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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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21 防衛戦

 僕とラリルくん、勇者たちが向かったのは、魔王軍の侵攻を受けているという小国だ。

 魔王城からは砂漠やジャングルなどを隔てて大きな距離があるものの、魔王軍はそこを越えていきなり攻撃してきたそうだ。


 戦力に加わるのはいいのかとラリルくんに聞けば、小国だから人手が少ないので、各地のギルドに依頼を出しているそうだ。

 僕たちはそれを受けたことにして、ジェットでやって来た。


 そして今は入国審査中である。とはいえ人は少なく、すぐに僕たちの番が来た。


「名前は?」


 初老の入国審査員の質問に、雄太郎が代表して前に出る。


「オレは雄太郎、そこがアイ、アップヒル、それと、ラリル・ロフトヴァインだ」

「ラリル……あ! あそこのギルドマスターか! もしかして防衛戦の支援に来てくれたのですか?」


 ラリルくんは有名人だね、うらやましい。

 ラリルくんが質問を肯定すると、入国審査員はとてもうれしそうな顔をすると、「どうぞお入りください!」と言って入れてくれた。

 僕や勇者たちの素性は特に調べなかったのは、それだけラリルくんが権力を持っているということかな。


「観光もしたいね! ここってフルーツがおいしいらしいわ!」


 アイがとてもうれしそうな顔で言う。話を聞くと、ルミネアにいた頃は他国に出ることもできなかったので、こうやっていろんな場所に行けるのは嬉しいみたいだ。

 もうすっかり、ルミネアに騙されていたのは忘れたらしい。


「審査も終わったし、またジェットで行こうか」


 ラリルくんが、いつのまにか買っていた魚の串焼きを食べながら言う。アイが「あーずるい!」と食って掛かったが、想定してあったのか一本渡すとおとなしくなった。残念なことに、僕と雄太郎にはないみたい。


 再びジェットの用意をする。今回はなにぶん人が多いので、僕がゴンドラを吊り下げながらジェットで移動するのである。もちろんすごく重いけど、これくらいしか安全安心な移動方法が思いつかなかった。

 僕がかばんから折り畳み式のゴンドラを取り出し、みんなで展開する。


「じゃ、飛ぶよー」

「はーい」


 ラリルくんの元気のいい返事とともに、僕はゴンドラを風魔法で安定させながら猛スピードで戦場へと向かって行った。




 防衛戦はラリルくんの話を聞く限り、かなり厳しそうだった。

 周辺諸国も、次に自分が攻められてはまずいので協力して兵を送っているが、魔王軍は強い。僕と戦った魔人はかなり強い方だから、彼らよりはまだ弱いみたいだけど、魔王の配下たちはそもそもの身体能力が人間より強いらしい。

 それが、防衛軍と同じかそれ以上の数がいるので、人間側が押されるのは必至というわけ。


「あ、武器貸して。適当な剣でいいから」


 なんとこんな時に武器を忘れてきたとほざくラリルくん。頭を一発叩いてから、メアヴェノに折られたのと同じ型の電気びりびりソードを貸す。


 勇者たちはちゃんと武器を持っている。雄太郎の背には二本の剣があり、アイのゴスロリ服のポケットから拳銃が見える。

 人間側の砦へつくと、すぐに兵が話しかけてきた。


「あなたがたは……と、ラリルさんですか?」

「うん。クエスト受けて援軍にね」

「ありがたい! して、そこの三人は?」


 僕はもちろんだけど、勇者二人もあんまり知られていないみたいだ。雄太郎が挨拶すると、兵は一瞬微妙な顔をした。やっぱりルミネア出身というのが引っ張るんだろう。


 横からラリルくんが補足する。


「彼らはルミネア出身に間違いないけど、僕がいろいろ保護して教えたから大丈夫だよ。保証する」

「ラリルさんが言うなら……で、そこの子は?」

「アップヒルだよ。めっちゃ強いよ!」


 ピースしてみると、これもまた微妙な顔をされた。これは……『とてもそうは見えないなー』という顔だね。まあ、ちびだし筋肉もないし? 仕方ないかもね。


「昼くんの強さも僕が保証する。僕には及ばないけど、魔王軍の強力な魔人を二人同時に相手して倒した実力の持ち主だからね」

「それはすごい! ……こほん、皆さんありがとうございます! えーと、では、旅でお疲れでしょうし、砦の内側は今のところ安全です。大きな部屋に数十人がまとまることにはなりますが、ぜひ休憩を取ってください」


 それを聞いた、僕以外の三人が目線で相談する。

 なんか仲間外れにされた気がするので、僕は仲間を売ることにした。


「あー、まあ、この三人は旅してないし、僕が運搬してやっただけだから、休憩するのは僕だけで。みんな即戦力だよ!」

「本当ですか!? ありがたい! ではこちらへどうぞ!」

「「「おいっ!」」」




 結局僕も即戦力として引っ張り出されることになった。


「そういや聞いておくけど」僕は兵士の先導で戦場へ向かいながら、ちらりと勇者の方を向く。「人死にとかは大丈夫なの? グロいかもしれないけど?」


 いつの間にかたばこを取り出して吸っている雄太郎がひとつ頷いて答える。


「そこは慣れた。オレはもともと慣れていたし、アイもこの世界に来てから人死にはさんざん目にしたんだ。もう対して何も思わなくなってる……人としてどうかってのは、いつも心に引っかかるけどな」


 それに、のんきに持ってきていたクッキーを食べているラリルくんが入ってくる。


「きみたち宇宙人のいた世界は平和だったみたいだね」


 アイと雄太郎が同時に首を振る。


「いや……殺人事件とかなら、毎日のように起こってたし、たいして平和ってわけでもない。ま、この世界よりは死ってのはあんまり直面しないが」

「遠い国じゃ戦争してるところも少なくなかったしねー。アタシたちは平和だったけど、人が死んだ話ならよく聞くよ」


 ラリルくんは「対岸の火事ってことか」と納得した。


 少し歩けば、戦場は見えてきた。ここでは現在進行形で戦闘が行われていて、こちら側にはテントのようなものが張られ、自力で戻ってこれた負傷者などが簡易的な治療を受けつつ休憩している。


「んー……恵みの雨よ、命の雨よ、我らが友を救いたまえ!」


 かっこいい詠唱で、回復効果のある雨を付近に軽く降らせる。そう、かっこいい。文句は言わせないぞ、詠唱のセンスがあるんだ僕には。

 道案内の兵士が驚いた顔をして立ち止まる。


「お……おお! これがアップヒル殿の魔法……! 力が湧いてくるようです!」

「実際湧かせてるしね」


 ラリルくんが口を開いて雨を飲んでいる。おいしいのかな、成分は魔力以外普通の水と同じはずだけど。味も見てみよう的な?


「へー、おいしいね」


 おいしかったらしい。


「あそこで戦ってるわね! アタシは準備オッケー!」

「僕も!」

「オレもだ」

「いよーし、とっつげきぃー!」


 僕とアイと雄太郎は飛び出した!

 ちょっと「え?」ってなってる案内の兵士と、まだ雨を飲もうとしているラリルくんだけがその場に残っていた。

 明日はたぶん投稿をお休みします。すみません。

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