高い場所から飛び込むとコンクリよりも硬くなるんだぜ?高さにもよるがな。























「さってと・・・・・・」


 少し大きめの足場を作ってそこに座り、一旦休憩する。


 ポケットから双眼鏡を取り出し、微かに見える大陸に狙いをつける。


「んー大砲らしきものがいっぱいあるな。数が分からんが・・・・・・まあ、防御は完璧ってか」


 大きな長い筒のようなものが大量に見える。おそらくあれが大砲だろう。


 あれでやってきた船を沈めるってか・・・・・・おお、こわいこわい。


「やっぱりアイツら返して正解だったかね」


 あんだけ大量の大砲があれば、船なんてただの的でしかないだろう。


「しっかし・・・・・・何で大砲に足なんてあるんだろうな」


 よく見ると、大砲の筒の下に足のようなものがついていた。移動する時にスムーズに動かすためだろうか。


「足なんてただの飾りなのになー」


 そんな事を呟きつつ、休憩ついでにポケットから取り出した粘土のような携帯食料を手でちぎって食べる。


「うおっまずっ」


 栄養価は高いらしいんだけどなあ・・・・・・。


 不味い携帯食料を少し食べ、残りは紙に包んでポケットの中へ。


 味は酷くても腹は膨れた。


「さて・・・・・・移動するか」


 座っていた足場を強く蹴り、再び移動を開始した。

 今回は戦闘なしです。というか私の小説あんまり戦闘シーン無い気がする・・・・・・。


 元ネタ解説いきましょう。そうしましょう。



「足なんてただの飾り」


 こちらはガンダムより。ガンダムネタ結構使ってる気がする。


「携帯食料」


 これ元ネタとかあるのか・・・・・・?一応参考にしたのはキノの旅。

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