第71話~俺のストレスが有頂天~
「リュウキさん」
「ぬ?」
変態を塵に返し、さらに壊れた建物とかを修理して疲れたので休憩していると、リリアから声がかかる。
「何ぞ?」
「えっと、さっき来たよく分からない人(?)について色々と質問があるんですが」
ああ、あの変態か。
「『迎えに来た』とか〈後継者〉とか言ってましたけど・・・・・・知り合いですか?」
「存じておりません。完全に赤の他人だな」
「人間違いでしょうか?」
「知ったこっちゃねえ」
〈後継者〉がどうのこうのの時点で昨日の白黒悪魔ズ(勝手に命名)に関係があるのは確か。
ってことはアイツも悪魔とやらなのか?どう見ても普通の人と変わらんかったが・・・・・・。
・・・・・・ああ、普通の人は拳でクレーターなんか作らんか。
「あの人から妙に禍々しいオーラみたいなのが見えたんですけど・・・・・・何なんでしょうね」
「きっと気のせいだろ。疲れてるんだよお前・・・・・・」
そんな事を言ってやるが、実際それは間違っていない。
何故って?俺にもそんなのが見えたから。
いや、厨二病とかじゃなくてだな・・・・・・つか今誰だ厨二病とか言ったやつ。吊るすぞ。それこそ干し柿みたいに。
「最近どうも眩暈が・・・・・・って、いや疲れてませんからね私?多少のストレスはありますけど」
「ストレス?・・・・・・ああ、突っ込みの宿命か」
「誰のせいだとお思いですか?」
存じておりません。
「いや、話がずれてますって・・・・・・」
「分かってるっての。さっきの変態と俺の関係性でしょ?だから無いって」
「ん~そうですか・・・・・・私の勘違いでしたかね」
「勘違い?」
「はい。何となくなんですが、さっきの人とリュウキさん、どこか似てる気配がしたんですよ」
なん、だと・・・・・・?
つまりコイツは何が言いたい?
確証は無いが、俺が悪魔と同類だと?
あんな変態とどこが似てると?
それともアレか?性格か?歪んでると?悪魔だと鬼畜だと?いいぞもっと褒めろ。
「気配、ね」
「まあ、どうやら私の勘違いみたいでしたし、気にしないで下さい」
「気にするなと言われたら気にするのが人間の性である。だが俺は気にしない」
「はい?」
「いや、ただの独り言だ。気にしないでくれ」
「・・・・・・?」
リリアよ。そこで首を傾げて深く考えようとしないでくれ。特に深い意味はないから。
――――――暗い、ただひたすらに暗い空間の中、それは存在する。
見た目、とても古びた・・・・・・それこそ、少し触っただけでもすぐに崩れ落ちてしまいそうな、ボロボロの城が、そこにはある。
見た目に反し、中身は比べ物にならないほど綺麗ではあるが。
「まだ来ないのか?我が〈後継者〉は」
「はっ。部下を何人も送らせていますが、ことごとく返り討ちにあっております」
「そうか――――――まあ、よい。下がれ」
「失礼致します」
その城の中心部に、玉座が存在し、そしてそこに座るは、玉座を座るに値する者――――――王である。
王は報告に来た僕を下がらせ、一人の空間を作り出す。
「――――――王、報告致します」
そしてそこに、また一人の僕が現れる。
「どうした?」
「〈後継者〉の一人を連れてくる事に成功しました」
「そうか――――――ご苦労だった。我に会わせよ」
「はっ。しばしお待ちください」
僕が煙のように消えて少しした後、騒がしい声が聞こえ始める。
「なっ、何なんだよお前らは!俺を捕まえてどうする気だ!」
「静かにしろ!王の御前だぞ」
現れたのは、髪をツンツンと尖らせた、気性の荒そうな少年。
手を背中で縛られ、先ほど消えた僕と共に王の前に現れる。
「ふむ――――――これが〈後継者〉の一人か?」
「はっ。しかし、〈後継者〉の中では最も力が弱いようです。おかげで容易に捕まえる事が出来ました」
「〈後継者〉・・・・・・?何言ってんだよお前ら!?」
少年が王に向かって吼える。
王は、そんな少年を、まるで値踏みでもするかのように睨む。
「なっ・・・・・・何だよ・・・・・・」
少年は、そんな王に気圧されたのか、一瞬怯む。
「――――――ふむ」
「どうでしたか?」
「駄目だ。そやつは我が〈後継者〉には相応しくない」
「では、如何いたしましょう?」
「どこかへ放り出して来るがよい」
「はっ。ほら歩け!」
王が興味なさげに言うと、僕が少年の尻を蹴り、歩けと促す。
「さっきからなんなんだよ!勝手に連れてきたかと思えば放り出せ!?頭イカれてるんじゃねえのか!?」
「貴様!王に何という暴言を!」
「よい」
「しかし!」
「よい、と言っている」
「・・・・・・はっ」
「・・・・・・少年、名は何と言う」
「てめぇらみたいなイカれてる連中に言う名前なんざ持ってねぇよ!」
少年は、挑発するかのように王に向かって吼える。
「――――――そうか」
王が、座っていた玉座から腰を上げ、ゆっくりと立ち上がる。
「返答次第では、生かして返してやろうと思ったが・・・・・・」
王は、少年に向かって歩く。
「残念ながら、貴様の答えは外れだ」
「答え?はずれ?何言ってんだよさっきから!訳わかんねぇよ!」
「――――――ああ、もう喋らなくてもよい」
「は?何言って――――――」
王は、少年の目の前まで歩いた後、少年の腹へ、持っていたナイフを突き刺す。
「――――――え」
少年は、自分の腹に何が刺さっているかも分からず、床に倒れこみ、そこを真っ赤に汚した後、やがて絶命した。
「わざわざ王がやらなくても、これくらいの事ならば私たちが・・・・・・」
「たまには我がやらねば、腕が鈍るというものだ。・・・・・・その死体は片付けておけ」
「はっ」
王は、再び玉座へと座りなおす。
「――――――まだか、まだなのか・・・・・・」
王は、椅子のすぐ近くに置いてあった水晶のようなものを手に取り、中身を見るかのように目を細める。
水晶に王の顔は映らず、代わりに、とある少年の姿が映っていた。
「早く会いたいぞ・・・・・・」
その少年は、腰まで伸びた漆黒の髪をうなじ付近で縛り、
ややつり上がった目つきをしていた。
そして、水晶の中の少年は、少年が少し前に戦っていた、とある悪魔との戦闘シーンが映されていた。
「――――――神楽 龍稀・・・・・・我が〈後継者〉の一人よ――――――」
王は、水晶の中に映る少年を、見続ける。
「・・・・・・(ブルッ)」
「どうしましたリュウキさん?」
「いや、なんか寒気が・・・・・・恐らくどこかの誰かが俺を見ている。しかもすんげー変な視線で」
「変な視線、とは?」
「今までの例でなら、大体『ピ――――――』してえとか『ズキューン』とか『ズダダダダダ』とか『ピチューン』とかそんな視線」
「擬音が入るほどの視線!?」
はっ、はは・・・・・・。
明日から学校だってよ・・・・・・笑えない。笑えないぜ。
宿題なんて終わっちゃいねぇ・・・・・・受験勉強なんてひとつもやっちゃいねぇ。これがお先真っ暗というやつか・・・・・・。
まあいいや。あ、今回は元ネタ解説なしですよー。そもそもネタ使ってないので。