第63話~スニーキングミッション~
話が詰まってしまうのでタイトル変更。
申し訳ないです・・・・・・。ですからその構えている武器とかは降ろしてくださいね?お願いですから。
――――――どうして、こんな事になったのだろう。
周りに散らばっている、人間だったであろう死体。
それらは、体中をバラバラに切り裂かれ、苦痛に満ちた表情をして死んでいる。
――――――俺の手には、真っ赤に染まった刀が一本。
無数に転がっている死体は、ある者は腕がなく、ある者は首がなく、ある者が四肢がない。
――――――力の抜けた手から、刀がカランと音を立てて落ちた。
死体からはおびただしい量の血が流れ、そこから異臭とも、悪臭ともとれる臭いが広がっていた。
――――――誰かの血で真っ赤に染まった手を見た。
彼の周りには、もう動く者はいなかった。いや、先ほどまで動く者はいたが、やがてそれも動かなくなった。
――――――血の臭いに、吐き気がした。
彼の目は、どこか虚ろで、まるで生気と呼べるものが見えなかった。
――――――血で出来た水溜りに、膝を突く。
彼は、真っ赤に染まった自分の手を見て、震えていた。
――――――無数の血と死体を見て、嫌悪感がした。同時に、かすかな喜びがあった。
刀からは、本来聞こえるはずの声が聞こえなかった。
――――――同族を殺して何も思わない奴は、人ではないと、誰かが言っていた。
「――――――はは」
彼が、ふっと立ち上がった。
――――――なら、俺はまだ。
「はは・・・・・・」
降りしきる真っ赤に染まった雨の中、彼は両手を広げ、狂ったように笑い出した。
「――――――あはははははははははははははははははははは――――――!」
――――――俺はまだ、人間なんだろうか。
真っ赤に染まった体を震わせ、彼は、狂ったように笑い続けた。
『この・・・・・・化け物!』
そんな言葉が聞こえた直後、眠っていた意識が覚醒した。
「・・・・・・素敵なモーニングコールをどうもありがとう、クソッタレが」
近くにいるのはリリアだけ。そして、リリアはそんな事は言わない。ただの幻聴かなんかだろう。
ゆっくりと起き上がり、洗面所に向かい、そこで顔を洗った。
「――――――あ、おはようございますリュウキさん」
「ん、おはよーさん」
冷たい水で洗ったので、大分さっぱりした。
『おはようございます主』
「おう。銀も相変わらずの堅苦しい言葉だな」
『あはは・・・・・・癖ですから』
銀が頭に乗り、そこにちょこんと座る。
『早い目覚めだな、主』
「お前の場合は・・・・・・何だろうな。敬語じゃないし。爺言葉?いやそれも違う・・・・・・」
「そういえばリュウキさん、少し顔色が悪いですが・・・・・・どうかしました?」
リリアが俺の顔を覗き込むように見てくる。
「あー、うん。ちょっと最悪のモーニングコールをもらっただけだ。問題ない」
「??」
頭にハテナマークを浮かべるリリア。
「っと、すまんリリア。ちょい出かけてくるわ」
「あ、はい。いってらっしゃいリュウキさん」
笑顔で送り出してくれるリリア。
最近ちょくちょく出かけてるが、コイツは心配とかしないのかね?
・・・・・・ある意味、陰でコッソリ泣いてたりとかしないよね?
「じゃ、いってくるわー」
「夕飯までには帰ってきてくださいね」
うん、アンタどこの主婦だ。
「・・・・・・うっひーちょっと張り切っちまった」
『だからあの辺で止めておけばいいって言ったんですよ・・・・・・』
最近どうにもストレスがたまっててなあ。
ギルドでてきとーに依頼を受けて、憂さ晴らし的な感じでモンスターとかフルボッコした結果がこれだよ!
