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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第二章 新大陸

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44 マツリダワッショイ

 クロザキ家のお屋敷の中は、まるで結婚式場のようだった……というとちょっと違うか。

 ともかく、扉を開けてまず目に入るロビーは、白い壁に赤いカーペットが敷かれ、壁には何枚かの絵画がかけられている。部屋の隅には背の高い観葉植物もあった。

 部屋の右側と左側に壁はなく、そこから廊下につながっているみたいだ。奥には大きな螺旋階段もあり、上の階につながっている。

 ほわーっと感心しながら眺めていると、執事らしい服装の老年の男が僕たちに向かって礼をした。……存在に全く気が付かなかった、こいつやるな。


「おかえりなさいませお嬢様。そちらの方は?」

「さっき街の上に気持ち悪い箱が現れたでしょう、あれを倒してくれたのよ。調査班には先日の落下物と関係があると伝えておいて」


 先日の落下物――というと、僕がさっき『ヘイズ・デイズ』で抉った化け物の一部の事か。十三日時を遡る効果なので先日なのだろう。

 執事は「ふむ」と頷くと、すぐに右手の手袋を左指で猛烈な速度で叩きはじめる。スイッチのようなものが複数見えるので、おそらく連絡するためとか情報を保存するためとかに用いる魔道具なのだろう。


「かしこまりました。ではお食事になさいますかな?」

「わかってるじゃん! フライドポテトをたっぷり用意してね! じゃあよろしく!」


 シアンが僕を降ろして別の部屋へ歩いていく。イエローが「あっちがリビングよ」とシアンの向かう部屋を指さし、僕もそこへ向かった。




 リビングはロビーとはうって変わってあまり豪華な雰囲気ではない。物知りイエロー曰く、ロビーは貴族としての体面とかがいろいろ絡むため豪華に作るのが普通だそうだが、イエローの祖父――つまり異世界人――は庶民っぽくしたかったので、客を普通入れないリビングだけでもと雰囲気を変えて設計したそうだ。具体的に目を引くものが何かといえば、ど真ん中に大きなこたつがある。


「すばらしい! 僕の望むこたつが目の前にっ!」


 このこたつは、一応ここの文化との兼ね合いもあってか椅子に座るようで背も高いが、そんなことは関係ない。中にもぐってあったまれればいいのである。……とはいえやっぱり普通のこたつの方がいいけれど。

 僕はこたつの中へ飛び込んだ。


「ふわー……」


 カーペットも魔道具のようで、ゆっくりと熱を発している。ああ、もういいや、寝たい。ここでぐっすり寝たい。

 僕が温まっていると、すぐにこたつがめくられて外の光が入ってきた。


「こら。こたつがあったかいのは分かるけど、お行儀が悪いよ」

「んー……」


 このこたつとカーペットが悪い。人間だれしも、こたつの気持ちよさを覚えてしまうと逃れるすべは――


「えいやっ」


 引きずり出された。泣きそう。


「まったく、せっかくフライドポテトもたくさん用意してくれてるんだからね。あげないよ?」

「ごめんなさい」


 椅子に座らされた僕がうなだれていると、すぐにフライドポテトが運ばれてきた。こんなに早くフライドポテトは作れるものなのだろうか。僕は料理に関してはあまり知識がないからよく分らないけど。


「フライドポテトでございます。当主様は仕事で少し遅れるとのことで、先にどうぞお召し上がりください」


 いいの、とシアンの方を見る。


「祖父が庶民的なひとだったからさ、パパも全く貴族っぽさがないんだよね。気なんて使わずに好きなだけ食べていいよ♪」

「わーい!」


 こたつテーブルの上に乗せられた皿には、山のようなフライドポテトにケチャップが添えられている。さっそく一本手に取ってケチャップをつけ、口に入れた。

 おいしい。噛むたびにうまさが口へじゅわっと広がる。日本で食べたマクド○ルドのポテトよりおいしいと思う。

 僕が本能のままにフライドポテトを口へ運んでいると、イエローがにっこりと笑った。


「こんなにおいしそうに食べてくれると、こっちまで嬉しいわね」

「ねー。うちの妹にならない?」


 いつでもこのポテトが食べられるなら――おっと、一時の欲望に流されてはいけない。


「遠慮しておくよ。でもポテトはお世話になろうかな?」

「いいわよそれくらいなら。うちのシェフが頑張ってくれるわ、よしよし」


 もぐ。……ポテトがなくなってしまった。

 それを見たシアンがすぐに執事へ声をかける。


「この子のおかわりを! 今夜はポテトパーティーでどう?」

「かしこまりました」


 いぇーい、やったね!

 次の瞬間、直径一メートルはありそうな大皿に盛られた山のようなポテトが待ち構えていたかのように運び込まれた。


「……こんなに食べきれるかな、僕……?」

「メイドたちの分も一緒だから大丈夫よ」


 異世界人の祖父が庶民っぽいとは聞いていたが、その性質は子孫にも受け継がれていたようだ。やっぱり身分の差とか気にせずに、みんなで食べたほうが楽しいよね。

 こちらを見る執事の顔に、一瞬だけ影が浮かんだ気がした。

 明日は投稿をお休みします。最近リアルでもオーバーワーク気味で頭痛がするのです……。

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