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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第二章 新大陸

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41 周辺の探索

 魔法で透明化とか認識阻害とかいろいろしていたおかげで、気球は誰にも怪しまれずに港へ着陸した。すぐさまちびっこたちが飛び降り、ばらばらと活動を始める。しばらくは僕も一人で動くことになりそうだ。

 気球を小さくしてかばんにしまってから、街を見回す。

 これまでいたところとさほど変わらない、レンガや石造りの建物が多いヨーロッパ風の街並みだ。規則正しく建てられた街灯や、店の軒先に吊り下げられたランタンなどが街を明るく照らし、夜でも多くの人々が賑やかに街を歩いていた。


「ふむ。よさそうなところだな」

「うわお!?」


 ……ジークフリートくん、頼むから驚かさないで。心臓に悪いよ。

 そう伝えたら、ぽかんとした顔で「とうめいかしてるところからどうやって、おどかさずにあらわれればいいんだ」と返された。それはそうだけど、透明化しないっていう選択肢はないのかな。……ないんだろうなあ。


「じゃあ、とりあえず二人で観光しようか。ドローンを撃ち落とした貴族っぽい人も気になるしね」

「ああ」


 カウボーイハットを深くかぶりなおすジークフリートくん。ちっちゃいのに、仕草がかっこいい。

 じゃあ、まずは先ほどドローンで入ってみた冒険者ギルドっぽいところへ行ってみようか。ギルドもどきは港から歩いて五分くらいで着くところにある。


「にぎわってるな。こまくがやぶれそうだぜ……おれにはとかいはにあわねえのかもしれねえな」

「耳栓いる?」

「いや、いい」


 とにかくここは賑わっている。通りを両側から囲む店や屋台の店員が、それぞれ大きな声を出して客を呼んでいた。


「おっ、お嬢さん。いいところに来ましたね」キラキラした店の外に立つタキシード姿の男が僕たちを呼び止める。「聞いたことありませんか? 最近話題のアイドル、レックスやセオドアなどなど、今なら一緒に食事をしたり話をしたり、なんと初回はお金を頂きません! どうです? あのアイドル達とぜひ仲良くなってみては」


 ……ホストクラブみたいなやつか。しかしジークフリートくんもいるし……


「あれ? ジークフリートくん?」


 いなくなっていた。時間が潰れると思って逃げたな、まったくもう。そらちゃんやギルガメッシュくんが僕に懐きすぎだったから、ジークフリートくんと接しているとなんだか違和感を感じる。


「どうかされました?」

「ああ、いや。じゃあお願いしようかな」


 レックスもセオドアも聞いたことは無いけれど、まあ初回無料らしいし情報収集がてら仲良くなるのもいいだろう。悪質なところだったら困るけども。




 案内された店内は、白い大理石の壁や床を彫刻などで装飾し、美しく仕上げた綺麗な部屋だった。そりゃ見た目は大事だけど、この一部屋つくるだけで相当お金がかかっただろう。

 僕は順番待ちの札を受け取ってからたくさん並んだ椅子のひとつに座る。この店内には二十人くらいの客がおり、それぞれ本を読んだり熱心に隅の振り子時計を見つめたりして時間を潰していた。


「ねえねえ、あなた、誰推し?」


 隣に座る高校生くらいの金髪お姉ちゃんが話しかけてくる。ふむ、誰推しと言われても。


「いや、実は僕って旅のひとだからよく知らないんだよね。よければ教えてくれない?」

「もちろんよ!」


 ホストクラブは最近登場した新しいジャンルのお店で、まだこの国に数店舗しかないらしい。

 この店には十人ほどのアイドルが在籍していて、一緒に奥の各部屋で食事をしたり遊んだりできるようだ。ホストたちはメインはアイドルとして活動している人たちで、国立の大きな劇場でもコンサートを開くほど有名な人たちらしい。そんなに人気なのに、なんでこんなにすいてるんだろ。まあこのくらいでも十分儲かっているだろうが、待っている人数が二十人は少ないのではないか。

 さっき店員が言っていたレックスはオレンジ色の髪の青年だそうだ。ワイルド系とかなんとかと説明してくれた。

 セオドアは紺色の髪の青年。種族が純粋な人間ではないのでやや幼い姿を保っていて、ツンデレだからすごくかわいいとか。

 金髪お姉ちゃんはレックス推しらしいので僕もレックスとやらにしてみよう。


「分かってるわねー! やっぱレックスよね!」

「だよねー」


 レックスの見た目すら知らないんだけどね、こっちは。

 待ち時間はあと一時間もあるらしいので、適当に認識阻害をかけつつそらちゃんへテレパシーを飛ばす。


「どう? 観光してる?」

『……ん。おねえちゃんはなにしてる』

「ホストクラブってとこにいるよ。待ち時間一時間もあるんだってさ、長いよね」

『……おねえちゃんだけあそぶのずるい』


 一気にそらちゃんの声がふてくされた感じになった。


「いや、そらちゃんも遊んでいいからね? むしろ遊びなよ。気楽に気楽に」

『……ん。じゃあ、けいばじょういく』


 あの年で『何か遊ぼう→ギャンブルしよう』なのはどうなのだろうか。適度に遊ぶ分ならいいのかもしれないけど、あの年で。ああ、僕がお酒を飲むのと一緒か。

 すぐに競馬場についたらしく、馬券を買うだのなんだのと逐一報告してくれる。


「そういやお金は? 持ってたの?」

『おじさんが、けいばはたのしいからやってみなさいってたくさんくれた』


 なんと優しいおじさんなのだろう。いや、子供に競馬を布教してるから……どうなんだ。プラマイゼロかな。


『ぐれいだいやもんど。あたったらろくばい』

「すごい大穴を狙いに行くね……」


 少ししたらレースが始まったらしく、そらちゃんが『がんばれ』とか『そのちょうし』とか言っているのが聞こえる。


『お……お! おおっ! おー!』


 こんなに感情を表に出すそらちゃん、始めて見た。どうやらグレイダイヤモンドとやらが勝ったらしい。よかったね。


『ぜんがくかけたから、おおもうけ』

「よかったじゃん! おめでと!」


 大穴に全額……ギャンブラーだね。まあ、結果オーライだからいいのだろう。

 そらちゃんと話していたら時間が過ぎたかな……と思って振り子時計の方を向いた瞬間。

 街の奥で、途轍もない轟音が鳴り響いた。

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