先ほどまで太陽が照らしていた空間も、今じゃ真っ暗になっていた。
陽が落ちるのが最近妙に早い。冬の時期か?いやでも雪とか降ってないし、寒くないし。
まあいいや。これ最後の依頼だし。
ちなみに依頼内容は『盗賊のアジトの壊滅』。
盗む時は残らず全て盗み、逆らう者は皆殺し。女は連れ帰って慰め者だそうだ。盗賊の典型的なパターンだな。
「さーて、ちゃっちゃと終わらせて帰るぞー」
『はぁ・・・・・・後でリリアさんに何か言われても知りませんからね?』
そういう時は武力で黙らせればいいのさ。
そう言えば、今日の白い子はやけに静かだな・・・・・・なんか不気味だ。
『呼んだか?』
帰れ。
アジトに到着。森の中にあったので、近くにあった茂みに身を隠す。
「・・・・・・おおう。行動が典型的ならアジトも典型的なのか・・・・・・」
『気をつけてください・・・・・・そこら中に魔力反応があります。全員魔法が使える者のようです』
あり?確か魔法が使えるのは貴族がどうとかだけだったような・・・・・・。
・・・・・・ああ。没落した奴らか。金ほしさにこんな事やってたのね。
「まあいい。ちゃっちゃとボッコして制圧すっぞー」
茂みに隠れつつ、こっそりとアジトに近づく。
見張りは二人か・・・・・・少なすぎじゃない?
『主、敵の数はそんなに多くないみたいです。だから見張りも少ないのかと』
銀によれば、魔力反応とやらは全部で13人程だそうだ。で、そのうちの二人が見張り。残りが中にいるらしい。
ちなみにアジトは洞窟のようなものと考えてくれ。そこの入り口に松明となんかよく分からない杖みたいなものを持ったおっさんが二人。
「さて・・・・・・貴様らに魔力を使うのは勿体無い。即効で片をつけるぞ」
茂みに隠れたまま、コッソリ近づく。
ある程度近づいた所で・・・・・・瞬間移動。瞬時に見張りのうちの一人、もとい見張りAの背後へ。
「ん?人の気配が「ちょーっと眠っててくださいねー」ぐあああっ!?」
「ん!?どうした!何かあったのか!?」
もう一人に見つかる前に再び瞬間移動。ちなみに先ほどの悲鳴はスタンガン(改造されているので出力最大60万ボルト)を食らわせたため。
茂みに隠れ、見張りBがこちらとは反対側を見た瞬間、一気に駆け寄り、首筋にスタンガンを当てる。
「ゆーあーだい!」
「ぐふぁっ!?」
ビクンビクンと痙攣した後、泡を吹きながら倒れる見張りB。よっしゃ、今だ!
「突撃!ただしバレないように慎重に冷静に!」
『えっと・・・・・・私はどこへ突っ込めばいいのでしょう?』
突っ込む必要はなっしんぐ!さあ行くぞ!
ほふく前進の体制をとり、そのままカサカサと素早く動きながらアジトの奥へと向かった。
所で皆。アジト、もとい洞窟の中はまるでその部分だけを切り取られたかのように見事な空洞になっていた。・・・・・・これだけで分かった奴は凄いだろうなあ。俺が言いたい事分かる?
まあ、要するに『障害物がない』という事。これじゃあスニーキングミッションは無理に等しい。
そんな訳で、某蛇も愛用している光学迷彩スーツを着用。持っててよかった迷彩スーツ。
お蔭で誰かに見つかる心配は限りなくゼロとなった。
完全にゼロじゃないのは、もしかしたら向こうにも魔力を感知できる奴がいるかも知れないから。
銀の話によれば、魔力を感知できる人なんてそうそういないらしい。
普通の人間は、空気中にある魔力のせいで人の魔力など感知できないんだそうだ。
まあ、たまに例外がいるらしいが。
また、魔力は大きければ大きいほど感知されやすいとのことで、久々の脳内ヤ○ーで魔力の抑え方を検索。それにより魔力を限界まで抑えた。
今の俺はそこら辺にいる普通の人となんら変わりない程度の魔力らしい。銀曰く。
まあそんな訳で、俺は慎重に、かつ素早く移動した。
どこへって?
もちろん、親玉の所。
組織というのは、大体頭を潰せば下の者は混乱する。そこを狙って一気にフルボッコタイムに突入するのが俺の作戦。きたないさすがおれきたない。
さあ出て来い親玉!貴様は既に袋の鼠よ!恨むんならアジトの出入り口が一つしかなかった事を恨むんだなぁ!ヒャッハー!
