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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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25 休戦

 僕がトーアを倒し、戦場に戻ると、もう戦闘は終わっているみたいだった。


 さっき魔人たちが退却していったので、負傷や死亡している仲間を回収しに来た人間側の兵士たちがいるだけだ。

 魔人側は、倒れている仲間もかなり見捨てられている。だからって今は助けるつもりはないけどね。


 少しすると空間がずばっと裂けるようにラリルくんが現れた。ひとりの魔人を抱えている。


「昼くんはやっぱり早いね。大丈夫だった? 聞くまでもなさそうだけど」

「もちろん」


 ラリルくんは、どうやってか生きたまま敵を回収してきたみたいだけど、僕が殺したトーアは死体もなくなってしまった。

 あの空間は、自分が死んででも相手を殺すという明確な意思表示だったのだろう。


「さて、じゃあもう一度……『ヒールレイン』」


 けっしてさっきやった詠唱を忘れたわけじゃない。そう、ちゃんと覚えてるよ。

 ……えーっと、我らの友を……あれ? 忘れた。


 パラパラと透明な温かい雨が降り注ぎ、兵士たちの怪我と疲れを癒していく。

 ラリルくんの方を向くと、今回は飲むつもりはないらしい。まあさっき飲んでたからね。


「これってポーションになるよね。ギルドに卸してくれないかな」

「んー、いいけど。サンプル品はい」


 そこら辺の魔人から一本剣を盗み、『レフト・トラッシュ』で手のひらサイズのガラス瓶に等価交換する。その中に回復する水を詰め込んでラリルくんに渡した。


「…………………………」ラリルくんは瓶をじーっと見つめる。「これはいいね。五本で一ドルで買い取るよ、どうかな」


 と、そこで今度は雄太郎とアイがほぼ同時に現れる。


「なにやってんの? ポーション?」

「うん! ラリルくんが五本で一ドルで買ってくれるって」


 僕が笑顔で言うと、アイが固まる。


「ラリル……ま、まあ、商売人だからそういうのも仕方ないのかな?」

「一応言っておくと、ポーションの適正価格は一瓶、一から十ドルだ。売値がそれだから、卸業者の仕入れ値も安くて一瓶半ドルってところだろう」


 ものすごいぼったくろうとしてたらしい。ラリルくんを睨んでやると、舌を出してピースサインをつくった。

 かわいいけど、許さんよ。一発頭を殴りつけておいた。


「ごめんごめん。この品質ならちょっと高く買い取っても十分利益が出るし、まー、詳しいことはギルドに戻ってからね」


 とりあえず僕たちも、兵士たちと同じく砦へ戻ることにした。




 またすぐ襲撃してきそうだけど、撃退に成功したから一応のお祝いムードになっていると思っていた。

 実際は全然そんなことなかったよ。


「暗いねえ」

「そりゃそうでしょ」


 大勢の人が休憩している砦の大部屋で、ラリルくんと一緒に白湯を飲む。ちなみにアイは砦の中をいろいろ見て回りたいらしく、雄太郎が保護者としてついていった。


 ラリルくん曰く、今のんきなのは外国から来た冒険者くらいだそうだ。

 この国が落ちても、直接大事なものを失うわけでもなく、この国の住民よりは心理的に楽に逃げられる。


 今回は僕たち四人で敵を退却へ追い込んだとはいえ、新たな戦力を送り込んでくるとまずい。

 また今回のような一対一フィールドを使われて封じ込められて、それで大勢が襲い掛かってくるとまずいのは目に見えている。


 魔王軍がまた攻撃を再開した時に僕たちがここにいるとは限らないしね、国の兵士じゃないから。


 そう説明し終えたラリルくんはふと首を傾げ、目を閉じて固まった。


「どうかした?」

「……」


 何か考え込んでいるみたい。僕が肩をゆすっても一切の反応を見せない。

 少しすると、今度はぴょーんと飛び上がる。


「魔道結晶持ってないかな」

「え?」


 魔道結晶とは何ぞや。


「あー、簡単に言えば、魔法を埋め込んでおける宝石のこと、別に宝石じゃなくてもいいけど。あのフィールドを完全に封殺できる機構を思いついたんだ、材料がないからできないけど」


 それなら、とそんな感じの物質を魔法で作ってみる。

 メアヴェノがよく使ってた土の槍とか、そんなのを極めればだいたいこんなものも作れる。


「いい品質だね。じゃあ刻んでみるよ」


 桃色の半透明の立方体を手渡すと、ラリルくんはにこりと嬉しそうな笑みを浮かべた。


 ラリルくんは立方体を握っていない方の手の人差し指を立て、魔法の杖でも振るように大きく動かすと、立方体の中に複雑な幾何学模様が生まれる。


 これは……魔力の感じは、『インヘイル』にも似てるけど……かなりいろんな魔法が混ざってて複雑怪奇だ。ラリルくんはすごいや。


「こんなものかな。理論上は、これであのフィールドから抜けられるよ。あげる」


 くれた。僕が魔力を流すことがトリガーとなって、周囲の魔力を何やら操作し、空間もいじる……みたいだけど、詳しいことは全く分からない。


 僕はありがたくそれをかばんの中に放り込み、改めてこの部屋の中を見渡す。


 石造りの小学校の体育館レベルの部屋の中で、ある人は眠り、ある人は酒を飲み、ある人は武器の点検をしている。だけど、誰もが疲れているようだ。

 一応、回復魔法を大雑把に使っておいた。

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