解決(4)
「なるほど。『モノマネ病』か。」
「そんな病気があるの?」
「いや、僕も初めて知る奇病だ。だから病名をつけた。」
今シランと女の目の前にいる鎌男、もといランタは、1人目を殺した後同じ手口で殺人を繰り返したらしい。
かつてテレビのニュースで見た殺人犯の手口をマネた。
見て見ぬふりをしていた教師、葬式で陰口を言っていた親戚、自分をいじめたかつてのクラスメイト、、、
殺すたびに枷が外れたように罪悪感も感じなくなったそうだ。だが1度つけた笑顔の仮面だけはずっと外れないままでいる。
「爽快だったよ!!もっと早くこうすれば良かったんだ!って。」
「、、、。」
「これが通り魔の誕生か、、、。」
ーーゴッ
「ヴッ、、」
鈍い音がして、通り魔は気を失った。女が鎌男の頭を鎌の柄で突いたのだ。少し、苛立っているようだった。
どうやらこの『患者』は後天的に病気が発症したようだ。
(モノマネか、、、)
「、、、話はもう終わった?」
女が鎌を握りしめて言った。
「ああ。そうだねもう好きにしていいよ。」
「いや、ちょっとまって。」
鎌が振り下ろされる寸前、シランは女を呼び止めた。
「、、、なに?」
女は怪訝そうに、鎌を止めた。
「なにか納得いかない。それに君も奇病持ちのはずだ。」
「なぜ?」
「ゼラが鳴いたから。ゼラは奇病患者を見分ける。そういう奇病を患っているんだ。」
「よく分かんないけど。」
「さっきの鎌男の話は少しおかしい。」
「、、、?」
「10年前の通り魔事件の被害者たちにはなんの共通点もなかった。けどこいつは自分と関係ある人を立て続けに殺したと言った。1人目を除いてね。」
「薄い関係性だったんじゃない。」
「だとしても僕は君が思ってるよりも10年前の事件を調べている。被害者と少しでも関係のある人物は調べ尽くしてる。10年前のは、ね。」
「、、、。」
「でもこう考えるとどうだろう。このランタという男はただ真似をしただけなんだ。」
「真似、、、?」
「そう。なんてったって彼はモノマネ病だからね。彼は10年前の事件を真似して犯行に及んだだけ。10年前の通り魔の犯人は、」
「別にいる、、ってこと?」
「そうさ。そして、僕が君に通り魔だと思ってたって言った時、君はこう言った。『今回の』通り魔事件は私じゃない。なんか引っかかってたんだ。」
「、、、、。」
女は黙っていた。
何秒たっただろうか。
「はぁ、あんためんどくさい。」
女は諦めたように言った。
「こいつを殺せば全て終わったのにさ。」
女は鎌をシランに向けた。たちまち、シランは先程殺されそうになった時と同じ体制に組み敷かれた。
「馬鹿ね。気づいても言わなきゃ良いのにさ、、、。」
鎌の刃先が近づく。
シランは目を見開いた。
女はとても辛そうな顔をしていた。
「、、、死んで。」
ーーー「ニャアアアア!」
「、、、!」
ゼラが鳴いた。女の手が止まった。ゼラが女に擦り寄っていた。
女は鎌を落とした。心底驚いたようにゼラを見つめている。
「ははっ。そいつ僕にはぜんぜん懐かないのになあ。」
女は大きくため息をついた。
「全部話すよ。それからでも遅くない。」