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ライラックの魔法  作者: ことう
第一章 一年生一学期編
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魔法学校編入試験Ⅳ



 シャーロットが魔物を倒し、魔物は身につけていたアクセサリーを落とす。今回はペンダントで、宝石はルビーだった。


「宝石はアクアマリンだけじゃなかったってこと?」

「おそらくね。この試験は案外よく作られているんだろう」


 エテルノがポケットにアクセサリーをしまいながら言う。現在莉羅たちは九個のアクセを集めていて、そのうち中央の宝石がアクアマリンではなかったのは二個だった。


「ルビーを合わせると三個だけど、どうしてこんなに種類があるんだろう……」

「ハズレとかか?」


 アレスが腕を組んでうーん、と唸る。莉羅も彼と同じように考えていたが、わざわざ他の宝石でハズレを示すのはおかしいとも思っていた。


「……ハズレなら、そもそもアクセサリーをつけない気がするけど」

「あー、たしかに」


 莉羅の意見にシャーロットがぽん、と手を打つ。

 ではなぜ学校側は、一部の魔物にアクアマリン以外の宝石を持たせたのだろうか。必ず何か意図があるはずだが、それがなんなのかが全く分からない。


 五人で頭を悩ませていた時、カインがおそるおそるといった様子で手を挙げた。


「あ、あの……アクアマリン以外の宝石をつけていた魔物に、何か共通点があったりしないかな……」

「共通点?」


 アレスの問いかけに、カインはこくこくと何度も頭を振った。


「その、先生たちも適当に持たせたわけじゃないと思うから……何か法則性があるのかな、と……」

「なるほどね。いい着眼点だ」


 エテルノが微笑みながらうなずくと、カインがほっと安堵のため息をついた。シャーロットとアレスも「さすがカイン」と称賛の言葉を投げかける。


「ということでよろしくね、エテルノ先輩」

「……なんで俺なの」

「魔物との戦闘経験あるって言ってたじゃん。魔物の階級も判別出来るっぽいし」


 このメンバーの中で最も魔物について知っているのはエテルノだ。実際低級と中級の見分けもついていたし、彼が頼られるのもうなずける。


 莉羅もシャーロットに次いで「よろしく先輩」と声をかけると、エテルノは一度大きなため息をついて、渋々口を開いた。


「……アクアマリン以外の宝石をつけていた魔物は、全員中級クラスだった。多分、魔物が強ければ強いほど宝石が変わってくるんだと思う」

「なるほど……魔物の強さによって身につける宝石が変わる、ね」


 初めて遭遇した中級魔物が身につけていた宝石は、たしかにアクアマリンではなくエメラルドだった。次に相対した中級魔物も、やはりアクアマリンではなくダイヤモンド。最後にシャーロットが倒した魔物はルビーを所持していた。


「ちなみに、その中級魔物ってどうやって見分けるの?」

「角の形だよ。低級は真っ直ぐに伸びているけど、中級の場合はねじれているんだ」


 エテルノが両手の人差し指を額にかざし、「低級はこんな感じ」と角を表す。さすがに指でねじれを表すのは難しかったが、エテルノいわく見れば分かるらしい。


「でもなんで宝石をいちいち変えるんだ? 全部統一でもいいじゃねえか」


 アレスが最もな疑問を口にした。そもそも低級魔物だけではなく、中級クラスの魔物もいるのがおかしいのだ。


 一体何を思って宝石の種類を増やしたり、魔物の階級を上げたりするのだろうか。


 そんな誰もが思ったであろう疑惑に答えたのは、今までずっと無言を貫いていた莉羅だった。


「――点数、じゃないかな」

「え?」


 四人がほとんど同時に莉羅の方を向く。それにちょっとだけビビりながらも、莉羅はみんなに伝わるように説明した。


「試験の説明の時、先生は『総合点が高かった上位六組を合格とする』って言ってたんだけど……多分、先生たちは宝石にそれぞれポイントを課していて、そのポイントの合計で順位をつけるんだと思う」


 仮にアクアマリンが一点だとすると、低級より強い中級魔物が持っていたルビーやエメラルド、ダイヤモンドは二点以上のポイントが与えられる。そうすることで、よりグループごとの差を明確に表すことが出来るのだ。


「中級魔物は結構強かったから、アクアマリン以外の宝石を持ってるグループはあんまりいないかもしれないし……この仕組みに気がついた人も少ないのかも」


 もし莉羅の推理が当たっているのなら、宝石の種類が他にもあること、そして種類によって点数が変動することを知らない人の方が多い可能性が高い。


「みんながみんな、エテルノとシャーロットみたいな強さを持ってるわけじゃないだろうし、これはチャンスかもしれない」


 つまり、他のグループが気がつく前に多くの中級魔物を倒して高い点数を稼ぎ続ければ、莉羅たちのグループが一位通過することだって出来るかもしれないということだ。


「たしかに辻褄は合うね。少なくとも低級魔物にダイヤモンドとかはついていなかったし、リラの考察は正しいのかも」

「おお……すごいなリラ。お前頭よかったんだ」

「暗記と推理は得意分野です」


 ふふん、とドヤ顔を浮かべる莉羅。シャーロットたちは素直に「すごいすごい」と莉羅を持ち上げた。


「さて、じゃあ魔物狩りといきましょうか。いっぱい点稼いで合格するよ!」

「おお~」


 シャーロットの言葉に、エテルノ以外のメンバーが拳を突き上げる。


 太陽は、もう少しで頂点、というところまで昇っていた。



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