第75話~旅立ち~
――――――結局、戦闘はすぐに終わった。
剣で切りかかってきたので、それを弾き飛ばして刀を突きつけて終わり。
あれだけ種族の違いがどうの~とか言ってたのにこれは無い。拍子抜けしてしまった。
「さて・・・・・・お前はどうされたい?このまま喉を貫かれて死にたいか?それとも情けをかけられ、生き延びるか?」
「お前の好きにしろ。殺すも生かすもお前次第なのだ。後悔のない選択をするが良い」
刀を突きつけられているこの悪魔は、すぐ近くにある血の池を作った張本人だ。ここで生かしておくと、また同じ事をするかもしれない。しかも、俺の目の前で。
だからといって殺すのか?いくら悪魔と言えど、見た目は普通の人間と何ら変わりは無い。コイツを殺すと、人を殺しているような気がして嫌になる。
『主、どうするのですか?』
銀が疑問を投げかけてくる。
それに俺は、答えられないでいた。
「今ここで私を見逃せば、いつかお前の目の前に必ず現れ・・・・・・また人を殺すだろう。それでも見逃すか?」
うっさい。少し黙ってろ。
というかさ。
「お前のその言い方、まるで殺してくれと言わんばかりだよな」
「ああ。私は死にたいのさ」
衝撃の事実が今発覚した。
「・・・・・・なんでさ」
「生きるのに疲れた、といえば納得するか?」
突然の展開についていけない。どういう事なの・・・・・・。
「納得はしないが、お前は死にたいという事だけは分かった」
「ああそうだ。だが自分で自分を殺す事は出来ない。ちょっとした呪いがかかっているのでな」
「・・・・・・なら何だよ。お前は俺に殺されるためにここに来たっていうのか?」
「ああそうさ」
俺の質問に間をおかずに答える悪魔。
「・・・・・・なら、あの警備隊を殺した理由は?俺に殺されたいのにあいつらを殺す理由は無かったはずだ」
「ああそれか。人間は同族を殺されると怒るという。怒りに呑まれた人間なら私を殺せるだろうと思ったからやっただけだ」
コイツは・・・・・・自分のためだけに、人を殺したというのか。
そうか。なら。
「お前の望み通りに、してやるよ」
両手で振りかぶった刀を、悪魔に向かってまっすぐに振り下ろした。
「・・・・・・影分身の術」
二人の分身を呼び出す。
「分身Aは死体の処理を。分身Bはリリアについてやってくれ。万が一だから」
「「おう。任せとけ」」
「Aはすまんな。そんな仕事は嫌だろうが・・・・・・」
「はっはっは。気にすんなっての」
分身Aはそう言うと、血の池に沈んでいた真っ赤に染まった人間たちと、人間にそっくりな悪魔を俵担ぎにしてどこかへ持っていった。
「Bはよろしく頼んだぞ」
「俺が消えない限りは絶対の守りを保障するぜ」
分身Bはそう言うと、煙のように消え去った。
『主、これで良かったのですか?』
銀が心配そうに聞いてくる。
「いや、大丈夫・・・・・・多分。ちょっと手が震えてるけどそれ以外は問題ないから」
『どう見ても問題しかないんですが』
「大丈夫だ、問題ない」
『それは死亡フラグです』
「冗談はさておき。本当に大丈夫だから、心配せんでもええよ」
はっはっはと笑ってみせる。
銀から見て、俺の笑顔は本物だろうか。それとも作り物に見えるだろうか。
『・・・・・・そうですか』
銀はそう言うと、何も言わなくなった。
「おう。死体処理終わったぞー」
そこへ分身Aがやって来る。ただし全身血まみれで。
「お疲れさん。もう帰ってもいいぞ」
「あいよ。じゃあなー」
そう言うと、分身Aは煙に包まれ、煙が晴れると姿が消えていた。
「さて・・・・・・あまり気持ちのいい旅立ちとは言えないが、行くとしますかね」
学園の門をくぐり、俺はそこから旅立った。
うわーいシリアスだーあははははー。もう何書いているのか分かんないや・・・・・・。
元ネタ解説は今回は無しです。影分身についてはいつかの話でやっていた気がしますので。