第80話~別れ際まで愉快な軍団~
「さあ、ついたぞ。ここがリーンズ王国だ」
「・・・・・・おおう」
あれからしばらく歩き続けていたが、ようやくついた。
ここがリーンズ王国か・・・・・・。
国全体を巨大な城壁で囲んでいるので中が見えないけど。まあ、防衛策なんだろうな。
「じゃあ、俺はここでお別れになるな」
『な、なんだってー!?』
甲冑たちが声を揃えてそんな事を言う。いや、そんな事言われても。
「そもそも、そういう約束だっただろうが。ここに来るまでは同行するけど、その後は自由にするって」
「それじゃあ俺たちの癒しはどうなる!?」
「性別云々を通り越したその美貌!離すには勿体無い!」
「え、性別?この人女性でしょ?」
『え?』
「え?何その『お前何言ってんの』みたいな顔」
「・・・・・・いいか新人。よく聞いてくれ」
甲冑たちが『新人』といった奴の言葉を聞いてイラッとしたが、その後別のベテランっぽい甲冑が、諭すように話し出した。
「旅人さんは・・・・・・男なんだ」
「なっ・・・・・・」
その言葉を聞いた新人甲冑は、少し息をためた後、
「なんだって――――――!?」
「うっさい」
「ごふぁっ!?」
大声で叫び始めたのでぶん殴っておいた。甲冑に拳が当たってちょっと痛い。
「というわけで、ここでお別れだな。縁があればまた会えるだろ。じゃあな愉快な甲冑軍団」
今もなお俺を止めようと必死な甲冑たちに背を向け、手をひらひらと振りながら別れを告げる。
「・・・・・・待ってほしい」
そう言って俺を引き止めたのは、あの甲冑代表のイケメン。
「君も私たちと一緒にこないか?私たちの仲間になってほしい」
「おお!リーダーいい事言った!」
「ジュースを奢ってやろう」
「9杯でいい」
・・・・・・なるほど。スカウトか。
「君の実力があれば、私たちの仕事も大分楽になる。出来る限り優遇もさせてもらう。だから、私たちの仲間になってほしい」
兜を被っているので表情はよく分からないが、兜に空いた視界確保のための隙間の奥から見える瞳は、真剣そのものだ。
「・・・・・・折角だが、断らせてもらう。元々この国につくまでという約束だったし、俺は集団行動はあまり得意じゃないんだ。だから、悪いな」
「・・・・・・そうか。いや、無理言ってすまなかった。今までありがとう。また縁があれば会おう」
「おう。見かけたら声くらいはかけてやるよ」
「さらば・・・・・・我らが癒し・・・・・・!」
「旅人さんといた時間、退屈しなくて楽しかったぜ!」
そんな感じに甲冑たちが別れを告げてくる。
それに一言二言返しつつ、さあ俺も別れようかと思った時、
「あの・・・・・・大事な話が」
最後に残った甲冑が、真剣な声でそういった。
「ぬ?何ぞ?」
「旅人さんが男だとは分かっています。・・・・・・でも、僕の溢れる気持ちは抑えられない・・・・・・!」
あれ?何か急に寒気が。風邪ひいたかな。
「旅人さんの事が好きです!僕と付き合って下さい!」
「おいィ!何先に抜け駆けしてる訳?」
「貴様ぁ!旅人さんに告白する時は全員でと言っただろう!」
「バラバラに引き裂いてやろうか!?」
「・・・・・・うん。つまり、俺の事が好きだと」
そんな俺の疑問に、
「はい!」
甲冑は真剣な声でそう言う。
・・・・・・そうか。分かった。ならこちらも真剣に答えてやろう。
俺は甲冑に対し、笑顔で(ただし目は笑っていない)、
「だが断る」
「! うっ・・・・・・うわあああああああん!」
「うおっ!甲冑Cが涙を流して走り去った!?」
「ほう・・・・・・素晴らしい断り方だと関心するが、どこもおかしくはないな。ジュースを奢ってやろう」
「もちろん9杯でいい」
結局、別れる時までも愉快な甲冑軍団だった。アディオス。
「さて・・・・・・国に入ったはいいが、どこへ行こう」
甲冑軍団と別れた後、軽く入国審査のようなものを受けてから国に入ったが、どこに何があるとかが分からない。だからどうすればいいか分からない。
ちなみに入国審査ってのは、危険な物を持ってないかとか、健康に異常はないかとか、その程度のものである。
「・・・・・・あれ、俺何で抜け出してきたんだっけ」
『〈後継者〉の情報を探すのでは?』
「そうだったっけ。じゃあ、それをしばらくの目的にするか」
とりあえず聞き込みでもしようか。
初めて訪れた国を観光して回りつつ、〈後継者〉の情報を探すため、ふらふらと歩き出した俺であった。
ちょっと別れ方が強引になってしまったかも・・・・・・ううむ、小説って難しい。
元ネタ解説いきますか。
「ジュースを奢ってやろう」
「おいィ!?」
「バラバラに引き裂いてやろうか!?
「素晴らしい断り方だと関心するが、どこもおかしくはないな」
これら全て前回の話でも使われていた「ブロント語」と呼ばれるものです。
ちょっと最近見たニコニコ動画の動画でやけにハマッてしまったものがありまして・・・・・・それにブロント語を作り出したブロントさんと呼ばれる人物が出てきているのですが・・・・・・見ているうちに中毒になってしまった。何故こうなった・・・・・・。