04 決着はつけるッ!
洞窟の入口はたいそう禍々しいオーラを放っていた。いや、外見だけならただの洞窟だし、写真で見れば何でもないと思う。けど、こう……なんというか、雰囲気がヤバい。数多の命が失われた現場かな。
洞窟の中を見ると、奥へ奥へと長い通路が続いているようだ。ところどころに赤黒い血のしみや小さな骨の欠片が落ちている。
とりあえずジェットで奥の方へと進んでみる。
「うーん……速度が出ないなー……」
どろどろした空気が纏わりついてきて、なかなかジェットでも速度が出ない。かなり不快だけど、奥に進みたいからガマンガマン。
しばらく進むと明かりが見えてきた。ジェットを消して徒歩で進む。
「はっ! 青い鳥!」
いた! 幸せの青い鳥!
僕はかばんから鳥かごを取り出し、精密な魔法技術で青い鳥めがけて放り投げる――!
「ピー」
ガシャン。
「ありゃ」
鳥が羽を振ると強い風が起き、鳥かごは地面にたたき落とされた。
よく見ると少し歪んでるな……力強すぎない? 僕が言えたことじゃないけど……。
あっけにとられているうちにも、青い鳥は行動を進める。
「ピィイイイイイイイ!」
全力で大声を出すと、奥からわらわらと青い鳥が現れてきた。
「……あれ? 待って、けっこう怖い顔してるね、きみたち? え? ちょっと待って!?」
魔法で津波を起こして怖い顔の青い鳥たちを奥へ押しやる。
……よく見ると、鳥の顔は本当に怖かった。怒った時のライオン(ドラマで見ただけ)に、上納金をもっていかなかった時のヤクザ(ドラマで見ただけ)に、宿題を一週間続けて出さなかった時の髪の無い社会の教師(ドラマで見ただけ)を足して三で割らないような……うんと、通じるかな? にゃはは。
しばらくじりじりと後ずさりしていると、いきなりばっと鳥たちが横へ割れ、道が開く。その奥から、でっぷりと太ったビッグな青い鳥が現れた。それがくちばしを開く。
「フハハ、愚カ者ヨ! ココハ我ラノ棲ミ家、足ヲ踏ミ込ンダ人間ハ――我ラノ餌トナル!」
なるほどね、だから血のしみとか骨が落ちてたわけね……じゃなくて!
「うわあ喋った! もんげー!」
適当に『ウォーターガン』をぶっ放す。
青い鳥の一羽が飛び出してきて、それを自分が盾となって受け、死亡する。忠誠心が高いことだ、尊敬するよ!
合掌、『ウォーターガン』!
「フン、ナカナカヤルヨウダナ。ダガ数ノ差ニハ勝テマイ! 行ケ全軍ッ!」
「「「ピィイイイイイー!」」」
「声はカワイイのになんでそんな怖い顔してるのさー! 『エクスプロージョン』! 『エクスプロージョン』! 爆ぜろぉー!」
洞窟が崩落しない程度に大爆発を起こす。えっへん、このアップヒル、魔法の精密さには一家言持ちなのだ! 存分に焼き鳥になれー!
しばらく続けると、ボス鳥の愉快そうな声が聞こえてきた。
「ククク……数ヲ減ラセバ済ムト思ッテイルノカ? 残念ダッタナ、数ハ尽キナイ……我ノ魔法、『バベル』! 我ノ配下ハノーコストデ無限ニ生マレルノダ――!」
「卑怯な……!」
そうは言うけど、まあ問題ない。たぶん。僕ってば強いからね。
「オ前ノ魔力ハジキニ尽キルダロウ! 逃ゲ道モナイ、モウ我ノ配下ガ入口ヲ閉ザシタ!」
後ろからガラガラという音が聞こえてくる。閉ざしたって、崩落させたってことね……アナログだなあ。
「ピー」
すると、僕の真上でぴしっと嫌な音が鳴った。
げ、もしかして……
「オ前ハ生キ埋メダ! ナアニ、コノ洞窟ハ我ノ魔法デイクラデモ修復デキル!」
そんなことを心配してるんじゃない――とか怒る前に、僕は落ちてきた岩に全力で潰された。
「ドウダ? 苦シイカ? フハハハ!」
「あんまり。ちょっと重いけどね」
たくさんの岩の下敷きになっているので、重い。肩が凝りそうだ。
「強ガッテルンジャアナイゾ……マテ」ボス鳥が動きを止める。「ナゼダ……!? オイ!」
僕が岩をどかしながら起き上がると、ボス鳥は自身の近くにいる青い鳥たちに必死に何かを言っていた。
「命令ヲ聞ケッ! 奴ニトドメヲ――!?」
「僕の能力は何か知ってるかな。……まあ知らないだろうけど」
僕の背後から、一羽の鳥が現れ、頭の上に載る。顔は怖いままだけど、仕草はかわいい。
「『コピー能力』、そのままなネーミングだよね。わかった?」
「貴様ァ……! 現レヨ我ガ配下タチィィイイ! 敵ヲ蹴散ラセェエエエエ!」
そう。今ボス鳥の近くにいるのは僕が呼び出した配下だ。魔法が全く一緒だから、相手も模倣を見破るのは難しい……すごいでしょ?
「やっちゃえ!」
「クタバレェエエエアアアアアア!」
半狂乱で配下を召喚し続けるボス鳥。正直なところ泥試合だが……まあ、いいや。
「ハ、ハハッ! 勝負スルトデモ思ッタカ!? 我ハ逃ゲル、食イ止メ――」
「決着はつける、逃がしはしない」
鳥たちが目の前で戦っている中、逃走しようとしたボス鳥の右翼が消える。
もちろん僕の右手にそれは掴まれていて……
「グ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!? ナゼダ!? ドウヤッテココマデ来タ!? 配下ガ壁ニナッテイルハズダ!」
「別に君の魔法しかコピーしてないなんてことは無いよ? ほら、『レフト・トラッシュ』」
大きな羽が魔法で消え、ポイントに変換される。
この魔法で消したものはポイントに変わるっていう仕組みで、またあとで等価交換っぽいことができるんだ。……とはいえ、この羽はたいして価値はないみたいだけど。
「キ、貴様!」
明らかにおびえた色を目に浮かべるボス鳥。
見逃すつもりにはならないけどね、圧死させて食べようとしたんだもん。極刑に処す。
「石に潰される気分、味わってもらおうか?」
「ヒ、ヒィイ……キサ、貴様……! コンナコトヲシテ『アイアン様』が見逃サナイト、思ウナヨ……!」
「誰それ」
岩で鳥の下半身がつぶれる。グロ注意……ってのは遅いね。
「ギァアアアアアアア――」
残りの上半身も潰れる。
ボス鳥が完全に絶命すると、配下たちも力を失って地へ落ちた。僕のまわりに、僕の配下がたくさんやってくる。
「ピー」
僕の頭の上をまっさきに占領した鳥が髪の毛をつつく。くすぐったいよ、ははは。
チートです。明らかにチートです。コピーとか強すぎです。ちなみに過去作(短編)に登場するサクさんとかレインドロップ、ジョイライドといった猫又たちも同様のコピー能力を持っています。なんかみんな低身長っていう共通点があるよね。なんでだろう。
ちなみに『レフト・トラッシュ』のポイントについてですが、ボス鳥の羽はだいたい10ポイントになりました。デュエル○スターズの普通のパックが30ポイントです。
アイアン様は、最初は『アイロン様』にしようとしたのですが、さすがに「アイロンww」ってなってやめました。




