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08 真なる夕飯と宿(ジャジャーン)

「さて……どうしようか……」


 せっかくオムレツがおいしかった『海鳩の島』は、メアヴェノとの戦いで全壊してしまった。そらちゃんも残念そうな顔をしている。ゴメンナサイ。


 さすがに申し訳なかったので、『レフト・トラッシュ』で瓦礫を全部ポイントに変換してから建材に戻し、応急処置をしておいた。感謝されるかな?


「別のレストラン、行こうか……」


 その後しばらく歩いてからちょうどよさそうなレストランを見つけ、ちょうどよさそうなオムレツを食べた。


「ただいまー」


 食事をしてからギルドに戻ると、ちょうど冒険者たちが何かをやっていた。んー?

 僕の背で眠っているそらちゃんをソファに降ろしてから、冒険者の集まりを覗いてみる。


「魔人だぜ魔人。マジで俺魔人見たんだからな! トカゲ頭のバケモンだったよ……」

「そうそう。しかもそいつを猫耳のチビが倒したって……って本人降臨じゃねえか!」


 バレた。僕は冒険者たちの手でどんどん輪の真ん中へ押し込まれる。アイドル気分だね、えへへ。


「敵は強かったのか!?」

「うん。でも僕にかかれば楽勝だねー」

「すげえ!」


 頭を乱暴になでられる。……おい今胸触ろうとしたお前。ぶっ殺す。


 変態は僕が予備動作なしに発動させた小規模の『エクスプロージョン』で鼻血を出しながらぶっ飛んだ。


「お前冒険者ランクは!?」

「こいつ今日の昼登録してたの俺見たけど……」

「マジ!? どっかの騎士だったとか!?」


 残念、騎士は僕の敵。今頃あの人たちどうしてるのかな、必死に諸国へ呼びかけたりとかしてるのかな。


 その後も質問攻めにされたが、すぐに冒険者たちは飽きて散っていった。

 一息つくためにそらちゃんの隣に座る。と……


「あれ?」


 ちょっと席が高い。どういうことだ、と下を見ようとしたら、いきなり猫耳をひっつかまれた。


「ふふん! 私の奥義、神速椅子化の術!」


 なんじゃそりゃ、と思ったけど、僕が座るタイミングを見計らって、速度に物を言わせ椅子になる術らしい。僕は見事にはまってしまい、猫耳を愛でられているわけだ。


 上を見てみると、長い金髪の美人お姉さんがダークな笑みを浮かべていた。あれ? どっかで見たな……あ、そうだ、ジョンくんが昼に仲間って言ってた、寝てた人だ。

 ということは五人パーティーのひとりね、なるほど。


「初めまして、アップヒルちゃん。私はウナ・スウィートレモトリー。ジョンのパーティーメンバーよ、お世話になったみたいね」

「初めまして。ジョンくんとは仲良くさせてもらってるよ」


 猫耳をなでなでなでなで。よほど好かれたらしい。

 僕が男だったら、ウナさんは美人だし惚れてたかもしれないけど、僕は異性愛の女の子だ。


「こらウナ。困っているじゃあないか」


 そう言って僕に近づいてきたのは、青みがかかった灰色の髪をした美男子だ。

 いかにも貴公子というか、王子といった感じの服装で、腰には美しい装飾の剣、胸には青い薔薇のバッジがあった。

 ふむ、白馬に乗ってやってきたらかっこいいだろうね。なんかタイプじゃないけど。


「やあ、ぼくはアマルイ・モナテーイ。ウナのパーティーメンバーじゃないけど、幼馴染なんだ。迷惑をかけたみたいで、ごめんね」

「誰が幼馴染よ」


 ウナがやれやれ、といった感じでため息をつく。


「まあ、そんなに怒らないで。子供が見ている前なんだ、仲良く行こうじゃないか」


 そう言って隣に座るアマルイ。香水でもつけているのか、ほんのりと花の甘い香りがした。身だしなみも完璧で万人にモテそうだが、なんだかタイプじゃない。

 

 また再開した猫耳なでなでをされながらアマルイと話していると、アマルイは「プレゼントだよ」と言って僕の髪に一輪の花を挿して去っていった。きざだなあ。なんかタイプじゃないんだけど。


「アマルイのこと好き?」


 ウナさんが聞いてくる。僕があいまいに首を捻ると、ウナさんは二度頷いた。


「実はね、アマルイって生まれつき呪いを持っているの。……女子に恋愛感情を抱かれない呪いを」

「ふうん、そりゃ大変だね……」

「ま、そんなだからきざでうざいけど嫌わないでおいてあげて」


 表面上はツンツンしているけれど、ウナさんもアマルイのことは嫌いではないみたいだ。

 ……それにしても、女子に恋愛感情を抱かれないかあ……またピンポイントで厄介な呪いだこと。


「そういえば泊る所とかは見つけているのかしら?」


 ウナさんが猫耳をまだなでながら顔を覗き込んでくる。猫耳、よく飽きないね。そんな魅力あるかな。


「ギルドで寝ようかと思ってるんだけど、大丈夫かな?」

「ええ、駆け出しの子はよくギルドで泊っていくわよ。ここはねー、ギルドマスターも家を持つのが面倒って言って改造して、一通り暮らせる設備があるの。災害時のための緊急避難設備を用意してあるとかいうことで、国から表彰が来たくらい。マスターはちょっと不本意そうだったけど」


 ギルドマスターって言えば、ラリルくんか。

 ラリルくんもここに住んでるんだね……まあ驚きはしないけど。あの人ちょっと変人だからいろいろなことをしていても不思議じゃない。


「そこにシャワー室があるから、あとで入ってみて。入るのに一ドルかかるけど、いい石鹸が使い放題なのよ」


 へえ、やるねラリルくん。後でいい石鹸を満喫させてもらうとしよう。

 アマルイ・モナテーイは冒険者の中ではかなり強い方です。美男子ではありますが呪いのせいでモテないので、嫉妬を一切挟まないファンや友達も多いです。

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