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06 The boy named Raril

「ルミネアはね、厄介者なんだ。簡単に言えば」


 ラリルくんはそう言って、机の横の黒板に『ルミネア』という丸を描く。


 そのまわりにもいくつかの丸を描く。よく見なくてもすごくきれいな楕円で、見事に対称になっている。


「例えば少し向こうの国パレイス。あそこは二百年前にルミネアから侵攻され、十年くらい占領されてたんだ」


 パレイスの楕円に怒りマークがつく。ルミネアを嫌っているのを表すらしい。


「パレイスとこの国を隔てる、サザビー帝国の飛地アルジャナーディラシオ領、ここも侵攻された。数か国の援軍で撃退はしたけども、もちろん……」


 ルミネアを嫌い、と。それにしても、ラリルくんはこんな長い名前をよく覚えてるね。僕だったら無理だよ。


「それとは別に、三百年前にもハルドゥルも侵攻されたし、前後はするけどここも、ここも、ここもだね」

「じゃあ多方面に喧嘩売ってるってこと?」


 ラリルくんは「そう」と笑顔で親指を立てる。


「今もこっちと小競り合いしてるし、ちょうど数か月前は対ルミネアを完全に意識した国際条約まで結ばれかけていたよ。結局、いじめはよくないって破棄されたけど、僕は賛成派だね。昼くんが王を殺しておいてくれたらよかったのに……おおっと、失礼。今のは聞かなかったことに、ね」


 ギルドマスターとしてこれは問題発言らしかった。まあラリルくんに恨みがあるわけでもないし、黙っておくことにしよう。……脅しのネタには使えるかな? ぐふふ。


「さらに! ルミネア産の牛肉、豚肉に相次いで病気が見つかったんだ。ひどいもんでしょ?」


 だから処罰もないんだ、と呟くと……


「そう。ルミネアと仲いい国なんてふたつしかないし、ここはそうじゃない。ルミネアが引き渡しを要求してもたぶん無視されると思う」


 かつかつとさらに書き加えている。少しすると、ルミネアの近くの全ての国に怒りマークがついていた。ちょっとかわいいかも。




「おねえちゃん……」


 ラリルくんに紅茶をもらっていると、ドアが開いてそらちゃんが入ってきた。ついてきたのか、可愛い妹めー。よしよし。


「……なるほど。昼くんの能力は『コピー』だね?」

「ぎくっ。……まあ隠すことじゃないけど、何で分かったの?」


 予想が当たってうれしそうだ。ラリルくんは自慢げに理由を説明してくれた。


「昼くんが倒したというエウィル。その子はエウィルの配下と同じパラメータを持ってるけど、エウィルが死んだのだから配下ももう死んでいるはずだ。だからたぶんコピーか所有権をぶんどる魔法だと思って賭けに出たんだけれど、当たったようだね」


 ……やっぱりこの人は怖いね。底知れぬ……。


「ラリルくんの魔法は情報収集?」

「冒険者は他人に手の内を見せないもの。ギルマスともなれば特にね?」


 その後僕とそらちゃんで駄々をこねたが、結局教えてくれなかった。

 コピーした魔法の中に、新しい情報収集関係の魔法がなかったのもよく分からない。




 そろそろ夕飯かな。とは言ってもりんごくらいしかもっていないし……よし、買おうか。


「何食べたいとかある?」

「ん……なにがあるのかしらない」


 そりゃそうか、これまでエウィルは洞窟にいたわけだし。


 ということで、ギルドの近くにいたレストランに入った。

 その『海鳩の島』というレストランは、個人が経営する小洒落たレストランである。


 店内はテーブルが十ほどあって、あまり広くはない。

 光源はランタンがいくつかだけで薄暗いので、ここで食事をすると眠くなりそうだ。ただ道行く通行人の評価は高かったのでここにしてみた。


「何があるのかな」


 適当な席に座ってメニュー表を開く。ふむ、どれもおいしそうだ。


「……これ」


 そらちゃんが指さしたのはオムレツだ。何の変哲もない、おいしそうなオムレツ。せっかくなので僕もそれを頼む。


 一分くらいで二皿のオムレツが運ばれてくる。


「いただきまーす」

「ん」


 いつも無表情なそらちゃんも、少し笑顔だ。おいしいらしい。

 僕もスプーンでオムレツを切って口へ運ぶ。おいしいね。


「……およよ?」


 何かが落ちてくる。天井からじゃなくて……もっと上から。


 空から、このレストランに向かって何かが落ちてくる音が聞こえた。


「そらちゃん伏せてっ!」


 轟音と共にレストランが半壊し――そこから、一人の男が立ち上がった。

 次回、市街地戦。現れたスーパー男に、昼ちゃんとそらちゃんは勝つことができるのか……!? 乞うご期待ッ!!!!

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