「見るからに豪華そうな扉・・・・・・間違いない、ここだな」
『この中から大きな魔力反応がします・・・・・・気をつけてください』
「おk。銀、『音無』」
ちなみにこの会話は周りに聞こえるかどうかすら怪しいほどの小さな声でしております。
銀が一瞬光ったかと思うと、一本の刀へと変化する。それを右手で握り、いつでも突撃できるように体制を整える。
「よし・・・・・・一、二の三で突撃だ。一、二の・・・・・・参っ!」
『あれ!?漢字がさっきと違う!?』
扉に向かってドロップキック。扉は吹っ飛び、俺は空中でクルクルと回ってからスタッと着地。
10点!10点!10点!神楽選手、満点で優勝です!
なんて言葉が脳内に響いたが、突っ込んでいる場合じゃないのでカット。
「なっ・・・・・・何者だ貴様!」
中にいたのは、いかにも中年っぽい脂ぎった体脂肪が心配そうなおっさん。というか頭がテカテカと光っている。キモい。氏ね。
「ギルドの依頼を受けて参上つかまつりましたー必殺フルボッコ人と申しやす。あ、覚えなくていいよ。どうせあんたはここで死ぬほど痛めつけられるんだし」
「くっ・・・・・・なめるな若造!『ファイアボール』!」
おっさんが掌に5、6個の炎の玉を作り出し、それをこちらに向けて飛ばしてくる。
「ハッ!格の違いを教えてやろう!『ファイアボール』!」
対して、こちらは3個ほどのファイアボールを作り出し、放ちあれ、何か違和感。
・・・・・・・・・・・・あ、俺そういえば魔力抑えてたんだっけ。テヘッ☆やっちゃったZE☆
いやいやいやそんな事言っている場合じゃなっしんぐううう!!
「ぬおおおおおおおおおお!!モン○ン式緊急回避いいいいいいいいいいい!!」
俺の作り出した火の玉と相殺したものもあったが、向こうの方が数が多い。
襲い掛かる火の玉を空中にいる間は無敵の回避方法で回避する。
「甘い!『ウィンドカッター』!」
「!ふぅおっ」
起き上がろうとしたら頬を風で出来た刃が通っていった。あぶねえ。でも通り過ぎた所から生暖かいものが流れる感触・・・・・・ペロッ、これは血液!
「ええい、リミッターをはずさせてもらおう!」
『ちょっ、主!?ほかの仲間に気づかれますって!』
「知った事か!この際全員皆殺しじゃああああああ!!」
抑えていた魔力を解放。すると、中年なおっさんの顔が真っ青になった。
「なっ・・・・・・何だその魔力の量は!」
「こっちだって最初は驚いてたけど最近は慣れた。で、どうする?まだやる?それともお縄につく?そして俺にボッコボコにされる?」
『最後のは余計だと思いますよ主ー・・・・・・』
気にしては行けない。
「お頭ぁ!異常な魔力反応が・・・・・・!誰だテメェ!」
あああああああああ仲間きちまったあああああああああ!!
ええいこうなったらソイツには眠ってもらおう!
「そおいっ!」
「ぐふぁっ!!」
瞬時に近寄り腹にボディブロー。仲間と思われる男はその場に崩れ去った。
「!・・・・・・よくも!『フレイムランス』!」
こちらに向かって炎で出来た槍を飛ばしてくるおっさん・・・・・・もとい、お頭。
「なんか台詞だけ見ると俺悪役に見えるんだけど・・・・・・『パーティクルフレイム』」
パチンと指を鳴らす。
すると、俺を中心として円周上に無数の小爆発が起きる。
「っ!ぬおおおおおおお!!」
無数の爆発の衝撃波に吹き飛ばされ、岩で出来た壁に背中をぶつけるおっさん。
「さって・・・・・・終わりましたかね」
四次元ポケットからオリハルコンで出来た縄を取り出し、それでお頭と呼ばれた男を縛り、ついでに仲間の男もグルグル巻きにしてやった。
さあ、あとは帰るだけだ。俺・・・・・・帰ったら夕飯食べるんだ・・・・・・間に合うかな。
だが。
頭のどこかで。
――――――殺せ――――――
そんな言葉が、聞こえた気がした。
冒頭部分は複線です。ゆっくり期待して待っていてね!
ちなみに最近執筆中に聞く歌は『深紅』という曲です。やっべ超燃える。
分からない方は検索!さあグーグル先生に聞いてみよう!
元ネタ解説はちょっと後でしますね。今用事があるので。